Photo01:Jeff Bock氏(Director of Marketing, Industrial & Multi-Market Microcontrollers)。当日は筆者の前も、やはり別の媒体か何かのインタビューがあったそうで、連続インタビューがちょっと申し訳なかった。

先月、フリースケール・マイコン・サミット in 東京の模様をお伝えしたが、この前日にJeff Bock氏(Photo01)にお時間を頂いて、もう少し細かな話を伺ったので、その模様をお届けしたいと思う。ちなみに今回のインタビューはサミットの前日ということで、当日発表となったPowerPCベースのMCUの話には触れていないことを最初にお断りしておく。

Q:Kinetisの発表後のFreescaleのMCUビジネスの状況は? Kinetis発表前はというと、カスタマからしばしば「競合メーカーはARM(Cortex)の製品を持ってきているよ」と言われていたそうですが

まず、そもそもなぜARMを選択することにしたか、というところから話をしたい。ご存知の通り、Freescaleは膨大なポートフォリオを持っている。この中にはARMも含まれており、我々は長年ARMとも共同で製品を発表してきた。そうした流れの中で、ARMがMCU向けに新製品を出してきた。それ以前といえば、かなり昔に特定マーケット向けにARMベースのMCUをリリースしたことはある。

我々は産業/民生向けの製品ファミリにはColdFireを、自動車向けとネットワーク向けにはPower Architectureを提供している。ところがカスタマはARMアーキテクチャを使いたいと希望していた。我々はこれに応えられるオプションを当時持ち合わせていなかった。我々はIPも周辺機器もソフトウェアも提供できるが、カスタマが欲したのはARMだ。PowerあるいはColdFireだけでは、ビジネスを急速に拡大することは出来ない。そして我々はビジネスを拡大したい。そこで我々は、こうしたカスタマニーズに応えるための製品として、既存の製品ラインを補完するものとしてKinetisファミリを投入した。この、複数のアーキテクチャを並行して提供するということが、(同じくARMアーキテクチャを提供する)他社との差別化の大きなキーポイントでもある。

今後の展開については、明日のセッションで若干のPreviewを示すことになると思うが、1つ言えることは引き続きこうしたポートフォリオを維持し続けるつもりということだ。Powerアーキテクチャは最高の性能のMCUプラットフォームとなる。ColdFireは、引き続きASSPタイプやセミカスタム向けのソリューションに投入される。ARMは広い範囲でスケーラブルな汎用ソリューションとして、省容量から大容量のFlash Memoryを搭載し、様々な周辺機器を搭載する形で提供される。これがARMを選択した理由であり、かつポートフォリオにどう変化があったか、という答えになる。

Q:2つ目の質問です。Cortex-M0/M3をどう考えますか? ARMアーキテクチャを選択するカスタマは多いと思いますが、その全てが高性能を求めるわけではなく、例えばDSPは要らないという場合もあるでしょうし、中には性能よりも低コスト性や省電力性が重要という場合もあるでしょう。競合の、例えばNXP SemiconductorsはCortex-M4のみならずCortex-M0やCortex-M3を搭載した製品も一緒にラインナップしていますが、こうした対応はどうでしょう?

まず最初に、Cortex-M4は非常にパワフルで、ローエンドからハイエンドまでスケーラブルに展開できる。例えばCortex-M4を使った最初の製品にはDSP拡張は搭載しているが、FPUは搭載していない。今後はFPUを搭載した製品をハイエンド向けに展開するかもしれない。もっと先の話をすれば、我々はCortex-M4をもっと幅広く展開することになると思う。Cortex-M4とM0/M3の違いは、90nmプロセスの利用にある。個人的にはM3とM4を比較した場合、M4の方が優れていると思う。

Q:それはパフォーマンスの観点で、ですか?

パフォーマンスと命令セットの両方でだ。Cortex-M4の方がより能力がある。カスタマにとっては、Cortex-M3もM4も違いはない。どちらも同じプログラムが利用できる。次の比較はCortex-M0だ。Cortex-M0は組み込み向けの8/16bitアーキテクチャの置き換えを狙った製品だ。たしかに以前と比較した場合、32bitのボトムエンドと8/16bitのトップエンドはより近くなっている。我々はローエンドのKinetsファミリを32KBのFlashの構成で1ドル未満で提供しており、後はカスタマが決めることだ。それに我々は8bitのソリューションも提供している。もちろん将来は、よりARMのアーキテクチャが広く利用されることになるかもしれないが、その時点においてもまだ既存の8bitアーキテクチャを好む顧客は存在し続けるだろう。そういうことも含めて、我々は依然として8bit Solutionを提供している。特にアジア、その中でも中国市場では、引き続き8bitへのデマンドが非常に高い。