E3で目立った携帯電話関連の展示

会場をまわってみて思ったのは、かつてE3で圧倒的存在感だった日本のゲームメーカーがなりを潜め、EAなど海外の大手パブリッシャーを中心とした勢力の存在感が圧倒的に高くなっていることだ。日本からもスクウェア・エニックス、カプコン、コナミ、バンダイナムコゲームスといったメーカーが出展しているが、海外向けのヘビーなタイトルが中心で、かなり押されている印章を受ける。唯一独自スタイルを保っているのが任天堂と言えるかもしれない。

ゲームタイトルの話を外せば、今回会場で気になったものの1つがNykoの「Zoom」というKinect for Xbox 360向けのオプションだ。Kinectはご存じのとおりXbox 360向けのモーションセンサーだが、実際にトライしてみるとわかるのは、プレイに必要なスペースの広さだ。体を動かすので家具が邪魔になるというだけでなく、Kinectに正確に動きを認識させるために1人プレイ時で最低でも1.5m、2人プレイ時で3m程度はセンサーの位置(つまりTVの設置場所)から離れなければならない。

実際にやってみるとわかるが、この条件は日本の一般的家屋ではかなり厳しく、買ったはいいが放置状態で埃を被っている場合も多いだろう。Zoomはセンサーカメラに被せることで焦点距離を短くできるフィルター型のオプションで、最大で40%程度センサーから必要な距離を短くできるという。国内のKinect普及には重要なポイントかもしれない。Nykoのページによれば価格は29.99ドルとなっている。

今回のE3で個人的に気になった製品がこれ。Kinect for Xbox 360のセンサーのレンズ部分に装着することで焦点距離を変更するレンズフィルター「Nyko Zoom」

また、今回のE3で比較的目立っていたのが携帯電話関連のブースだ。ドイツテレコム子会社のT-Mobileがブースを出展しており、ここでは同社のスマートフォンを使ってHD品質のゲームプレイが可能だというデモを披露していた。端末はLGのOptimus 2Xだとみられるが、デュアルコアのTegra 2を搭載しており、CPUコアとGPUコアともにパフォーマンス的には申し分ない。ハイエンドを見ればきりがないが、最近のスマートフォンやタブレットは一昔前のゲーム機以上の性能をもっており、画面を見てもなかなか快適にプレイできる。とはいえ、操作系統はスマートフォンのタッチパネルのため、巷のiPhoneゲームのようにやや操作性に難があるとも感じた。このあたりは今後の課題だろう。

携帯キャリアの展示会への出展が目立っていたのも今回のE3の特徴。ドイツテレコム子会社のT-Mobileは、スマートフォンで遊べるゲームをHD TVへ出力しつつデモストレーション。写真の機種はLGのOptimus 2Xで、傍らにはNVIDIAのTegra 2 Poweredの"のぼり"が置かれている

一方でソニーエリクソンの「Xperia Play」のように、ゲーム機の操作系統をそのままスマートフォンに導入してしまい、実行するゲームも「PlayStation Suite」としてプラットフォーム化している例もある。しかし、「PlayStation Suite」は未だ配信プラットフォームがスタートしておらず、本格ローンチは秋以降に持ち越しといった状態だ。ゲームプラットフォームがデバイスに縛られるのか、あるいは前述の「On Live」のような形で別途切り離されるのか、「PlayStation Suite」もまたゲーム機の将来を占う岐路にあるデバイスなのだろう。

ソニー・エリクソンは「Xperia Play」のデモを披露。まだゲーム配信用ストアが立ち上がっておらず、Android Market経由でのゲーム配信にとどまっているためロクな宣伝もなされていない状態だが、今後の携帯ゲームの傾向を占う機種の1つだと言える

展示場の外では米Sprintが「4G Gaming Lounge」と題したストリートファイターIVのゲームコーナーを開設。ネットワーク通信に4G (Sprintなのでこの場合はClear社のWiMAX)サービスを使っているというのが特徴

携帯電話とゲーム機についてはもう1つ。展示ブースの外では米Sprint Nextelが「4G Gaming Lounge」というコーナーを開設し、『ストリートファイターIV』の対戦台を置いたゲームデモを実施していた。Sprintは全米第3位の携帯キャリアだが、3GネットワークではCDMAを採用する一方、4Gネットワークとして米Clearwireとの提携でWiMAXを全米展開している。このゲームデモは、ネットワーク接続にWiMAXを用いて問題なく遊べることを示すものだ。

これが意味するのは、将来は外出先やブロードバンドとしてWiMAXを家庭に導入した場合でも、『ストリートファイターIV』のような"ラグ"に比較的シビアなゲームでも問題なく遊べること。また、もし「On Live」のようなプラットフォームが一般に普及した場合、WiMAXはこれを遊ぶ手助けになるかもしれない。いずれにせよ、携帯電話の技術は今後ゲーム機にとって非常に重要なものになると考えられる。