日本アイ・ビー・エム 代表取締役社長 橋本孝之氏

日本アイ・ビー・エム(以下、日本IBM)は2月8日、毎年恒例の社長プレスセミナーを開催した。同セミナーでは、代表取締役社長の橋本孝之氏が、2010年の成果と2011年の事業方針について説明を行った。

同社の2010年の方針は、「真のTrusted Partnerになる年に」というスローガンの下、「新規ビジネス拡大とパートナーシップ強化」「お客様への価値創造をリード」「自由闊達な企業文化の醸成」「良き企業市民としての社会的責任」という4つの柱から成る。

「顧客への価値創造をリード」という柱の成果としては、Smarter Planetへの取り組み、クラウドコンピューティングの本格的な推進、BAO(Business Analytics and Optimization)の導入の広がり、ハードウェア製品の投入などが挙げられた。

同氏は、Smarter Planetについて、「現在、都市のスマート化を図る"Smarter Cities"と企業のスマート化を図る"Smarter Enterprise"の2つに分けて取り組んでいる。前者の取り組みとして、北九州の実証実験に参加している。ここでは、多くの企業と協力して、将来に向けたアセットの構築を行っている。後者の取り組みでは、企業のグローバリゼーションを支援する7つのソリューションを提供している。昨年10月から本格的な活動を開始したが、すでに多くの顧客から問い合わせを受けている」と説明した。

クラウド事業は、デスクトップクラウドとテスト開発クラウドの引き合いが多く、売上は四半期ごとに倍増している。BAOの取り組みの例としては、シャープの工場「グリーンフロント 堺」におけるグローバル生産計画・製造実行システム「GIView」の導入が紹介された。GIViewは数十万もの業務データをリアルタイムに連動させ、可視化している。加えて第一生命では、ビジネスプロセスをセマンティック分析することで、バックオフィスの業務の効率化を図っているという。

企業買収については、「ソフトウェアベンダーの買収は、BAOと"スマーターコマース"の2つの分野を重点的に行っている。スマーターコマースとは、Web系ビジネスの自動化を狙う取り組みで、ユニカやスターリング・コマースがそのために買収した企業」と、同氏は説明した。

社内における取り組みとしては、新たな価値創造を目的に、役員クラスを含む部長以上の職位のスタッフを中途で50名以上採用したことがある。「役員・部長クラスをここまで大規模に中途で採用したのは、日本IBMとしては初めてのこと」と同氏。また、80名以上の社員を海外に半年間派遣するプログラムを実施したという。

こうした取り組みを踏まえ、2011年の事業方針は大枠は2010年のやり方を踏襲し、スローガンのみ「真のTrusted Partnerを進化・深化させる年に」に変更され、4つの柱は継続される。

「顧客への価値創造をリード」における2011年の方針は、「Smarter Planetのさらなる推進」「顧客の業務とIT基盤をスマート化する製品事業の強化」「クラウドとBAO分野のソリューションの拡充」となる。同氏は、「今年はメインフレームを活用したインフラ統合の提案を強化していく。グローバルでは、メインフレームの売上が対前年比69%の伸びとなっており、非常に好調なので、これに続きたい」と述べた。メインフレームについては、これまでのようにリプレース販売だけでなく、新たな販売方法を考えていくという。

社内における取り組みのうち、海外派遣プログラムは2010年に続いて2011年も行うが、3分の1は中国・インド・南米といった新興国に派遣するほか、新興国のIBMの社員の短期受け入れを行う。加えて、サービス部門のスキルと生産性を強化するため、アプリケーション開発の標準化と工場化を進め、開発環境のクラウドへの移行を推進する。

IBMは今年で創立100周年となるが、お礼の意味を込めて、グローバルで40万人の社員が1人8時間ずつ社会貢献を行うという。同氏は「日本の社員は社会貢献に慣れていないので、会社側でいくつかプログラムを用意する予定」と説明した。