今年も石川県金沢市を舞台とするメディアアートとクリエイターの祭典「eAT '11 KANAZAWA(イート・イレブン・カナザワ、以下eAT'11)」が2月4、5日に開催された。

eATとはelectronic Art Talentの頭文字から付けられた名称で、1997年の第1回開催から「金沢から、夢のリンクを世界へ」をコンセプトキーワードに、新たな芸術・文化・産業と人材の育成、創造を目指してさまざまな活動が年間を通じて行われている。そして、その集大成といえるプログラムが年に一度、毎年この時期に開催され、今回で15回目を数える。

eAT '11の総合プロデューサーを務めたのは作曲家の川井憲次氏。日本の映画音楽を代表する人物の1人であり、「GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊」「イノセント」「リング」「DEATH NOTE」「GANTZ」など代表作を挙げだせばきりがない。今回、その川井氏が掲げた開催のテーマは「メイド・イン・ジャパン - 金沢から発信するNIPPON」だ。

ものづくりにおいて、かつては世界最強といわれたブランドが「メイド・イン・ジャパン」だった。しかし、世界がいっそうの多様化、グローバル化を極めるにつれ、追い求められる価値が経済効率へシフトしていく。一方でそれがすべてといわんばかりの新興国の台頭もあり、いつしかこの日本では出口の見えない閉塞感だけが漂うようになってしまった。

この空気感は、ややもすればこれまで日本人が大切に育み培ってきた感性や文化までをも覆い尽くそうとしている。本当にそれでいいのか? 混迷を極める経済だからこそ、「メイド・イン・ジャパン」の在り方を今こそ再発見し、育み、発信する必要があるのではないだろうか。そんなメッセージが込められているのだ。

川井氏はeAT '11のテーマについて「もしかすると、日本人である我々だけが気がついていない何かがあるのかもしれません」と開催に先立つ挨拶に言葉を添えた。その気づきへの大いなるヒントを与えるのが、eATならではといえる豪華実行委員の面々とゲストの顔ぶれであり、そのメンバーとともに次世代を担う若者がまさに膝を付き合わせて語り合い、刺激と熱を感じていく。

そして2日間のプログラムを終えた今、我々がeAT'11から受けた「刺激と熱」は、言葉をはるかに超える一級の価値ある内容だったと感じている。本稿でそれを少しでも皆さんに感じてもらえれば幸いだ。まずは2月4日のアワード&フォーラムの模様をお届けしよう。