映像編集者が番組制作の観点から「After Effects CS5」を解説をする第二弾。本レポートでは、前回に引き続き、さらに「AfterEffects CS5」のカラーコレクション「Color Finesse」について紹介していこう。

カメラ間の色調補正を制度よく行える「Curve」インタフェース

Color Finesseに搭載されているものでユニークなのが、「Curves」の中にある「HSL」というカーブ調整画面であろう。画面8をご覧いただくとわかるが、H(色相)、S(彩度)、L(輝度)の各成分にカーブを適用するものである。奇をてらった色にする以外、どのような使い道があるのだろうか? と疑問をもたれる方がいるかもしれないが、カメラ間の色合わせに重宝するのである。

画面8、9

画面8:「Curves」の中の「Hue」設定画面。特定の色相を選んで、彩度を強めたり明るさを上げたりできる
画面9:「Curves」→「Hue」の「Saturation」を使い、家庭用カメラの赤味を取る設定をしているところ

低予算の番組制作では、後編集が前提のパラ撮りでマルチカメラ収録を行うことがある。さきにも説明したように、カメラの機種が統一されていないと、番組全体で色調の統一を図れない。そこでHSLカーブの登場である。一部に家庭用カメラが使われている場合なら、画面9のように赤-黄色系統部分だけ、カーブを凹ませればよい。これは地味な使い方だが、プロの仕事にとってカラーコレクションは大切な作業となる。裏を返せば、この機能があるがゆえに、価格の安い家庭用のカメラを、安心して混ぜて使えるようになるのである。

モノトーン画面に特定の色のみを残す「色残し」の手法

画面10

「Curves」→「Hue」の「Saturation」を使った色残しの設定。黄色のみを残し、他の色の彩度をゼロにするカーブを設定することで、黄色い花と緑の草で構成される画面から、花のみのカラーを残すことができる

一方、Curveインタフェースでもう少し派手な使い方をしたければ、ターゲットカラーのみを残して、周囲をモノトーンにしてしまう色抜き効果はいかがだろう。ビールのCMでは、白黒の映像の中でビール缶だけが黄金色に輝いているものを見たことがある。映画『シンドラーのリスト』(1993)では、モノクロフィルムの映像中を歩き回る少女の服だけが、赤く着色されている。

こうした映像は、一般的にはクロマキーを利用して作っていた。バックグラウンドにモノトーンにした映像を流し、フォアグラウンドには同じ映像のカラー版を、素材のTCが寸分たがわないように合わせて流し、クロマキー合成していたのである。その際、キーの反転を行うのがミソで、こうすることでターゲットカラーだけが残り、他の部分が透明化して、バックグラウンドのモノトーン映像と合成されるのである。After Effectsを使う場合は、エフェクトの「色調補正」から「色抜き」をかけるという方法もある。

しかしながらこれらの手法は設定が面倒でもあるし、編集ソフトによってはキーの反転機能が無いものもある。その点Color Finesseなら、画面10のようにターゲットカラーの部分だけを残し、後の部分の彩度が0になるようなカーブを設定するだけで、簡単にこの効果を得ることができるのである。

色残しの元映像例

色残し設定後の映像例