【レポート】

テレビからライブへ - AKB48の成功に見るアイドルの進化論

 

新書『グループアイドル進化論~「アイドル戦国時代」がやってきた!~』(岡島紳士・岡田康宏:著 毎日コミュニケーションズ刊)とアイドルDVDマガジン『NICE IDOL(FAN) MUST PURE!!! vol.2』(岡島紳士:監修)の発売を記念したイベント「アイドルミュージックスクール2」がこのほど、新宿EXITで開催された。

左から、中森明夫、北川昌弘、岡田康宏、岡島紳士

イベントでは、前山田健一によるDJ、うしじまいい肉の撮影会、竹中夏海×鎌田紘子の対談などとともに、AKBブームとアイドル戦国時代、日本のアイドル文化について、アイドル評論家・中森明夫、アイドルウォッチャー・北川昌弘の対談が『グループアイドル進化論』の著者、岡島紳士・岡田康宏の進行で行われた。

グループアイドルの過去と現在

中森明夫「北川さんが僕より2つ3つ年上だから一番年長のアイドルライターなんだよね。2人は何歳?」

岡島紳士「80年生まれの30歳です」

岡田康宏「僕は76年生まれ、35歳です」

中森「1980年って松田聖子がデビューした年でしょ。はるかに年下だよね。だから先輩として北川さんにしめてもらおうと思って(笑)。誰に断ってこんな本(『グループアイドル進化論』)出してるんだ、北川さんは怖いんだぞと。そういう都市伝説を流そうかと思っていたんだけど(笑)」

北川昌弘「いや、全然怖くないというか(笑)。AKBさんがブレイクして若いアイドルファンが増えてきた、一番良いタイミングでこういった手に取りやすい新書が出てきたことが素晴らしいと思います。映画や音楽の世界で評論家がたくさんいるのに対して、アイドル界ってあまりそういう人がいないんですよね」

うしじまいい肉

中森「映画や音楽のようにアイドルには明確な賞がないから評論家が育たないんだよね。新聞に論壇時評や文壇時評はあってもアイドル時評はないでしょ」

岡島「アイドル文化もいずれはそうなっていくんですかね?」

北川「可能性はあるかもしれないですね。音楽業界で他のジャンルのCDが売れなくなっていく中、アイドルのCDだけが売れている。そのうち音楽評論家がこのジャンルに流れてくるかもしれない」

中森「そろそろ『ミュージックマガジン』がAKBの特集をするんじゃないかな。渋谷陽一が何か理屈つけて語りだしたり。『ロッキング・オン』には自分語りの評論っぽいのがあるでしょ。自分は学校を辞めて、何年もひきこもっていて、カート・コバーンが好きです、みたいな。そういう形のAKB評が出てくるかもしれない。でも『グループアイドル進化論』にはそういう自分語りが一つもないですね。岡島さんと岡田さんの自分語りがゼロだよね」

岡田「そこは意識して作っていて、この本の中では自分語りはせずに仕組みだけを扱おうと思ったんですよね。歴史や年表を入れて資料的な価値があるように、AKBから入ってきた若い世代にアイドルグループの歴史と現状を一通り知ってもらえるように、というのは考えています」

最近のアイドルファンはオタクじゃないかもしれない

鎌田紘子

中森「北川さん、この本でどこか引っかかったところありますか?」

北川「"アイドル冬の時代"がどこで終わったかですね。冬の時代にはアイドルファンであることがかっこ悪いとされていて、アイドルファンと思われたくないからアイドルを好きにならないという構図があった。それが終わったのは、94年に雛形あきこが出てきて若い中高生が振り向いたことだと僕は認識している。ただ音楽業界では、アイドルはかっこ悪いという意識がその後も続いていて、当時はいかにアイドルではなくアーティストですよとアピールするかが勝負だった。例えば、小室プロデュースだからアーティストですよと言って売る。SPEEDもアーティスト色が強い。Perfumeも出てきたころはアイドルっぽかったけれどアーティスト色を出すことで認められてきたのでは?」

中森「今年の初め、NHKでAKBのドキュメンタリーがあったでしょ。それをツイッターで実況していたら反響が大きかったんだけど、AKBファンは結構キツいことを書いたのに、いいリプライばかりだった。だけどちょっと秋元康と中田ヤスタカを比べるようなことを書いたら、Perfumeファンと中田ヤスタカファンからはきついリプライがたくさん来るわけ。AKBファンとPerfumeファンで全然反応が違うんだよね」

岡田「Perfumeのファンというのはアイドルが好きなことをまだかっこ悪いと思っている人たちが多くて、Perfumeはアーティストとして評価されている、作品が良いから、というのが大きなよりどころになっているんですよね。逆にAKBのファンにはそういうこだわりがあまりない。子どものころにモー娘。がいて、アキバ系カルチャーに対する偏見も少ない若い子が多いから、アイドル好きであることがかっこ悪いという意識が薄い。だから、いじられてもわりと平気なのかなと」

北川「アイドルファンがかっこ悪い、という考えはもう完全に古いですよね」

中森「いい時代になったよね。かっこ悪いと言っている方がかっこ悪い的な」

北川「最近のアイドルファンはオタクじゃないかもしれない。アイドルファンにイケメンが増えているという話があったけど、かっこいいのはオタクじゃないから。かっこいいオタクというのは定義上、間違っている。オタクというのは自分がどう見えるかにはまったく興味がない。結果に結びつかない努力はしないというのがオタクの本質。僕は自分自身をオタクだと思っているのでよくわかるけど、見た目を気にしている段階でオタクではないんです」

秋元さんの、AKBの方法論が正しかった

竹中夏海

中森「この本で分かったのだけど、『アイドル戦国時代』の一番大きなポイントはライブだということですよね。音楽がCDから配信になって売上が落ちているんだけど、アイドルはライブ+物販で収益を上げて、ライブの動員をインターネットメディアが支えていると」

岡田「そうですね。もうひとつ、最近のアイドルはおニャン子クラブやモーニング娘。のようにテレビからのスタートではなく、PerfumeやAKB48などのようにライブ活動を続けて、そこでファンに支持されたアイドルがマスメディアに出てくる形に変わってきたということです」

中森「『BUBKA』で言っていたホリエモンのAKB評が傑作で、秋元さんがテレビを通さないで集金できるシステムを作りたかったんだよと」

岡田「それはすごくシンプルで的を射ていますよね」

北川「僕の中ではテレビに出ている、メディアに乗っかっているものがアイドルだというスタンスなんですよ。おニャン子クラブはテレビの力が一番あったころだし、モーニング娘。はドキュメントバラエティーという新しい手法が注目を浴びた。今、テレビの勢いがなくなってきたときに、秋元さんの、AKBの方法論が正しかったということなのでは。ぶっちゃけて言うと、僕の中ではテレビに乗っかっていないアイドルはアイドルではないと言っても良いかもしれない。直接会って認知されるのがアイドルだと言うのなら、それは僕が知っているアイドルとは別のものです」

中森「だんだん北川さんの中で、これはオタクではない、これはアイドルではない、と存在論的な話になってきたね」

岡島「以前のオタクやアイドルとは別の何かになってきているということですね」

中森「だから進化したってことなんでしょ。北川さんの意見には全く同感なのね。アイドルはメディアを通して関係性を作るものだから、アイドルとの関係は直接のようでいて直接ではない。どれだけ近くても、あくまでステージを通した関係性なわけで、総選挙をやったりして、直接であるかのように見せかけているのは、実は直接ではないからなんだよね。最近、AKBの握手会で具合の悪くなるメンバーが出たでしょ。ということは直接性に耐えられなくなって限界が来ているんだよ。体が握手を拒んでるの。やっぱり、あんまり会いたくないんじゃないの?(笑)」

北川「それを言っては可哀想。実際、彼女たちは人気が出すぎて忙しすぎるわけです。僕はこれまで一度も握手会というものに行ったことがないけれど、彼女たちは直前まで別の仕事ががっつり入っていて、握手会も長時間やるわけでしょ。でも、それが今の成功の要因だから止めるわけにはいかない。倒れるかどうかの勝負をし続けなくちゃいけなくなったわけです」

アイドル映画の評論と普通の映画評は違う

中森「ここ数年、僕は『美少女映画館』という連載をしていたのね。なぜその連載をしようと思ったかというと、『天然コケッコー』を観に行ったら、劇場に新聞の映画評が貼ってあったの。2つとも『この映画はなにも起こらないけれど、かけがえのない日常を描いていて素晴らしい』といった内容なんだけど、でも主演の夏帆のことが何も書いてない。何も起こらない? そんなことない、夏帆かわいいじゃん!(笑) 夏帆がかわいいからお金を払って映画館に観に行っているのに、これはおかしいと。そういう話をしていたら、連載をしてくれという話になった。この連載をやって良かったと思うのは『誰も守ってくれない』の志田未来に会えたことですよ。宇多丸がラジオで『誰も守ってくれない』のことをボロクソに言っていたんだよね。映画では志田未来が犯罪者の身内で佐藤浩市と一緒に『レオン』みたいな感じで逃げるの。その中でネットが誹謗中傷の飛び交う酷い空間だと描かれていて、それに対して宇多丸が怒っている。インターネット社会の描き方が酷いと。でもね、いいんだよそんなの。だって志田未来がかわいいんだから(笑)。あれは全部、志田未来を追い詰めるための舞台装置なんだから」

北川「あの、宇多丸さんって誰ですか?」

中森「北川さん、さすがだね」

岡田「あまり他の人とか、気にしないタイプですか?」

中森「北川さんは現場に行かなきゃいけなくて忙しいから」

北川「土日は写真を撮りたくて現場に行くし、テレビドラマも見なきゃいけないし。映画もなるべく見る努力はしているつもりです」

中森「24時間、ほとんどをアイドルに使っている感じ?」

北川「それをアイドルに使っていると言うのであれば。ドラマは、女の子が頑張っているかとか、見たことがない子がいると慌てるとか、ゲストは誰かなとか、そういう視点で見ているからストーリーを聞かれてもわからない(笑)」

岡島「アイドル映画の評論が普通の映画評と違うように、アイドルドラマの見方も普通のドラマとは違うと言うことですよね」

ジャンルを守るのが評論家の仕事

岡島「最後に『グループアイドル進化論』に点数を付けてもらっていいですか?」

北川「アイドル冬の時代」の認識の問題で10点引いて。あとはAKBになぜピンチケが食いついたのか、もうちょっとわかりやすく書いてあったら、というところが5点、インタビューの対象がアイドリング!!!、ももクロ、ぱすぽ☆と、ちょっと絞られすぎているので5点引いて、80点ですかね」

中森「僕はいいと思いますよ、90点くらいで。残り10点というのは、これは誰が書いても無理だと思う。その10点は今後の課題で。ただ、批評がジャンルを規定するというのは重要で、この本によって『グループアイドル』というジャンルが規定されるのは大きい。単純に詳しいという部分では、僕らはもうネットをやっているファンにかなわない。では評論家になんの意味があるのか。ちょっと真面目な話になるけれど、去年、AKB商法が非難されたときに僕は擁護のコメントをしたんです。なぜかと言うと、マンガの青少年保護育成条例があって、アイドルにもそういうものが作られる可能性があると思ったから。政治家は法律を作るのが仕事だから、なんでも枷をはめたがる。そういうときに評論家はうるさく言うことでそのジャンルを守らなければならない。中森明夫がうるさく言っているからめんどくさいなとそう思わせるくらいのことはできる。それが評論家の仕事なんです。だから、2人もこれから『アイドル』というジャンルの拡大と更新のために頑張っていってほしい」

岡島「頑張ります。今日は出演者、お客さん含めてみんな、アイドルオタクですからね」

中森「まあ、みんなアイドルが好きということで、そこがポイントですよね」

構成:岡田康宏 写真:フチザキ

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