レノボ・ジャパンは、横浜市のみなとみらい地区へ移転した同社「大和研究所」の内部を、報道陣向けに公開した。同施設は、古くはIBM時代よりThinkPadの開発拠点として国内外で知られていた。元々は神奈川県大和市に設立されていたが、昨年末より横浜市みなとみらいへの移転を行っている。

「大和研究所」が入居するみなとみらいセンタービルの外観。開発部門である大和だけでなく、レノボのオフィスフロアも同ビルに入っているため、以前に比べ連携がとりやすく、業務効率も上がったのだとか

新生「大和」は、神奈川県横浜市西区のみなとみらいセンタービルの中に立地。同施設は、同社が"イノベーション・トライアングル"と呼ぶ、3つのグローバル研究・開発拠点のひとつに位置付けられており、また今回の大和への投資は、「レノボがテクノロジとイノべーションへの投資を惜しまないという姿勢の象徴」(同社)とも言われている。ちなみに、移転後も施設名に"大和"の名称が残った理由だが、これは、「ThinkPadの開発部門=大和」という認識が強く知れ渡っていたためだとされている。

レノボが"イノベーション・トライアングル"と呼ぶ、3つのグローバル研究・開発拠点

それでは、新生大和の内部レポートをお届けしたい。案内は同社品質開発・製品保証 テスト技術 課長の小林康浩氏が担当してくれた。まず小林氏からは、新生大和は、引き続きThinkPadの開発拠点として継続すること、そして、旧大和の機能は、設備の内容も含めほぼ全てが新生大和に持ち込まれたこと、"強み"も旧大和を継承したもので、「堅牢性」「耐久性」「信頼性」「性能優位性」の4つが、その強みの内訳であるという説明があった。

レノボ・ジャパン 品質開発・製品保証 テスト技術 課長の小林康浩氏

大和の開発の強みは、「堅牢性」「耐久性」「信頼性」「性能優位性」の4つ

なお新生大和は、大きく分けると、「振動衝撃試験設計ラボ」「耐久試験設計1ラボ」「無線性能試験設計ラボ」「音響試験設計ラボ」「EMC試験設計ラボ」「耐久試験設計2ラボ」「信頼性試験設計ラボ」「電磁波試験設計ラボ」の8つのラボを擁するが、今回紹介できる内容は、大和研究所の主にThinkPad開発に利用されるそれら施設のあくまで一部であり、ThinkPadの開発には、今回公開する以外にもさらに多くの設備が用いられているそうだ。

さて、新生大和の内部を見ていこう。前述の4つの"強み"の実現のために、先ほど紹介した8つのラボの中で、以下の様な試験項目が実施されている。まず堅牢性については、「繰り返し衝撃試験」「ひねり試験」「衝撃振動試験」などだ。

耐久性については、「LCD開閉試験」「LCDプッシュ試験」などの実施が紹介された。ちなみにLCD開閉試験は、単に開閉するだけでなく、実際にユーザーが手でLCDを開閉する場面を再現できるようにしており、右利きの人が右手で開閉した場合と、同左利きの場合の開閉負荷を再現した状態でそれぞれ試験していた。

信頼性については、「ほこり試験」「拷問試験」「環境試験」などの実施が紹介された。このうち、ほこり試験はMIL規格に対応したものだそうだ。このMIL規格とは、米国国防省が定めている軍用規格であったりする。

性能優位性については、「無線アンテナデザイン」「熱設計」「騒音設計」などの研究設備を見ることができた。

LCD開閉試験。左/右から可動式アームを取り付け、何度も何度も開閉を繰り返す。ヒンジや内部配線に問題が出ないかを試験している

こちらは点加圧試験の様子。面加圧なら耐えて当たり前ということで、面積の異なる2種類の"点"で、加圧位置を次々移動させながらの加圧試験を行っている

写真にある"重り"は、写っている3つの合計で、先ほどの点加圧の際にかかっている重量とほぼ同じ重さだそうだ。具体的な重量は非公開だったが、片手でもつのは結構難しいくらいの重さだった

点でさえ相当な重量に耐えられるので、成人男性が乗ったとしてもビクともしません……というパフォーマンス。踏み絵ならぬ、踏みThinkPadは、見ているだけでも少し心が痛む

これは基板の歪みを計測している。加圧の際に歪みが許容量を超え、はんだクラックを起こしてしまうような場合には、設計見直しとなる

これは、電磁波がThinkPadに与える影響を試験する際に用いる器具。強力な電磁波を照射させることができる。携帯電話など電磁波を出す機器は多く、PCを誤動作させる可能性もあるため、こういった試験が実施されている

これは静電気への耐性試験の様子。8000ボルト以上の電圧で、何度も接触させThinkPadに静電気を蓄積させている

これは同じ器具を用いて、今度はUSB周辺機器に静電気を蓄積させ、そのままThinkPadのUSBポートに差し込んでしまうという試験

環境試験のひとつで、高温環境や、寒冷環境を再現できる部屋の中に、ThinkPadが置かれている。取材中は気温60度、湿度95%という高温多湿環境での試験が実施されていた。極端な数値にも思えるが、例えば運搬中の、飛行機の貨物室や輸送船コンテナの中といった過酷な環境も想定してのものだ

こちらはEMC試験の施設。特殊な素材で壁面を覆い、外部からの電磁波の影響を受けないようにした部屋の中で、ThinkPadから発生する電磁波のみを測定し、規定値におさめるための試験だ

ThinkPadから発生するノイズを試験する無響音室。外部の音も入ってこない特殊な部屋のなかで、様々なノイズを検証している。ThinkPadの"ふくろうブレード"の開発にも活かされた

無線アンテナデザインの試験施設で、外部電波を遮断した環境で、あらゆる角度からの無線受信性能を試験することができる

研究員が手に持っているのがThinkPadの無線アンテナのサンプル。ちなみに無線アンテナ、ちょっとしたデザインの違いで性能がまるで変わってしまうような繊細なものなので、モデル毎にオーダーメードに近いかたちで細かくデザインしているのだそうだ。右写真は、職人芸の痕跡が漂っている同部門のラボの作業デスク

衝撃振動試験の大型器具がずらりとならんだ振動衝撃試験設計ラボの様子。横から縦からThinkPadに繰り返し振動衝撃を与える試験を実施している

この振動衝撃試験では、普通に衝撃を与えるだけでなく、固定していない重りパーツをかませて揺さぶっている。これは、「かばんの中に教科書とThinkPadを入れた状態で自転車通学中」というかなり具体的なシチュエーションを再現している。なんでそんなに具体的? というと、実際に米国市場で、過去に大学生がそういう使い方をして壊れたThinkPadがあったため、以来この試験を実施しているのだそうだ

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動画その1 「かばんの中に教科書とThinkPadを入れた状態で自転車通学中」を再現した振動衝撃試験

この施設では、LCD部分の角などを押して、無理やりぐにゃりとゆがませ、それでも壊れないかを試験している。ちょうど「ThinkPad X1」が"イケニエ"になっていた……

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動画その2 LCD部分の角を押して無理やりぐにゃぐにゃ試験

これはおなじみ(?)の落下試験で、その中でも過酷な角落下試験の様子。四隅×上下の計8箇所、つまりノートPCの全ての"角"から落下させる。ここでも「ThinkPad X1」が"イケニエ"に……

写真は角落下試験の落下地点の底面鉄板。染み付いた黒い塗料は、ここで落とされたあまたのThinkPadのものだろう……。ここまでくるとホラーである

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動画その3 落ちた時の音が怖い面落下テスト

角落下試験の実演後の「ThinkPad X1」の角。大和の基準では、塗装はがれや多少の表面傷はセーフ、ヒビや動作不良はアウト。角の尖ったThinkPad X1でも、重くて大きいThinkPad W700でも、同じ基準を適用

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動画その4 角から落とす落下テスト。角がシャープなX1ですら容赦しない

ちなみに、ご存知の読者も多いかと思うが、同社製ノートパソコンは全て、「ThinkPad」と名の付く限り、まったくの同一基準で、これらの大和での試験を経て開発されている。本稿内でも紹介しているが、薄型特化の「ThinkPad X1」でさえ、他の見るからに頑丈そうなThinkPadと同じ扱いである。例えば耐久性を語っても、"ThinkPad"の名前がついている時点で、一定水準以上の耐久性が担保されると信じられる理由は、ここにあるわけだ。