【インタビュー】
モビリティ、オンデマンド、インメモリをキーワードに刷新を図っている独SAPだが、新しい戦略はSAPのエコシステムにどのような影響を与えるのか? 特にインストール作業が大きく軽減されるオンデマンドは、同社の既存のエコシステムを変えそうだ。「今後の成長において、パートナーは重要」と言い切るSAPのSingh Mecker氏(グローバルエコシステム&パートナーグループ担当トップ)に、今後どの分野でどのような提携を進めていくのか、SAPが米ラスベガスで10月に開催した「SAP TechEd」で話を聞いた。
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Singh Mecker氏。既存パートナーとの関係については、「SAP Business ByDesignによって、特にパートナーとの関係を制限してしまうのではなく、引き続きSAPのコアビジネスにおいてその関係は維持されるものと考えます」とコメント |
Mecker氏は、SAPのエコシステムを「パートナーとコミュニティが共同作業して、優れたソリューションを顧客に提供する、信頼できるネットワーク」と定義する。そして、「SAPの成長戦略において、エコシステムは不可欠。特定の技術やベンダを押し付けるのではなく、顧客に選択肢を提供することが大切だと思っている」と続ける。エコシステムの構築は選択肢を提供する最善の方法だという。ここはもちろん、ライバルである米Oracleとの差別化としたいところだ。
SAPはこれまで、ソフトウェアソリューション、サービス、「EcoHub」「Partner Edge」などのプログラム、コミュニティなどでエコシステムの取り組みを進めてきた。2010年初めのCEO交代とともに新しい戦略で攻めに出ているSAPだが、エコシステムも新戦略に合わせて拡大する。今後、エコシステムを構築していく分野として、Mecker氏は、オンデマンド、インメモリ技術を利用したBIアプライアンス「High-Performance Analytic Appliance(HANA)」、クラウド、モビリティなどを挙げた。
オンデマンドは、オンプレミスで構築したこれまでのパートナーとの関係に変化をもたらしそうな分野だが、ここではまず、「Business By Design」から説明してくれた。
Business ByDesignでは2つの面でパートナー戦略を進めていくという。1つ目はBusiness ByDesignを販売/提供するパートナーで、2つ目はBusiness ByDesignをプラットフォームとし、自社ソリューションを構築して拡張する企業、となる。2つ目はプラットフォーム戦略にかかわるものとなり、2011年にはパートナーからソリューションが出てくるとMecker氏は見ている。同じく2011年には、ソリューションを提供するアプリストア(のようなもの)もローンチする予定だ。
なお、プラットフォームという点では、すでに米Salesforce.comが「Force.com」ベースのアプリストア「AppExchange」を提供している。Mecker氏は「Force.comと比較するつもりはない」としながら、「Business ByDesignはエンタープライズクラスのアプリケーションのためのプラットフォームだ」と述べ、狙う市場が異なることをアピールした。
また、Business ByDesignのアプリストアとは別に、EcoHubとして、大規模顧客やOEM向けのショーケースとしての役割を持つアプリストアをすでに展開していることにも触れた。EcoHubは2008年にローンチし、現在、SI事業社、ソフトウェアベンダなどが600以上のソリューションがあるという。
オンデマンドでは、Business ByDesign以外でもイニシアティブを持っている。たとえば、パートナーのブランドでSAPのアプリケーションを提供できるようなことも考えている、とのことだ(注: SAPとNECは11月4日、NECがNECのクラウド経由でSAPのERPを提供することを発表している)。
HANAは、SAPが今年5月の「SAPPHIRE」で正式発表したインメモリ技術を利用したBIアプライアンスだ。日本でも12月から提供開始している。「Business Warehouse Accelerator」の次世代技術で、HANAとBWAは両方ともハードウェアが必要だ。だが、HANAはリアルタイムのインメモリBIであるのに対し、BWAは単に高速なデータウェアハウスであり、顧客側からみるとどのように動くのかが異なる。また、パートナーからみても、HANAではより統合したバンドルを提供することになる、とMecker氏は説明する。
HANAはハードウェアベンダと提携して実現するソリューションだ。5月の発表時には、米Hewlett-Packard(HP)、米IBMの名前が挙がったが、Fujitsu Siemensを入れて3社が初期パートナーとなる。プロセッサでは米Intelとチップレベルで作業を進めており、Intelプロセッサベースのサーバ上でHANAが最適化された状態で動くようにする。このプロセッサを搭載したシステムベンダがHANAをプリロードすることになるが、上記の3社のほか、米Cisco Systems(Unified Computing System(UCS))、米Dellなどのベンダが加わるという。
次のステージではシステムインテグレーターと協業し、HANAやインメモリ技術を利用して業界ソリューションを構築してもらう、とMecker氏。さらには、ソフトウェア企業が利用してHANAの上にソリューションを構築するようにしていきたいという。将来的に、HANAをプラットフォームとしていく狙いだ。「潜在規模が大きな市場だと思っている」とMecker氏。すぐにすべを実現するわけではなく、当面のフォーカスはアプライアンスの提供。今後少しずつ進めていくとした。
OEMと協業して事前設定済みのシステムを提供することで、顧客は別途ソフトウェアをインストールする必要がなくなる。「インストレーションの作業を削減できることは、大きなメリットになる」とMecker氏は述べ、今後HANAのようなアプライアンスを強化する方針も明らかにした。
なお、Oracleのスタックアプローチについては、「他社の戦略にはコメントしない」としながらも、「われわれは、崩壊的技術であるインメモリ、リアルタイムの分析にフォーカスしており、単にERPが動くボックスとは異なる」と述べた。
最後に触れたのがクラウドだ。
SAPはクラウドでは現在、米EMC、米VMware(EMC傘下)とCiscoが進めているプライベートクラウド構築パッケージ「Vblock」で協業している。これはクラウドへのマイグレーションを支援するもので、顧客が既存のSAPを仮想化してプライベートクラウドに実装できるリファレンスアーキテクチャを提供する。「ECC 4.6など、すでにSAPに大規模な投資をしている顧客が、既存の投資を無駄にすることなくクラウドや仮想技術がもたらす新しいメリットを享受できるようにする」とMecker氏は説明する。
VMwareらとの提携は5月に発表したが、TechEd期間中にこの提携に関連して「Landscape Management」を発表した。Landscape ManagementはSAPが作成した管理ソフトウェアで、単にハードウェアだけではなく、ビジネスプロセスを仮想化し、どのように運用するのかを決定・管理できる。「たとえば、給与システムを仮想化する場合、特定の国のサーバでは動かせない、などさまざまな法律がある。ビジネスプロセスレベルで、どのように仮想化を利用するかのインテリジェンスを提供する」とMecker氏は説明した。Landscape Managerは2011年に提供開始を予定している。
Mecker氏によると、SAPは今後、特定の地域や市場に特化したエコシステムにも取り組む予定で、日本でもSAPジャパンが積極的に進めていくことになるという。「日本はモバイルが進んでいるので、ローカルなエコシステムから生まれるソリューションに期待している」と述べた。
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