先日、アドビ システムズより「Adobe CS5.5」が発表された。そのなかでは「Adobe After Effects CS5.5」も発表されたわけだが、本レポートでは、改めて「After Effects CS5」について、番組制作の観点からレポートしてみたい。

動画編集ソフト「AfterEffects」というと、イベント映像やオープニング用タイトルなど、やたらコテコテの装飾を施した映像を作るソフトのイメージがあるが、番組制作用ツールとしても、さまざまな有用性が見出せる。CS4からバージョンアップした諸機能は、「マーキュリープレイバックエンジンの実装」や、「64ビットOSへの対応」、「AVC-INTRAへの対応」、「ロトブラシの採用」、「自動キーフレーム機能」、「Color Finesseの進化」など。このうち筆者が興味を引かれたのが、Color Finesseの64ビット化である。

一見地味だが実は豊富なインタフェース

Color Finesseは一言でいえばカラーコレクションである。調整画面を起動すると、波形モニター画面(画面1)と調整画面(画面2)が現れる。表向きはGBR別のカラーカーブや波形モニター表示など、AfterEffectsどころか、「PremierePro」にでも搭載されているような、平凡なインタフェースとなっている。ところがよく見てゆくと、じつにさまざまな波形表示と、色調整のためのインタフェースが備わっていることがわかる。画面2の左端をよく見て欲しい。ここには調整項目として「RGB」の他に「HSL」、「CMY」などが並んでいるのだが、筆者が注目したのは「YCbCr」と「Curves」の中にある「HSL」である。

画面1

Color Finesseの波形モニター表示部。ビデオ用でよく使うNTSC波形モニターやベクトルスコープの他に、ヒストグラム表示やパレード表示もあり、それぞれを大きく表示できる

画面2

Color Finesseの調整部。各成分のオフセット、ゲイン、ガンマなどを調整するオーソドックスなスライドレバーのほかに、カラーホイールやカーブなどのインタフェースを備える

記録映像の色成分を直接補正できる「YCbCr」インタフェース

一般的に映像のカラーコレクションでは、RGB成分を変更するインタフェースが使われることが多い。なぜならカメラが撮影する信号がR(赤)、G(緑)、B(青)のコンポーネント信号であり、モニターを構成する画素もR、G、Bの色でできているからだ。しかしテープへの記録やVTR間の伝送には、帯域圧縮に有利なY、Cb、Crの色差コンポーネント信号が使われている。そのためビデオ機器のYCbCr信号を扱う回路が老朽化して各成分のバランスが失われると、自然界ではあり得ないような変な色で記録されてしまう。こうした事故映像を修復する場合、図3のようなRGB別のカーブや、図4のようなHUEオフセット調節のように、従来から多用されてきたインタフェースでは、どこをどういじっても、復元は不可能である。こうしたときに便利なのがY、Cb、Cr別に増幅操作が行える「YCbCr」インタフェース(画面5)なのである。

画面3

色補正の基本となるRGB別のカラーカーブ。多くの編集ソフトに搭載されている

画面4

ホワイトバランスの簡易的な補正に使われることが多いカラーホイール

画面5

他のソフトにはあまり搭載されていないYCbCr成分別のインタフェース。調子の悪いカメラで奇労してしまった映像の色修復などに有効