今年1月に開催された2011 International CESでカシオ計算機は、規格策定中のBluetooth 4.0における「Bluetooth Low Energy Wireless Technology」(以下、Bluetooth Low Energy)」を使った腕時計とスマートフォンの参考出品を行っていた。Bluetooth Low Energyとは何か、それで実現できる製品とはどんなものなのか。カシオ計算機の羽村技術センター時計事業部モジュール開発部担当部長の中島悦郎氏と同モジュール企画室リーダー奥山正良氏に話を聞いた。

低消費電力のBluetooth Low Energyで、腕時計に通信機能を

2011 International CESにも参考出品された「Bluetooth Low Energy」対応ウオッチ。左は、NECカシオモバイルコミュニケーションズのAndroid搭載スマートフォン。どちらもプロトタイプでデザインをしていないモックアップ

Bluetooth Low Energyは、もともとNokiaが提唱していた近距離無線通信規格である「Wibree」がベースとなっており、それが2007年にBluetoothの規格化を行っているBluetooth SIG(Bluetooth Special Interest Group)に統合され、Bluetooth 4.0としての規格化が行われている。

中島氏によれば、「それ以前からBluetoothを使った時計は検討していたが、商品化まではいたらなかった」ということで、今回Bluetooth Low Energy技術が登場したことで、改めて商品化に向けた開発が行われたことになる。

Bluetooth Low Energyは、Bluetooth 4.0の一部として規格化されているもので、Bluetooth SIGのワーキンググループであるPUID(Personal User Interface Devices)グループが仕様を策定している。PUIDグループは時計メーカーが中心となっており、Bluetooth Low Energy自体は腕時計に組み込むことを想定しているが、それに加えてこれまでBluetoothが搭載されてこなかったような機器への採用も狙っているそうだ。現在、技術のコアの部分は決まっており、プロファイルの策定が行われているという。

羽村技術センター時計事業部 モジュール開発部モジュール企画室リーダー 奥山正良氏

Bluetooth Low Energyの最大の特徴は、その名前が示すとおり、通常の腕時計で2年間の電池寿命が可能という低消費電力だ(通信機能を1日に12時間使用した場合の試作機による想定値)。同社が現在行ったテストでは、最新のBluetoothチップと比べてBluetooth Low Energy搭載チップの消費電力は「1/5~1/10になった」(奥山氏)という。

この低消費電力を実現できたのは、「通信プロトコルが非常に効率的で、アクティブタイムが短い」(中島氏)ため。効率的なデータ転送に加え、不要な場合の通信をオフにすることで通信を行う時間を短くし、全体の消費電力を削減したという。

また、簡易なプロトコルのためにチップサイズを削減できたことで、消費電力も削ることができたという。そのため、1次電池の使用が可能となり、時計も小型にできるそうだ。

カシオが以前、Bluetooth搭載時計を開発しようとしたときは、「時計のサイズと電池寿命」(同)の2点から時計としてのデザイン性や利便性を損なうと判断し、商品化には至らなかったということで、このBluetooth Low Energyでその問題が解決できたことになり、現在は開発が本格化しているところだ。……Bluetooth Low Energyでつながる新たな世界とは?