【インタビュー】
バブル経済崩壊後に深刻化した多重債務問題について、経済ジャーナリストの浜田節子氏に3回にわたってインタビューした第3回目。前々回、前回では、バブル経済崩壊後に深刻化した多重債務問題、また、多重債務問題解決のため昨年施行された改正貸金業法について、浜田氏の考えを伺った。インタビューの最終回となる今回は、貸金業の苦境の問題と、反省の上に立っての金融機関のあるべき姿などについてお話をお伺いする。
――改正貸金業法が完全施行されて多重債務問題の解決が図られる一方、過払い金返還などの影響で、武富士が破綻するなど、消費者金融各社が苦境に陥っています。この点について、どうお考えでしょうか?
確かに武富士さんのような大手の業者が破綻したことは、とても衝撃的ではありました。過払い金の返還請求の対応に苦慮していて、経営に大きな影響があると認識しています。
しかしながら、この問題に関しては、私はぜひ基本に戻って考えたいと思います。貸金業者は、これまで本当に、資金需要者のために金融機関として融資を行ってきたのでしょうか?
金融機関は本来、金融商品を売っているという自負を持つべきだと、私は考えます。
なぜ日本の経済は今まで発展してきたのでしょうか? それは、モノを作って売ってきたからではないでしょうか? 職人さんですとか、メーカーさんですとか、自分の作った物、つまり商品に誇りを持っています。消費者の方に喜んでもらおうと思って、一生懸命作っているわけですよね。また、お客さんが使い方が分からないと言ったら、丁寧にそれを説明して、アフターサービスをやってきたわけです。
でも一方、貸金業者さんはどうなんでしょうか? 本当の意味で社会貢献を行ってきたのでしょうか? 必要のないお金まで貸し付けて厳しい取立てをした上で利益を上げて、その利益を社会貢献に使ったのでしょうか?
――確かに、社会的貢献という意味では、不充分な点があったのでしょうね。
今、生き残っている貸金業者さんは、反省するところは反省して、同じ過ちは繰り返さないって思ってらっしゃるんですよね。「消費者の目線に立って」ということをスローガンに、再出発している業者さんを私は知っています。
例えば、プロミスさんは、地域に根差した新たなコミュニケーション拠点として、お客様サービスプラザというところを設けています。そこを拠点として、お金を融資するだけでなく、融資できなかった方に対しても、どういう風にしたら家計の問題は解決できるのかというのを、しっかりと寄り添って相談されてたりします。
また、ゴミ拾い活動を朝行ったり、お客様サービスプラザ内のスペースを、地域のコミュニティ活動に使ってくださいというふうにやってらっしゃったりするんですね。こうした形で、貸金業者さんが、本来自分の立ち位置がどうあるべきかを考え、イメージアップを図ってらっしゃる動きがありますので、私はすごく期待しています。
――なるほど、CSR(企業の社会的貢献)活動を強化される動きもあるわけですね。実は以前、亀井静香前金融担当大臣にインタビューした際、多重債務者問題の背景として、貸金業者だけでなく、メガバンクなどの金融機関について、「零細・緊急な融資を受けたいという需要に対して、きちっと対応できるシステムになっていない」と指摘していました。この点については、どうお考えでしょうか?
全くその通りだと思います。本来であれば、銀行や信用金庫、信用組合などの金融機関が、日本経済の発展のための中小企業を育てたり、個人を育てるために積極的な融資を行っていくべきだったと思います。
しかしながら、現実には、当時の貸金業者とメガバンクの利害が一致し、どちらかというと消費者のためというより自分達の利益に走った、ということを、亀井前大臣がおっしゃんたんだろうと考えています。
つまり、メガバンクは預金として資金を金利でいうと0.01%とか0.02%程度で調達できますから、これを貸金業者に3%から5%で貸し付けて、その資金を貸金業者は、消費者になんと最高29.2%で貸付をしていたのですから、儲からないはずはありません。
本来なら、メガバンクなどが0.02%程度で調達した資金を中小企業や個人に貸付をして信用創造を行い、日本経済を牽引していくという役目を担う必要があるにもかかわらず、個人融資の審査を貸金業者に丸投げして何ら小口融資に対する与信審査手法や経営指導を放棄していたことは、大変大きな問題であると思います。
――金融機関の果たすべき役割に関連するのですが、「中小企業金融円滑化法(モラトリアム法)」の延長法案が国会に提出され可決されました。この法律の効果と、今回延長されたことに関する評価についていかがお考えでしょうか?
確かにいま、景気が悪くて借入金を返済できない中小企業や個人が繰り延べできるという意味では良い制度であると思います。ただ、モラトリアム法っていうのは、結局対症療法なんですね。根本的な解決ではないわけです。
やはり、金融機関がまず率先して、国民のためにどのような金融融資を行っていくのか、日本経済発展のために行動していくべきだと思うんですね。
また政府には、まともな金融機関が正当な融資活動ができるよう、環境の整備をぜひ行ってほしいですね。
――地方にも、そうした「行動」を起こす金融機関が出てきているようですね。
長崎県の長崎県民信用組合では、「収入があり返済出来る方」という条件はありますが、年利12.0%で、50万円を用途は問わず資金需要者に貸し付けしています。だいたい50万円ぐらいあれば、生活に困った人も、お部屋を借りて2カ月ぐらいは生活できますよね。
――なるほど。こういう試みが増えれば、多重債務問題や、ヤミ金での借入れで困る人も減りそうですね。
昨年10月27日の衆議院内閣委員会での和田内閣府大臣政務官の答弁で、自殺の実態についてコメントされていました。2010年の数字で3万2,000人もの方が超自ら命を絶たれ、その中で多重債務による負債をかかえて亡くなられた方1,630人、その他連帯保証債務など負債全般にわたり苦しんで命を絶たれた方を数えると合計3,000人を超えています。つまり自殺者の方々の1割はこういった理由に基づく深刻な状況にあります。
お金のことで、人が死ぬべきではないと思っています。今後は、クレジットカードの現金化の問題なども含め、経済アナウンサーとして、多重債務問題の深刻さや相談することの大切さを、伝えていけたらと思っています。5月以降には、こうしたことをテーマにしたシンポジウムを企画しています。
――浜田さんの今後の活動に期待しています。本日は長時間にわたるインタビューに応じていただき、ありがとうございました。
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