野村総合研究所(NRI)がこのほど算出した2010年度の「追加型株式投信(※)の動向」によると、設定から解約や償還を引いた資金増減は5兆9,894億円となり、大幅な資金流入となった。海外の債券や不動産投資信託(REIT)などに投資する、高利回りの毎月分配型の投信が、資金流入を牽引した。

※ いつでも時価で購入(追加設定)ができる投資信託で、約款上株式の組入れが認められているもの(出典 : 投信資料館)。

NRIによると、2011年3月の追加型株式投信の純資産残高は前年度末比2兆1,060億円増加し、53兆801億円となった。設定から解約や償還を引いた資金増減は5兆9,894億円となり、投資収益率は平均で0.3%。分配は4兆35億円と、年度末ベースで過去最高となった。

分類別に見ると、資金が流出した(資金増減がマイナスになった)国内株式型や海外株式型では残高がぞれぞれ5,358億円、9,257億円減少した。一方、グローバル債券やインデックス型を除く海外債券型、国内債券型、国内外の不動産投信型には資金が流入し、残高も増加している。

2010年度の年間資金流入ランキングには、その傾向が集約されている。海外の債券や不動産投資信託(REIT)などに投資する、高利回りの毎月分配型の投信が、上位を占めたのだ。また、「通貨選択型」の投信が人気を集めたのも、特徴となっている。

2010年度の追加型株式投信「資金純流入ランキング」

順位 ファンド名 運用会社
1 野村グローバル・ハイ・イールド債券投信(バスケット通貨選択型) 資源国通貨コース(毎月分配型) 野村アセットマネジメント
2 短期豪ドル債オープン(毎月分配型) 大和住銀投信投資顧問
3 フィデリティ・USリート・ファンドB(為替ヘッジなし) フィディリティ投信
4 野村米国ハイ・イールド債券投信 (通貨選択型) ブラジルレアルコース (毎月分配型) 野村アセットマネジメント
5 三菱UFJ 新興国債券ファンド 通貨選択シリーズ<ブラジルレアルコース>(毎月分配型) 三菱UFJ投信
6 日興アシュモア新興国財産3分法ファンド毎月分配型(ブラジルレアルコース) 日興アセットマネジメント
7 新光 US-REIT オープン(愛称 : ゼウス) 新光投信
8 ダイワ・グローバルREIT・オープン(毎月分配型)<愛称 : 世界の街並み> 大和投資信託
9 ブラジル・ボンド・オープン(毎月決算型) 大和投資信託
10 野村ドイチェ・高配当インフラ関連株投信(通貨選択型)ブラジルレアルコース(毎月分配型) 野村アセットマネジメント
11 フィデリティ・USハイ・イールド・ファンド フィディリティ投信
12 ラサール・グローバルREITファンド(毎月分配型) 日興アセットマネジメント
13 エマージング・ボンド・ファンド・ブラジルレアルコース(毎月分配型) 大和住銀投信投資顧問
14 ニッセイ日本インカムオープン(愛称 : Jボンド) ニッセイアセットマネジメント
15 LM・ブラジル国債ファンド(毎月分配型) レッグ・メイソン
16 ワールド・リート・オープン(毎月決算型) 国際投信投資顧問
17 野村グローバル・ハイ・イールド債券投信(バスケット通貨選択型) アジア通貨コース(毎月分配型) 野村アセットマネジメント
18 野村グローバルCB投信(バスケット通貨選択型)資源国通貨コース(毎月分配型) 野村アセットマネジメント
19 ピムコ・グローバル・ハイイールド・ファンド(毎月分配型) 三菱UFJ投信
20 ハイグレード・オセアニア・ボンド・オープン(毎月分配型)(愛称 : 杏の実) 大和投資信託

追加型株式投信のうち、毎月分配型だけ取り出してみると、2011年3月の毎月分配型(追加型株式投信)の残高は前年度末比4兆6,657億円増加し、35兆3,315億円となった。これは「金融危機以前の残高を超え、過去最高額となった」(NRI)。追加型株式投信に占める毎月分配型の残高割合は66.6%に増加。資金増減は1年間で7兆3,897億円となり、追加型株式投信全体の金額を上回っているが、これは、毎月分配型以外の追加型株式投信の資金増減がマイナスになったことを意味している。また、分配金利回りは1年間で2.7%上昇し、11.6%になった。

毎月分配型の中でも、グローバル債券やインデックス型を除く海外債券型は分配金利回りが10%を超えており、これらに資金が大きく流入した。海外不動産投資信託(REIT)などに投資する投信も分配金利回りは10%を超え、大きく残高を増やした。

NRIの金融ITイノベーション研究部 上級研究員の金子久氏は、高利回りの毎月分配型の投信が人気な理由について、「投信マーケットは、金額ベースで約7割が退職者が購入しているといわれているが、その退職者が年金額の不足分を穴埋めするために、高利回りで毎月分配型の投信を多く購入したためではないか」と分析している。

ただ、こうした傾向が今後続くかについては、「高い分配金利回りについては、今後維持するのが難しくなりつつある。過去の蓄積を切り崩しているファンドも多いので、昨年と同様の利回りで分配できるところが少なくなる可能性はある」と話している。