【インタビュー】
Adobe Systemsは昨年10月25日、同社のエンタープライズアプリケーションプラットフォームの新バージョン「Adobe LiveCycle Enterprise Suite 2.5」(以下、LiveCycle ES2.5)を発表した。同製品について、ロサンゼルスで開催されたユーザイベント「Adobe MAX 2010」の場で、エンタープライズソリューションのコーポレートエバンジェリストを務めるMarc Eaman氏にお話を伺う機会を得たので、これを紹介したい。
現在、Adobeでは各種製品やソリューションのマルチスクリーン対応を進めている。LiveCycle ES2.5でもその例に漏れず、モバイル端末への対応が主要なアップデート項目のひとつとなっている。具体的には、LiveCycleのプロセス管理やデータ取得、コンテンツサービスなどをモバイル端末でも利用可能にする「Adobe LiveCycle Mobile ES2」が新たなソリューションとして加わった。これによって、エンタープライズシステムに対するモバイル端末からのアクセスにおいて優れたユーザエクスペリエンスを実現できるようになるという。
バージョン2.5ではAndroid端末がサポートされているが、今後Windows PhoneやBlackBerry、iPhoneなど、主要な端末へのサポートを追加していくとのこと。特筆すべき点は、LiveCycle ES2.5ではこれらの端末上でネイティブアプリケーションとして動作するクライアントを提供できるということだ。これによって「別プロセスをスタートさせるなど、端末ごとの特徴を活かしたユーザ経験を実現できる」とEaman氏は語っている。
Eaman氏は、エンタープライズシステムにおけるモバイル対応が急務となっている状況について次のように説明している。
「2013年にはより多くの人がインターネットにアクセスするようになるというデータがあります。それに備えなければならないという消費者から強いリクエストがありました。モバイル端末からのアクセスです。若い世代が労働市場に入ってきて、電話を活用したビジネスプロセスを推し進めるようになるでしょう。そうなった場合にでも柔軟に対応できるアーキテクチャが必要です。LiveCycleはこれを実現するものです。5年後にどんな端末が出てくるかすらわかりませんが、それに対応することができます」(Eaman氏)
Adobeによるマルチスクリーン戦略がカバーするのはモバイル端末だけではなく、日常で目にするさまざまなデバイスが対象となっている。そのひとつがテレビだ。たとえば、同社ではテレビ上でAIRアプリケーションを実行可能にする「Adobe AIR for TV」を発表している。これについてEaman氏は、「まったく新しい可能性を開くもの」だと指摘する。
「テレビは消費者に密着したものなので、企業が消費者に近づくためには最適なものです。たとえばオンラインバンキングのシステムがテレビから利用できるようになったらどうでしょう。テレビを見ながら、ちょっとした時間に銀行の振込手続きを行うことができるわけです。PCを立ち上げる必要はありません。我々はモバイルの次のステップとしてテレビがあると考えています」(Eaman氏)
Adobeでは近年、エンタープライズシステムにおけるCEM(Customer Experience Management)の改善に対する取り組みに注力しており、マルチスクリーン対応もその一環であると言える。CEMの課題は顧客へのコンタクトをいかに簡単にしていくかということであり、サポートする人たちにそれを啓蒙することが重要だとEaman氏は説明する。セルフサービスを良くすれば、顧客に対してよりよい経験を提供できるようになる。それを目指すのがCEMであり、LiveCycle ES2.5でも強力にバックアップしているという。
Adobeのエンタープライズ戦略を考える上で、もうひとつ気になることがある。同社は昨年7月にスイスのDay Softwareの買収を発表し(http://journal.mycom.co.jp/news/2010/07/29/028/index.html)、10月29日には法的な手続きが完了している。Day Softwareは「CQ5」のブランドでWebコンテンツやデジタル資産の管理を行うCMSソリューションを提供している企業である。そのDay Softwareの買収は、LiveCycleにどのようなシナジー効果をもたらすのか。Eaman氏は次のように答えてくれた。
「LiveCycleが元々持っているコンセプトは、カスタマが持つ既存の資産を活用するということです。Day Softwareは堅牢なCMSを持ってるので、これを統合することによってWebのコンテンツをLiveCycleのチャネルのひとつとして使えるようになるというメリットがあります。また、Day SoftwareはSpringやOSGiについて高いレベルの技術を持っているので、これをAdobeの他の製品でも活用できるのではないかと考えています」(Eaman氏)
同氏によれば、両者の技術的なインテグレーションはすでに完了しており、またビジョンの部分についても、マルチスクリーン対応や標準技術への準拠など基本的な部分で共通しているので、今後、統合に関する特別な問題は発生しないだろうと述べている。次のバージョンのLiveCycleではDay Softwareとの融合が進められているだろう、とのことだ。こちらも期待したい。
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