ネクストサービス株式会社代表取締役CEO・松尾昭仁氏。セミナープロデューサーや起業コンサルタントとして活躍している

今の季節、新学期、新社会人と環境が大きく変わる人は多いはず。自分を変えるチャンスと前向きにとらえる一方で、新しい環境になじめないのではないかという不安もあるのでは? こんな人生の節目にどう向かっていったらいいだろうか。セミナープロデューサーで『絶対の自信をつくる3分間トレーニング』(あさ出版)の著者である松尾昭仁氏にアドバイスをいただいた。

松尾氏は、人材サービス企業に就職したが、その後虚無感に襲われ、ギャンブルにのめりこみ何もしない日々を送っていたという「底辺を知っている男」。そこから一念発起し、現在のネクストサービス株式会社を起業した。30代半ばを過ぎてからの起業をした遅咲きの成功者でもある。

近著『絶対の自信をつくる3分間トレーニング』(あさ出版)は、ワタミグループ創業者の渡邊美樹氏より推薦を受け話題となっている。

自信に結びつく「意識」と「行動」とは?

――4月は、これから社会に羽ばたく大学卒業生もたくさんいます。まず、アドバイスをいただけますでしょうか。

松尾 卒業して社会に出る時期というのは、自分をリセットするいい機会なんですね。これから入る会社には、自分を知っている人がほとんどいないわけですから、キャラチェンジもできるし、今までダメだった自分を変えるいい機会です。今までなにごとにも自信がもてなかった人であっても、自信があるように見える自分を作れるいいチャンスがきたなと思ってもらえれば、明るくなれるのかなあと思います。

『絶対の自信をつくる3分間トレーニング』価格:1,365円

――でも、「自信を持つ」というのはなかなか難しいことですよね。自信を持とうとすれば、かえって会社の先輩や上司に見透かされるのではないかとおどおどしてしまうかもしれません。

松尾 見透かされていいんですよ(笑)。先輩や上司だって、新入社員の頃があったんですから、「こいつは自信あり気に見せようとしているな。自分を大きく見せようとしているな」なんてことは、隠そうとしたってわかってしまいます。むしろ、「こいつは自分を変えようと努力しているから、後々伸びるな」と評価してくれるものです。ですから、見透かされることを前提に、自信あり気に振る舞えば、それでいいんですよ。

――なるほど。では、自信あり気に振る舞うにはどうしたらいいでしょう。

松尾 たとえば、本書にも描きましたけど、「時計を3分進めておく」などというのは社会人としてやっておくべきでしょうね。常に3分の余裕があれば、なにをするにも気持ちにゆとりがもてますし、ちょっと身だしなみを整えることもできる。うーん、あとはいろいろ小技に関しては、本書にたくさん書きましたので、ぜひお読みください(笑)。

――松尾さんが社会人一年生のときは、なにを心掛けていましたか?

松尾 僕はダメダメな社会人一年生だったので、参考にならないですね(笑)。まあ、35歳で起業しようとしたときが、本気になった一年生です。このときは、とにかく外に出ました。元々、僕は内弁慶で、外に出たくないタイプなんですけど、これでは駄目だと自分を追い立てて、人に会いにいきました。そこで、いろいろな人と人脈ができていったんです。

本を書く人、起業している人というのは、それまでは特別な才能に恵まれた人なんだと思いこんでいたんですね。でも、実際に会ってみると、そのような特別に見えていた人の、緊張したり、悩んだりしながら、頑張っている姿がだんだん見えてくる。それで、僕も「頑張らなければなあ」「頑張れば、自分にもできるかもなあ」と思えるようになったんです。それは、実際に沢山の人と会わなければ、わからなかった。

――でも、沢山の人に会うというのは簡単なことのように見えて、ものすごくエネルギーがいることですよね。

松尾 いやあ、大変ですよ。僕なんか、起業する前はもうほとんどひきこもりに近い状態でしたから、最初のプレッシャーは大きかったです。やったことは、"とにかく酒にとことんつきあう"です。朝まで飲むと言われたら、朝まで飲む。そこまで長い時間、一緒にいると、その人のことがわかってくるし、その人と比べて自分になにが足りないのかがわかってくるんです。

ただ、成功している人、会社の中で仕事ができる人というのは、ほとんどの人が面倒見はいいですよ。余裕がありますから。それなのに皆、勝手に雲の人と思いこんで近寄らないんです。勇気を出して、くっついていれば、「こうすればいいんだよ」とか教えてくれるんですよ。あんまり難しく考えないで、しばらく、これと思った人のカバン持ちをやればいいんですよ。それだけです。簡単なことです。

――なるほど。中には転職して新しい会社に入るという方もいると思います。ある程度のキャリアをもって、新しい環境にいくわけですから、カバン持ちからというわけにはいかないところがありますよね?

松尾 転職して新しい環境に入るんだったら、まずは「朱に交わる」ですね。そこの環境に一度染まってみる。もちろん、「なんでこの会社こうなの? ヘンじゃないの?」と思うことはたくさんあるでしょう。社風とか文化とかが違うのですから。でも、それを「おかしい」なんて文句いっているのは、ただの時間の無駄。前にいた会社と文化が違うということもわかった上で、転職してこなければいけないんですから。一度、朱に交わってから、それから変えるべきものは変えていく。

――でも、我慢にも限界があったりしますよね(笑)。

松尾 我慢できないという人は、起業すればいいんです。だから、起業家というのはみなさんワガママですよ(笑)。ある意味、会社不適合者の集まりですから。ただ、そのワガママを貫くための努力が必要ですけど。

それから、成功している起業家というのは、一度は会社に入っている人が多いですよね。「組織」というものを経験したことのある起業家と、学生のときから起業した人では、その後の組織のスケールが違うと思います。一度組織を知った人は、組織の作り方がわかるんです。人間は、見たことのないものは作れないですから。できる起業家は、働くためというよりも参考にするために、戦略的に組織に一度は入ってみるでしょうね。

――結局、どんな環境の変化であっても、チャンスと捕らえて、前向きに考えていくことが大切なんですね。

松尾 僕は自分の子供たちに、「月曜日大好き」って言ってるんです。家族のために働いているというのももちろんありますけど、子供たちには「好きで働いている」と本音を言っています。「ごめんねえ、パパばっかり好きなことして」って(笑)。だって、大人が楽しそうに働いていないと、子供たちは大人になりたくない、働きたくないってことになっちゃうでしょ。

「満員電車に乗って通勤するのがつらい」って言う人は、満員電車に乗らなくていい方法を考えればいいんです。始発駅から座席指定を予約するとか、起業するとか、会社のそばに引っ越すとか。

僕は以前は後ろ向きな人間で、人のせいにするのが得意だったんです。政治のせい、世の中のせい、天気のせい……。でも、成功している人を研究したら、みんな自己責任の考え方がしっかりしている。たとえば、一流のセミナー講師は冬場に雪の多い地域のセミナーの予定は入れない。飛行機が欠航になる可能性があるから、春夏に予定を入れる。二流の講師は、前泊する。三流の講師は天気の所為にする。つまり、降雪という自然現象だって、天気の所為にせず、自分で対処法を考えられる人が一流なんです。

ですから、前向きにポジティブに考えていくというよりも、すべては自己責任と考えて対処法をあらかじめ考えていく。そうすれば、政治が悪くても、世の中が悪くても、天気が悪くても、ちゃんと仕事はできるんです。ぜひ、みなさんにも新しい環境で、「自己責任バカ」になってほしいと思います。