日本マイクロソフトより無償で提供されている統合開発環境ツール「WebMatrix」。「Microsoft WebMatrix」サイトから正式版のダウンロードが可能なWebMatrixは、ASP.NET環境での動的Webサイト構築に大きく貢献する統合ツールだ。「これから動的Webサイトのデザインに取り組んでみたい」というWebデザイナーにとっては、大きな武器となり得るWebMatrixの機能を前回にひき続き紹介していきたい。

なお、「WebMatrix」に関するこれまでの情報は以下の記事を参照してほしい。

●無償で始める動的Web構築 -MSの統合Web開発環境ツール「WebMatrix」
●MSの統合Web開発環境ツール「WebMatrix」を無償入手する
●「WebMatrix」の機能を紹介

豊富な機能をひとつのコンソールで操作

WebMatrixには、多彩なヘルパーライブラリが用意されているのも魅力のひとつ。「@Bing.SearchBox」と入力するとBingの検索ボックスが表示されたり、「@Twitter.Search("<検索したい文字列>")」でTwitterのアカウントに紐付いたウィジェットを埋め込むことが可能だ。また、従来はSilverlightやFlashを埋め込む際にスクリプトやタグを入力する必要があったが、これもヘルパーとして用意されているため「@video.Silverlight」といった記述に必要最小限のパラメータを追加するだけで良い。

このようにASP.NET Webページでは、ヘルパーライブラリを使ってさまざまな機能を簡単にWebページへ追加できる。また、ヘルパーライブラリは、既にインターネット上で多数公開されており、それらを簡単にWebサイトに追加することも可能だ。

ヘルパー機能実装例1

ヘルパー機能実装例2

また、WebMatrixでは動的なWebサイトの構築だけでなく、データベース「SQL Server Compact 4.0」がパッケージとして提供される。WebMatrix内から、テーブルの定義変更やデータ追加ができるなど、データベースの簡易的なマネジメント機能も用意されているのが特長だ。簡易版ではあるが、一般的な利用では十分な機能が備わっている。

WebMatrixから、テーブル定義変更やデータ追加が可能

また、SEOレポートが閲覧できるのも特長のひとつといえる。しかも「レポート」メニューから「サイトのレポートの作成」をクリックするだけという手軽さが魅力だ。

WebMatrixのSEO機能で、エラーチェックやデバッグなどが効率的に行える

この機能により、サーチエンジンに対する最適化が行われているかをチェックし、チューニングの必要がある部分を見つけ出してくれる。本格的なインターネット向けのWebサイト構築を想定して設計されたツールなので、安心して様々なアプリケーションの組み込みにトライできる。

さらにWebMatrixでは、アプリケーションのチューニングを行った後、実際にインターネット上へ配置する際も非常に便利な機能が備わっている。「発行」ボタンをクリックすると、WebMatrix上から直接デプロイできるホスティングプロバイダの一覧が表示されるのである。これにより、ユーザーは契約したホスティングプロバイダを選び、ユーザー名やパスワード、サーバ名などの必要な情報を入力するだけで、簡単にデプロイ作業が完了できるわけだ。なお、ホスティングプロバイダは順次追加され、既に国内でも1件のホスティングプロバイダが対応済みとなっており、今後対応するホスティングプロバイダを順次増やしていく予定だそうだ。

チェックしたWebサイトを表示させたまま「発行」ボタンをクリックし、表示された画面から「Webホスティングの検索」を選択する

ホスティングプロバイダの一覧が表示される。今後も対応ホスティングが追加される予定だ

WebMatrixを使うと、Webサイトの作成からデータベースのマネジメント、SEOレポート作成、デプロイに至るまで一連の作業が流れの中でスムーズ、かつ簡単にひとつのコンソール上で完結できるのが最大のメリットである。

「WebMatrix」でも、できないことはある

WebMatrixは現在、タグ名や属性名のハイライト表示、タグ入力時の補完機能といった基本的なエディタ機能は装備しているが、「Visual Studio」に搭載されている自動補完機能「IntelliSense」や「コードスニペット」と呼ばれる機能、そしてコードのデバッグ機能までは提供していない。

将来的な機能拡張についてはまだ未定だが、今回のバージョンでは基本機能に重点を置いて開発し、Visual Studioとの差別化を図っている。しかし、ユーザーの中にはやはり「IntelliSenseを利用したい」、「デバッグ機能を使いたい」という要望もあるだろう。そこでWebMatrixでは、ツール内にVisual Studioの起動ボタンを設けることで、サイト構成をそのままにVisual Studioが利用可能となっている。Visual Studioとの連携は、WebMatrixでシンプルなWebサイトを構築後にサーバサイドのロジックを記述し、より高度なアプリケーション作りを目指す際にも便利だ。ちなみに、ASP.NET MVC 3ではRazor構文を用いたASP.NET Web ページが利用可能となっている。

次回、日本マイクロソフトへのインタビューから、WebMatrixの全貌に迫る。

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