時速270kmの車内で快適に繋げられるか

鉄道で移動中にインターネットに繋げるなら、イー・モバイルなどの携帯通信系のインフラを自前で用意しなければならない。しかし都心であっても、ホーム上に人工地盤が作られた駅、立体交差部分や地下区間のトンネルなど電波の届かないところが存在する。地方になるとエリア外になってしまうこともある。しかし現在は、この問題に対応した列車内インターネット接続サービスが広がりつつある。そこで、これから3回に分けて東海道新幹線、つくばエクスプレス、成田エクスプレスの列車内インターネット接続サービスについてのレポートをお届けしよう。今回は、東海道新幹線N700系編だ。

列車内インターネット接続サービスを提供しているN700系新幹線

2007年にデビューしたN700系。最高時速は270km

東海道新幹線(東京 - 新大阪)で提供されている列車内インターネット接続サービスは、N700系新幹線電車のみでサービスされている。利用するには、HOTSPOT、のいずれかのアカウントが必要だ。同サービス、時速270kmで走行する新幹線と地上を結ぶインフラは列車無線を利用している。列車無線は、線路脇に敷設された漏えい同軸ケーブルを通じて通信されており、無線ではあるが有線に近い。新幹線の安全を支える列車無線なのだから、途切れては問題なので、当然ながら長大トンネルなどでも継続して通信ができる。列車と地上間は2Mbpsとのことで、その容量を編成内の全ユーザと共有することになる。

トンネル内でも途切れず

実際に計測してみると、ピークでは50KB/s(400kbps)となり、モバイルとしては十分な速度だ。速度ではHSPA+やDC-HSDPA端末には負けているが、レスポンスがいいため快適。だが、最大のメリットは速度ではなく、まったく途切れないことである。NTTドコモやイー・モバイルでは、トンネルに入るとまったく通信ができなくなる(山陽新幹線の姫路 - 岡山県境のトンネル内は、NTTドコモ、au、ソフトバンクの基地局が整備済み)。東海道新幹線の明かり区間は多いといっても静岡県に長大トンネルが連続するため、この区間携帯電話系のデータ通信は途切れ途切れで非常にストレス。しかし、列車内インターネットにはそれがまったくないのだ。最終的には、新大阪までに226MBものデータがダウンロードできた。

約5分間の通信状況を計測したグラフ。飛び抜けて速くはないが、安定した通信速度でまったく途切れていない ※拡大画像はこちら

東京から新大阪間での瞬間最大値と平均速度のグラフ。500kmほどの距離があるのにも関わらず通信速度は非常に安定していた ※拡大画像はこちら

乗車してからアクセスポイントを探索すると、このように多くの事業者のSSIDが見える

実際の利用について注意点を挙げるとすれば、N700系以外の車両では本サービスが行われていないことだ。のぞみであれば、700系かN700系のほぼ2択であるが、まれに300系が来ることがある。予約するときは十分に留意したい(それ以外にも、ダイヤ乱れなどで運用変更になる場合も)。また、無線LANサービスのアカウントは事前にとっておこう。HOTSPOTの1DAY PASSPORTは携帯電話とクレジットカードがあれば乗車してからでも申し込めるが、他の事業者は店頭や郵便手続きが必要だったり、携帯電話やスマートフォンだけでは申し込みにくいからだ。なお、フレッツスポットはiPhoneやiPad、iPod touchなどのiOS機器に対応していない。ちなみに、iPhoneやiPadはソフトバンクWi-Fiスポットのアカウントで利用可能だ。