マイクロソフトより無償で提供されている統合開発環境ツール「WebMatrix」。「Microsoft WebMatrix」サイトから正式版のダウンロードが可能なWebMatrixは、ASP.NET環境での動的Webサイト構築に大きく貢献する統合ツールだ。今回から、このWebMatrixの様々な機能を紹介していきたい。なお、「WebMatrix」に関するこれまでの情報は以下の記事を参照してほしい。

●無償で始める動的Web構築 -MSの統合Web開発環境ツール「WebMatrix」
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WebMatrixでどんなことができるのか?

WebMatrixの大きな特徴としては、ASP.NET Webページ(Razor構文)と呼ばれる新しいHTML生成エンジンを使ってHTMLページを作れることがあげられる。もちろん、一般的なHTML/CSS/JavaScriptファイルを作ることもできるし、新たに加わったRazorの構文で記述することもできる。

ASP.NET Web ページの拡張子は「.cshtml」もしくは「.vbhtml」の2種類。C#やVisual Basicの記述を使ってページ内に簡単なコードを書いていくことが可能だ(C#とVisual Basicのどちらを使うかで拡張子が変わってくる)。

それ以外にもPHPのファイルや、ASP.NETが出る前のActive Server Pagesと呼ばれる拡張子が「.asp」のファイルも新規に作成できる。加えて、WebMatrixで作られるページは、現段階で最新のWeb標準であるHTML5やCSS3を意識した形式にもなっている。

たとえば、既定で用意されているテンプレートではDOCTYPE宣言がHTML5に準じていたり、CSS3の角を丸くしたボーダーラインやドロップシャドウなどにも対応していたりと、Internet Explorer 9(IE9)などで対応が進んでいるHTML5/CSS3の最新仕様も取り入れられている。

タグ入力時の補完機能はもちろん、ASP.NET Web ページの大きな特徴として、データ埋め込みの容易さがあげられる。たとえば、ASP.NET Web フォームでデータやスクリプトを埋め込む場合は<% ... %>、PHPではといった形式で記述するが、ASP.NET Web ページの新構文Razorなら「@name」のように「@」で記述を始めるだけで、終了タグを入力せずに済むのである。サーバ側で自動的にHTMLへ変換してくれるため、キー入力の手間を最小限に抑えたパラメータ入力が行えるほか、タグの閉じ忘れといったトラブルも防ぐことが可能だ。

豊富なテンプレートや、拡張子が扱えるのも魅力だ

多彩なインターネット寄りの機能も装備

WebMatrixでは、Webサイトをスムーズに構築するための様々な機能が用意されている。たとえば「要求」では、Webページをブラウザで表示させた際、HTTP通信が正しく行われているかというリクエストのキャプチャも可能。サイト内に必要なファイルが存在しない場合もすぐにチェックできる。

サイト構築中の画面で「サイト」を選択し、「要求」を表示させると、きちんとHTTP通信が行われているか確認できる

また、Webサイトに関する全般的な設定も行える。例えばSSLを使用するか否か、ASP.NET Web kページを使って構築した場合に必要になってくる.NET Frameworkのバージョン設定、PHPのアプリケーション編集とPHPを使うか否かの設定なども行える。シンプルなだけでなく、かゆいところに手が届く機能が満載だ。こうした細かい配慮も、ユーザーにとって嬉しいポイントだろう。キャリアパスの観点では、WebMatrixでシンプルなWebサイトを構築後、Visual Studioを使ってサーバサイドのロジックを記述してより高度なアプリケーションを作りこみたいといったスキルアップにも大いに役立てくれるはずだ。

.NET Frameworkのバージョン選択やSSLのオンオフも設定可能だ

WebMatrixのスキルアップという点で、HTMLコーダーや初心者が、それまでエディタなどで記述していた内容から、ASP.NET MVCなどへの移行を考えた場合、今まではどうしてもハードルが高かった。PHPにおいてはCMSがあったり、スクラッチ開発するにしても比較的入っていきやすかったが、一方でMicrosoft技術を使ったWeb開発はこの部分のハードルが高かったのは否めない。しかし、WebMatrixによって新しく追加されたASP.NET Web ページを通じて、段階的にASP.NET MVC側へとスキルアップしていくことができるようになったことは非常に評価できる。

たとえば、WebMatrixの初期画面で選べる「Webギャラリーからサイトを作成する」から、オープンソースで作られているCMSを開くことも可能だ。用意されたテンプレートからスクラッチで構築したり、GalleryからCMSを選んで作りこんでいくという大きな2種類の方法が選べるのは大きな魅力だ。

さらに、HTMLベースで記述された従来のスタティックなWebサイトをフォルダーから開き、動的なWebサイトへ移行することもできる。既存のHTML資産を無駄にすることなく、アップグレードできる。

次回、さらにWebMatrixの機能を紹介していきたい。

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