2010年11月にアイルランド・ダブリンで開催された「MeeGo Conference 2010」。会期中、最も大きなニュースは、米Advanced Micro Devices(AMD)がMeeGoプロジェクトに参加するという発表だった。MeeGoは非営利団体のLinux Foundationが運営するモバイルLinuxプロジェクトだが、AMDのライバルである米IntelとフィンランドNokiaが2010年2月に立ち上げたプロジェクトだ。

MeeGo Conferenceの初日、MeeGoをホスティングしている非営利団体Linux Foundationのエグゼクティブ・ディレクター Jim Zemlin氏が、MeeGoプロジェクトを進めている2人の開発者と開催したセッションが行われた。ここではAMDのオペレーティングシステム・リサーチセンター担当ディレクター Chris Schlaeger氏がMeeGoプロジェクト参加の背景を語った内容を紹介する。

セミナー会場にて。AMDのChris Schlaeger氏は「オープンソースではライバル同士が協業できる」と語った

「80年代から90年代、CPUベンダは自社のスピードでイノベーションしてクロック周波数を改善すれば売れた」とSchlaeger氏。その時代はソフトウェア側を気にする必要はなかったが、「この10年で状況が大きく変わった」と言う。新しい機能がソフトウェアとハードウェアの両方に影響するようになり、「自分たちの将来をコントロールするには、ソフトウェアエコシステムとの協業は不可欠」と説明する。

では、なぜMeeGoなのか?

まずはオープンソースという側面がある。「ソフトウェア側の必要コストを削減できる」とSchlaeger氏。その中でもMeeGoを選んだ理由について、Schlaeger氏は、MeeGoが立ち上がる前から動きを追っていたと打ち明けながら、「N900(Maemo搭載)を手に入れハックしてみた。正しい方向性にあると感じだ」と述べた。その後のMeeGoプロジェクトの進展を見て、参加を決意したようだ。

今後の活動については、「アップストリーム第一」と述べ、MeeGoの開発をコミュニティのメンバーと共に進めていくにあたって自社のリソースを注ぐ、とした。

後半は、Zemlin氏とMeeGoの開発を率いるImad Sousou氏(Intelオープンソース技術センター・ディレクター)、Valtteri Halla氏(NokiaのMeeGoディレクター)が、MeeGoプロジェクトについて掘り下げて語った。

Imad Sousou氏

Linux FoundationのJim Zemlin氏(右)とValtteri Halla氏(左)

3人とも、MeeGoが発足後2カ月でバージョン1.0を公開し、6カ月サイクルを守って10月にバージョン1.1をリリースしたこと、1.1では「Handset UX」が加わったことなどの経過と成果を評価する。しかし、「最初の1カ月は難しかった。2つのプラットフォームをマージするにあたって、取捨選択しながらアーキテクチャを作っていったが想像以上に難しい作業だった」とSousou氏が振り返るなど、必ずしも簡単に成し遂げた作業ではなかったことも明かした。

特に熱が入っていたのが、アプリケーション開発だ。Sousou氏はユーザーエクスペリエンスとリッチなアプリ開発という点で「QMLが重要になる」と述べ、Halla氏は、Qtベースの「MeeGo SDK」について、「さまざまなデバイスカテゴリ向けのシュミレーターを持ち、さまざまなフォームファクタ向けにアプリを開発できる」と説明した。

次期のバージョン1.2については、さまざまなデバイス向けのサポートをさらに改善するなどの強化を予定しているという。