IBMのコンピュータ・システム「ワトソン」は2月14日から2月16日の3日間(米国時間)にかけて、米国の人気クイズ番組『Jeopardy(ジョパディ)!』で歴代出場者のうち好成績で名高いケン・ジェニングス氏およびブラッド・ラター氏とクイズで対決する。対戦を控え、ワトソンのスペックをおさらいしておこう。
ワトソンは人間の自然言語を分析し、複雑な質問に対する解答を高速に求めることに特 化した分析コンピューティング・システムで、同社創立者トーマス J・ワトソン氏にちなんだ名称となっている。Linux搭載のIBM Power 750サーバを搭載するラック10本、15TBのRAM、2,880個のプロセッサ・コアから構成され、80テラ・フロップスでの処理が可能だ。
IBMの創立者トーマス J・ワトソン氏 |
POWER7は膨大な量の情報を処理し、瞬時に何千もの分析タスクを実行するよう設計されており、ワークロードの最適化を実現する。
これにより、ワトソンはメモリに蓄積された書籍、映画の台本、百科事典など、自然言語で書かれた約2億ページ分のコンテンツ(100万冊の書籍に相当)をもとに、『ジョパディ!』では人間と同様に今まで読んだり学んだりしたことを掘り下げて、問題に含まれる特定の言葉を記憶されている知識と結び付けて3秒以内で解答を決定する。
同社はクイズに必要な能力や要素について、人間とワトソンを比較しているので以下に紹介しよう。
人間とワトソンを比較
人間 | ワトソン | |
---|---|---|
質問を理解すること | 一見簡単そう | 大変困難 |
言語を理解すること | 一見簡単そう | 大変困難 |
自己認識(確信度) | 一見簡単そう | 大変困難 |
自己認識(確信度) | 一見簡単そう | 大変困難 |
処理速度 | 高速かつ正確な言語処理が可能 | 大変困難 |
反応速度 | ブザーを押すタイミングを決める | 早押しする |
演算能力 | 靴箱ほどの大きさに収まる脳みそ1個が必要で、ツナサンドで動作する。冷却はうちわで手動で行う | 大変困難。2,880 個のコンピューター・コア(設置スペースは冷蔵庫10台分ほど)が必要で、電力は約80キロワット、20トンの冷却能力が必要 |
賭け金の設定 | 時間がかかるうえ、最適な値でないことがある | 迅速で、正確に最適な値を計算する |
感情 | 感情があり、処理が遅くなったり混乱したりする | 感情はなく、緊張したり、疲れたり、うろたえたり、動揺したりすることはない |
今回の対戦では、優勝者に100万ドル、2位に30万ドル、3位に20万ドルの賞金が贈られる。ジェニングス氏とラター氏は賞金の半額を、IBMは賞金の全額を、それぞれ慈善事業に寄付する予定だ。
対戦相手のジェニングス氏は2004年~2005年にかけて74回という最多連勝記録を達成し250万ドル以上の賞金を獲得する一方、ラター氏は同番組の出場者が単独で獲得した累積賞金として最高の325万5,102ドルを獲得しており、いずれも強者だ。
ワトソンと人間、どちらに勝利の女神は微笑むのだろうか?