iPad 2は「買い」か「待ち」か - iPad 2ファーストインプレッション(前編)

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米国発売日 (3月11日)に「iPad 2」を入手し、それから2週間以上にわたって集中的に使い続けてきた。iPad 2は、完成度の高いタブレットだ。ただし使う人によって、評価がまったく異なるものになりそうだ。この点で誤解が生じないように、今回はいきなり結論から、「iPad 2は買いか?」に対するわたくしなりのコメントから始める。

iPad 2の購入を検討している人たちには、2つの大きなグループがあると思う。まずタブレット元年と呼ばれる今年、そろそろタブレットを……と考えている人たち。タブレット市場ですでに大きなシェアを占めるiPadか、それとも成長著しいAndroidかが悩みどころだが、判断の目安として、スティーブ・ジョブズ氏がアピールする「ポストPCデバイス」を受け入れられるかを考えてみることをお勧めする。iPad 2は良くも悪くも、初代iPad同様にポストPCデバイスなのだ。

iPadでは、誰でも簡単に安心してエンターテインメントやネットを楽しめる。直観的に操作できるタッチUI、インスタントオン、長いバッテリ駆動時間、表現力ゆたかなディスプレイ、アプリストアとの連係など様々な要素があるが、それらがバランスよく最上の利用体験に結実しているところがiPadの特長である。だから"ポストPCデバイス"だ。しかし、その素晴らしい利用体験と引き替えに、ユーザーはAppleが築いたクローズドな箱庭にしばられる。Flash非対応は最たる例で、HTML5という未来とより長いバッテリー駆動時間のために、現役バリバリの技術であってもAppleはFlashをすっぱりと切り捨てた。

そんなiOSデバイスでAppleが目指す世界を受け入れられるならば、iPadは利用体験に優れた魅力的なタブレットである。だがAppleが思い描く未来に同意できない人、例えばPCのように色々とカスタマイズできるタブレットを求めている人にとってiPadは制約の多いタブレットだ。この点はiPad 2になっても、まったく変わっていない。

もう1つのグループは逆に、昨年iPadを購入し、iPad 2への買い替えを検討している熱心なAppleユーザーである。初代iPadと使い比べると、iPad 2は明らかに速い。ただ、それは2つのモデルを直接比べた場合であって、カメラが必要なければ、iPadでもまだまだ十分に満足できる。「買い替えるべきか?」と問われると答えに窮するのが正直なところだ。

iPad 2は「iPhone 3GS」のような存在だと思う。より高速なプロセッサを備え、ビデオ撮影機能やデジタルコンパスなどを新搭載したiPhone 3GSは、背面がカーブしたデザインのiPhoneの完成形と言えるような製品だった。初めてのiPhoneとしては申し分ない完成度。しかしiPhone 3Gユーザーが買い替える必要があるかは微妙だった。

もし毎年iPhoneやiPod touchの新製品を入手している熱心なAppleユーザーなら、iPad 2の性能や完成度には買い替えの価値があると思う。だが、iPhoneのモデルチェンジをふり返ってみて、iPhone 3GSは見送るのが正解だったと考える人は、iPad 2の強化点が自分の要求を満たすか慎重に検討するべきだ。iPad 2は、iPhoneにおける「iPhone 4」のような変化ではない。

フレッシュなAndroidタブレットが続々登場する中で、オリジナルiPadの完成形のようなiPad 2に対して物足りなさを感じる人も多いと思う。しかし使い勝手が着実に向上したiPad 2には安心して手にできる安定感があり、一般のコンシューマの"買い時"にフィットする。Piper Jaffrayが米国発売日にApple Store前で調査したところ、初めてiPadを購入する人たちが70%だったという。

iPhone 3GSは新製品として地味だったが、iPhoneを一般の携帯ユーザーに浸透させ、対応アプリの拡大を促すモデルになった。現在のiPadのシェアは昨年ライバル不在の中で獲得したものだ。その数字をホンモノに変えるのがiPad 2の役割だと考えると、そつのない機能強化はあるべき進化に思える。