牧瀬紅莉栖はサブキャラ扱いだった


──ここからはラボメン(キャラクター)についてお話を伺えればと思います。まずは鳳凰院凶真こと岡部倫太郎(オカリン)ですが、個人的にもこれほどの中二病キャラは見たことがありませんでした。いったいどこから彼のようなキャラクターが生まれたのでしょうか

松原 『CHAOS;HEAD』でも主人公はオタクだったんですが、どちらかといえば内に向いた暗くて引きこもりタイプのオタクだったんですね。オタクにも色々種類があるので、今回は外に向いたオタクにしよう、と。中二病って誰でもやらかすことだと思うんですが、それを大学生になってまで引きずっているキャラにしたら、前作とのコントラストもあってインパクトがあるんじゃないかというところから生まれたキャラですね。で、中二病にも色々バリエーションがありまして、オカリンがやっている"つながっていない携帯電話に向かって喋る"というのは、元ネタはネットでは有名な掲示板の書き込みなんですよ。

──声優さんの演技も、中二病を発病しているときはすごくそれっぽいし、そうじゃない素のときはまた違った感じで、すごくメリハリがありましたね

松原 そうですね、オカリンの痛い中二病演技の部分は、声優の宮野さんが事前に台本を読んで、自分の中で作り上げてきたキャラクターなんですよ。だから演技に関してはほとんどこちらから注文をつけてないんです。唯一注文したのは、素に戻るところとの落差をなるべく激しくしてほしいっていうことだけですね。宮野さんが自分の中でオカリンを膨らませた結果、あのキャラが誕生したといっても過言ではないです。

痛いほど中二病のオカリン(中央の白衣)、リアルにネットスラングを駆使するダル(右)──。部室のような空間に集う仲間は、いずれも濃すぎるキャラクタたちなのだ

──そのオカリンの相棒とも言えるダルですが

松原 オカリンは研究者なんですが、実際に手を動かして作業するタイプじゃないので、あのサークルにおける実質的な開発メンバーという設定で作ったキャラですね。あのサークルの感じって、僕や志倉が中高生の頃に国産パソコンブームがありまして、あの時の雰囲気なんですよ。まだPC88とかPC98とかの頃ですけど、誰かのところに集まって、こんなもの作ってみようぜっていう、今でいう同人ソフトの走りみたいなのを皆やっていた時代ですね。あまり過去を美化するネタばかりになるのは好きじゃないんですけど、僕も(おそらく)志倉もあのパソコン黎明期の熱さは忘れないでいきたいという思いがあって、その一端でも表現できたらいいよねと。

──ダルが連発するネットスラングも強烈でした

松原 僕も林も2ちゃんねるの言葉ってあまり詳しくないんですよ。でも今の時代のオタクたちはああいうネットスラングは外せないなというのがあって、林がほぼ一人で勉強していました。努力の賜物です。

──次に天才少女の牧瀬紅莉栖ですが、個人的には一番見ていて安心できるキャラクターでした

松原 実は彼女はプロット段階ではヒロインじゃなかったんですよ。完全にサブキャラで、オカリンの知識を横からフォローしていく物語の牽引役でした。だけどシナリオが上がってみると、紅莉栖がメインヒロインになっていたんです。そこを林に聞いてみると、紅莉栖とオカリンって物語の中で一緒にいる時間が一番長くなるので、そうなると彼らの連帯感がどうしても生まれてきて、自然にそうなっていったんだ、と。

岡部との掛け合いで変わっていく牧瀬紅莉栖

岡部とは幼なじみの"まゆしぃ"こと椎名まゆり

──僕は椎名まゆりがメインヒロインなのかなと思ってプレイしていました。というよりある意味メインヒロインと言ってもいいと思うのですが、彼女についてはいかがでしょうか

松原 これは僕が勝手に思っていることなんですけど、ああ見えてまゆりはオカリンのお母さん的存在なんですよ。ラボに一緒にいて、オカリンとダルが発明をやっているのをそっと見守っている。唯一ヒロインの中ではオカリンの過去を知っている幼馴染みなので、彼を許容する包容力があるんですよね。

──まゆりといえばやはり口癖である「トゥットゥルー♪」が気になります。元ネタは何なのでしょう?

松原 あるかもしれないけど、わからないんです。あの口癖は志倉の初期プロットの段階からあって、元ネタについて聞いてみたこともあるんですけど「いや、教えない」って(笑)

──それは気になりますね……気になるといえば漆原るかなんですが、男の娘というのはやはり流行を意識したところもあるのでしょうか

松原 そうですね、意識してないわけではないです。るかって難しい立ち位置にいるキャラで、ゲーム中でもそれほど目立った存在じゃないんですよ。男の娘という言葉だけで成り立っているキャラなんです。そのわりに人気はあって、アンケートによると人気は紅莉栖がダントツ。次にまゆりがいて、3位がオカリン。そしてるかですね。ヒロインを差し置いて3位に入る主人公というのも珍しいんですけどね(笑)。あと、るかはキャラの成り立ち自体も謎なところがあって、たとえば、るかのお父さんはなぜ「男の娘」を許容しているのかとか、学校ではどうしているのかとか、そのへんの設定なんかは細かくは決めていないんです。あまり本編では活躍できなかったので、その分今回のファンディスク『STEINS;GATE 比翼恋理のだーりん』のほうで活躍してもらっています。

見た目はほとんど……"男の娘"漆原るか

人気メイドにして筋金入りの中二病的思想を持つフェイリス

──そしてさらに濃いキャラであるフェイリスですが……

松原 オカリンよりもひどい中二病を持つキャラを一人、ヒロインに入れたかったんですよ。オカリンが逆に会話についていけなくなってやり込められるのも面白いかなと思って、そういう設定にしました。

──フェイリスといえば雷ネットアクセスバトラーズですよね

松原 雷ネットアクセスバトラーズのボードゲームって、志倉が盤面もコマも作って、ちゃんとルールもあって、遊べる状態のものがあるんですよ。それを志倉がたまに持ってきては遊んだりしていたんですけど、当然制作者なんで志倉がダントツで強いんですね。ところが何回かやっているうちに林が一回勝って、それ以降は試合をやっていないと聞いているので、必然的に雷ネット最強は林ということになっています(笑)

──ちゃんとしたルールがあるんですね

松原 そうですね、ちゃんとルールがあって細かいところにリアリティを持たせるというのが、このシリーズならではだと思うんです。雷ネットアクセスバトラーズに限らず、インターネットの掲示板や実際の秋葉原のお店を絡めたり、ジョン・タイターやタイムマシンの理論にしても調べればちゃんと出てきますからね。そういう現実との絡みがあることで、リアリティのある物語ができるのかなと思います。

──たしかに背景でも実際の秋葉原がかなり細かく再現されていました。ゲームの舞台が『CHAOS;HEAD』の渋谷から秋葉原に移りましたが、その違いはどこから?

松原 前回(CHAOS;HEAD)がアウェイで、今回(シュタインズ・ゲート)がホームという呼び方をしているんですが、前作とのコントラストを付けたかったのでホームに設定しました。ただ、秋葉原って、進化のまっただ中にあって、取材したそばから店舗がリニューアルしちゃったり場所が変わったりするんですよ。ゲーム当時の秋葉原ってもう残ってないんです。なるべくゲーム発売直前までの秋葉原は入れたいと思っていたのですが、背景に出てくる街並みからして、現在進行形で変わっていってしまってますからね。

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