【レポート】

新海誠監督「皆さんの心のどこかに居場所を」 - 劇場アニメ『星を追う子ども』初日舞台挨拶

 

劇場アニメ『星を追う子ども』の公開がついにスタート

『ほしのこえ』『雲のむこう、約束の場所』などを手掛けた新海誠監督が、『秒速5センチメートル』から4年の年月を経て放つ待望の最新作『星を追う子ども』が、2011年5月7日に公開初日を迎えた。

"人と人の心の距離"を描いてきた新海監督が今回挑んだ『星を追う子ども』は、少年少女の冒険と成長の物語。人と人だけではなく、世界と世界、世界と自分との距離も印象的に描かれた本格ジュブナイル・アニメーションとなっている。

公開初日となる5月7日に新宿バルト9で行われた初日舞台挨拶には、新海監督のほか、TVアニメ『侵略! イカ娘』で主人公・イカ娘を演じ、長編アニメーション映画では初主演となるアスナ役の金元寿子 (かねもと・ひさこ)、アスナの相手役となる兄弟シュンとシンを演じた人気実力派の入野自由 (いりの・みゆ)、そしてアスナと旅をともにする教師・モリサキ役のベテラン声優・井上和彦 (いのうえ・かずひこ)が登壇。初日を迎えた感想や制作時のエピソードなどが語られた。

初日舞台挨拶でステージに登場した(写真左から)新海誠監督、金元寿子、入野自由、井上和彦

満員の観客の前に姿を現した4人。初日を迎えた感想として新海監督は、「この作品は2年前から制作を始め、完成したのがひと月半前でした。今日から公開ということで、ようやく長かった仕事が終わったんだなという気持ちになることができました」と語り、まずは来場者に感謝の意を述べる。

これまでに作ってきた作品は日常生活を美しく描くことを目的にしたようなスタイルだったという新海監督だが、今回の『星を追う子ども』については、「難しいことを考えなくても、2時間席に座って、映像と音楽と物語に身を浸していればそれだけで楽しめるものにしたかった」とのことで、「前作『秒速5センチメートル』を作った後に海外にしばらく行っていたのですが、そこでいろいろな海外の方と出会う中で、『秒速』のような日本の生活を大前提として、日本での生活様式をわかっていないとイマイチ深いところにまでは入り込めない作品だと、上映中僕自身が少し居心地の悪い思いをしてしまったので、次に作るのであれば、もうシンプルに観ていて面白いなと思えるものを作って、いろいろな人に観てもらいたいなと思ったのが一番大きな理由」と語る。

今回の作品に参加して、「アスナは、この作品の中で本当にいろいろな経験をしていくのですが、私自身も収録させていただく中で、3日間でしたが、すごくたくさんの経験をさせていただきました」という金元は、「本当にアスナと一緒に旅をしたような気持ちで臨みましたので、皆さんにとってアスナがどういう風に映るのか、今少しドキドキしていますが、ぜひ共感していただける部分が少しでも私が演じる中にあったらいいなと思っています」。

アスナ

一方、シュンとシンの一人二役という難役を演じた入野だが、「僕の中では2人の別々のキャラクターの、ひとりひとりの人生を自分の中で演じたので、一人二役というのは関係なく、素直に演じさせていただきました」と語り、「監督からの説明も、オーディションのときから少しもぶれておらず、すごく演じやすかったですし、物語もいい物語だったので、やっていて楽しかったです」との感想を述べた。

シュン

シン

モリサキ役を演じた井上は、自らが演じた役どころについて、「外見は大人ですが、アスナと一緒に旅をすることによって、ちゃんとした大人になっていくような感じがします」と解説。「観ていただけるとわかると思いますが、人を愛するということはどういうことなんだろうっていうことを、とても考えさせられるような役でございました」と続けた。

モリサキ

また、新海作品への出演経験のある井上は、通常のアフレコの前にボイステストの形で役作りを行うという新海監督ならではの収録方法を紹介。そして、「収録はとても短い期間でしたが、それなりのチームワークを出せたのではないかと思っております」と振り返る。

キャスト陣の話を聞き、アフレコ当時を懐かしく思い出したという新海監督。「(『星を追う子ども』は)3人が力をあわせて旅をするというよりは、3人それぞれが少しずつ別の方向を向いていて、でも最後には同じ場所に向かって歩いていくというタイプの話なので、ちょっと登場人物たちの気持ちの移り変わりも複雑で、難しい役どころが多かったのではないかと思うのですが、すばらしい演技をしていただいて、本当によかったです」と笑顔を見せた。

今作が初顔合わせとなった金元について新海監督が、「金元さんに一番最初にお会いしたときは、まだ『イカ娘』が始まる前で、ボイステストも『イカ娘』以前だったのですが、実際に録るときには『イカ娘』が始まっていて、すっかり『イカ娘』になっていたので、声優さんは役柄によって、同じ人でも変わるものなんだなと思いました」との感想を述べると、金元は「それはきっと私だけかもしれません」と苦笑いを浮かべる。さらに新海監督は金元について、「見た目そのままのすごくマジメで、声の裏側にどこか張り詰めた緊張感みたいなものがある方で、今日もお話をしていて耳を疑ったのですが、実は昨日もこの劇場に様子を見に来ていたんですよ」とのエピソードを披露。また、そんな金元についてキャスト陣も

入野「現場でもすごくまじめで、ものすごい緊張されていて……」
井上「僕と自由が一生懸命にふざけて、大変だったよね(笑)」
入野「本当に旅に出るアスナの感覚と似ているのかなと思うぐらい、ピンと張り詰めていて、その中で和彦さんが……」
井上「オレだけじゃない!」

と息のあったやりとりを見せつつ、「現場はものすごく雰囲気が良くて、本当に和彦さんをはじめ、温かい感じでした」とアフレコ当時を振り返る入野は、「監督もすごくイメージがはっきりされていて、僕たちが役作りで迷ったとき、ちゃんと『こうです』と提示をしてくださるので、すごく信頼もできましたし、音響監督の三ツ矢さんとのコンビネーションも絶妙でとてもやりやすかった」という。それに対して新海監督が「ちょっとこういう風にやり直してくださいっていうときは、全部三ツ矢さんにお願いして伝えていただきました。特に井上さんは僕からとっても大先輩で、『美味しんぼ』の山岡とか大好きだったので(笑)、少しこういう風に変えてみてくださいっていうのだけでももう覚悟を決めて言わないといけなかったんですよ。でも、すばらしい演技を嫌な顔ひとつせずにいただけて……」と答えると、井上が「あんまり言うと、嫌な顔をしたみたいじゃないですか」と会場の笑いを誘う。

ちなみに新海監督の入野に対する印象は「休み時間にずっとモンハンをやっていらっしゃったこと」。「入野さんは身体を動かしながら、本当に楽しそうに演じてくださって、『これが終わっちゃうのが寂しいです』みたいなことも言ってくれたので、それにとても勇気づけられた」という新海監督に、「それは皆さんが思っていたことだと思う」という入野が、「アフレコで3日間とることはあまりなく、時間も長かったので、疲れはするのですが、何かそれも気持ちいいみたいな(笑)」との感想を述べると、井上も「妥協が一切ないというか、妥協が許されないというか、よしこれでいいだろうっていうところで、監督が『すいません、もう一回お願いします』というのに、『はい、わかりました!』みたいな感じで(笑)」と本作がいかに作りこまれた作品であるかを語った。

ここでは最後に、新海監督が語ったメッセージを紹介しておこう。

新海監督「この作品は、たくさんのスタッフで2年間かけて作り上げてきた作品です。今は代表して僕たちが立たせていただいていますが、200人ぐらい後ろにスタッフが立っていると思ってください。必死に作ってきた作品ではありますが、それでも最近特に思うのは、アニメーションはひとつの娯楽でしかないということです。衣食住に勝る優先順位のものではないなと。というのは、3月11日に大きな地震があって、この作品はまだ作っている最中だったのですが、そんなときにエンタテインメントでしかないアニメーションを作り続けることという理由を考えざるを得ませんでした。それでも制作者としては、アニメーション、もしくは娯楽にしかできない役割があるという風にも信じたいと思うんですね。たとえば、何か深い悩みがあるとき、心に軽い傷を負ってしまったとき、そういうときにアニメーションや娯楽を観ることで、少しその傷の治りが早くなったり、少し生きるのが楽になったりするような役割を持っている、バンドエイドみたいなものだと思うんです。傷の治りを早くするための。で、バンドエイドですから、傷が治ったら捨ててしまっていいと思うんですよ。ですから、必須のものではないけれど、生き方を少し楽にしてくれるという意味では、僕も今まで生きてきて、ずっといろいろな作品に助けられてきましたし、この作品もそんな風に、もしかしたら劇場を出た瞬間に忘れてしまう方もいらっしゃるかもしれないし、何カ月か心に残る人、心に留めてくださる方もいるかもしれませんが、少しでも皆さんの心のどこかにこの作品が短い期間でも居場所を見つけることができれば、幸せだと思いますし、そう願います。今日は楽しんでください。ありがとうございました」

劇場アニメ『星を追う子ども』は、シネマサンシャイン池袋。新宿バルト9ほかにて全国ロードショー。公開劇場などの詳細は公式サイトをチェックしてほしい。

(C)Makoto Shinkai/CMMMY


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