Salesforce.comは12月7日(米国時間)、ユーザー&デベロッパーカンファレンス「Dreamforce 2010」にて、企業向けソーシャルメディア「Salesforce Chatter」の無償版「Chatter Free」と「Chatter.com」を発表した。今回、同社のProduct Marketing担当Senior Vice PresidentのSean Whiteley氏に、「無償版Chatterを発表した狙い」、「Chatterが日本企業に与えるメリット」、「同社が目指すソーシャルメディア像」について聞いた。

Salesforce.com Product Marketing担当Senior Vice President Sean Whiteley氏

無償版でフィードバックを増やしサービスの品質向上を

同氏は、いずれも無償で使える「Chatter Free」と「Chatter.com」の違いについて、「まず、Chatter Freeが顧客向けであるのに対し、Chatter.comは顧客ではない人々を対象としている点で異なる。また、企業利用が前提のChatter Freeは管理権限を備えており、アクセスコントロールやセキュリティの設定が行える」と語った。

例えば、Chatter.comはフリーメールのアドレスから申し込むことはできず、ユーザーの電子メールのドメインが同一であることが設けられている。つまり、FacebookやTwitterのように個人が自由に利用するソーシャルメディアとは一線を画している。

「Chatterはとにかくセキュリティを重視しており、情報が外に漏れないよう配慮されている」と同氏。

Chatter.comはいわゆる「プロシューマー」への提供が想定されているそうだが、その狙いはどのようなものなのだろうか。

同氏は「狙いは2つある」と述べた。「1つはユーザーを増やすことでフィードバックを増やしたいというもの。なぜなら、われわれはユーザーのリクエストをもとにサービスの機能の追加を行っているため、フィードバックが多いほどユーザーのニーズにこたえる形で製品を改善していけるからだ。もう1つはSalesforce.comのユーザーを増やしたいというものだ。無償版Chatterから簡単にSalesforce.comを利用できる仕組みを用意している」

ソーシャルという表現をやめた理由

同社はChatterで企業においてソーシャル、モバイル、リアルタイムを実現するとしている。しかし、そもそもソーシャルメディアはコンシューマー向けメディアという位置付けにあり、それを企業で利用するということはなかなか受け入れてもらえないようなイメージもあるが、実際にはどうだったのだろうか。

同氏は「最初の頃は大変だった」と打ち明ける。「Salesforce Chatterをリリースした当初、説明する際に『ソーシャル・コラボレーション』という表現を使っていた。しかし、顧客と話しているうちに、ソーシャルという言葉は企業から見ると"業務の妨げになるもの"というイメージがあることがわかり、『コラボレーション・ネットワーク』という表現に変えた」

正式リリース前に先行して使ってもらった企業は、同社が使い方などを特に教示しなかったにもかかわらず、ビジネスの課題を解決していったそうだ。「顧客から、"社内の情報伝達のスピードが上がった"、"販売のサイクルが短縮された"、"電子メールを減らすことができた"といった声をもらっている」

日本企業とChatterの相性は?

ソーシャルメディアはオープンなコミュニケーションであり、規律を重んじる日本企業では受け入れられづらいようにも思うが、同氏は「そんなことはない」と否定する。

「グローバルで見ても、日本は技術的に進んでいる。つまり、慎重と言われている日本企業だって、よい技術とわかれば採用するのだ。例えば、当社のForce.comも日本から展開が始まった。もちろん、ビジネスもヒトもオープンな米国のほうがChatterは取り入れやすいだろう。しかし、Chatterはチームでコラボレーションするためのツールであり、チームワークを重視する日本企業に適している。Chatterは日本企業のよいところを引き出すのではないだろうか」

なお、Chatterの長所は地域や階層を越えてコミュニケーションがとれるところにあるため、同氏は「日本でChatterが浸透したら、もしかしてリーダーシップのあり方が変わるかもしれない」という予測を示した。

実用的なソーシャルメディアの追求を目指して

同社はChatterについて説明する際、「Facebookの企業版」という表現をいつも用いる。これを聞く限り、失礼だが「Facebookの真似」という印象を受けないでもない。これまで斬新な戦略で市場を開拓してきた同社なら、ソーシャルメディアに対する独自の理想像を持っているのではないだろうか。

同氏は「われわれはソーシャルメディアの実用的な使い方を追求していくことを考えている」と話す。

例えば、同社のカスタマーサービスを支援するサービス「Service Cloud 2」では、Googleの検索、Twitter、Facebook、チャットといったソーシャルメディアを活用して、ビジネスの課題を解決することを実現している。

さらに、「われわれが新たなプロダクトを開発する際、"ソーシャル"、"モバイル"、"リアルタイム"、"バイラル"という4つのポイントが満たされるかどうかを考えている。これらはCloud 2の戦略でもある」と同氏は説明した。

今のところ、大企業のChatterの導入事例は米国が先行しているが、日本でも導入企業は増えており、成果を上げている企業が出だしている。1年後、ソーシャルメディアによって日本企業がどのように変化しているのか楽しみだ。

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