【レポート】

映画『HAYABUSA』の帰還バージョンがついに完成! - 渋谷で上映が開始

    大塚実  [2010/12/07]

    小惑星探査機「はやぶさ」の打ち上げから帰還までをCGで描いた映画「HAYABUSA -BACK TO THE EARTH-(HBTTE)」の帰還バージョンが完成、11月24日より一般上映が開始された。オリジナルは昨年4月より公開されていたが、今年6月の「はやぶさ」の帰還を受けて、一部を再構成した。

    HAYABUSA -BACK TO THE EARTH- 帰還バージョン

    上映が始まったのは、文化総合センター大和田(東京都渋谷区)の12階にある「コスモプラネタリウム渋谷」。同センターは旧大和田小学校の跡地に建設され、このほどオープン。HBTTE帰還バージョンは、このこけら落としに選ばれたものだ。とりあえず来年3月までの上映が決まっており、要望次第では延長する可能性もあるという。

    屋上の丸いドームがプラネタリウム。直径17mで120人を収容できる

    このドームはJR渋谷駅西口からも見える。目印にいいだろう

    HBTTEは、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が制作に全面協力。「はやぶさ」が辿った旅を、事実に基づき紹介している。描かれているのは、地球スイングバイ、小惑星イトカワへのタッチダウン、その後のトラブル…など。CGならではの驚くような演出も交えながら、初心者にも分かりやすく伝えている。ナレーションは、ウルトラマンタロウの篠田三郎が担当した。

    イオンエンジンで航行中の「はやぶさ」

    地球スイングバイのシーン。赤枠の中を正確に通り抜ける必要がある

    イトカワがなんと真っ二つに! もちろんこれは説明用の演出だ

    大迫力のタッチダウン。ここでサンプルを採取した

    最初のバージョン(2009年バージョン)は、2009年4月から、大阪市立科学館にて上映が開始。人気に火が付いて、上映館はその後、全国に拡大した。DVD版/BD版も今年6月に発売されており、すでに持っている人も多いだろう。

    しかし、この作品を制作した当時、「はやぶさ」はまだ帰還の途上だったために、最後の地球帰還の部分については、当時の予測で描くしかなかった。実際とはそれほど大きな違いはなかったものの、「はやぶさ」が奇跡の帰還を果たした今、制作時以降の事実を反映させた"完全版"を求める声はファンの間で高まっていた。

    今回の新バージョンは、上坂浩光監督がオーストラリアで「はやぶさ」の帰還を取材し、その結果を取り入れて"帰還バージョン"として新たにまとめたものだ。帰還バージョンでは、2009年バージョンの本編部分は概ねそのままに、エンディングの地球帰還部分を全面的に描き直した。このため上映時間は2009年バージョンより2分ほど長い。

    I新カットの1つ。「はやぶさ」の再突入を描いたシーンだ

    こちらはカプセルが着地したシーン。ちゃんと裏返っている

    なお、帰還バージョンには、「ノーマル版」と「ディレクターズカット版」の2種類がある。配給元のリブラによれば、ノーマル版は海外向けという位置付けになっており、国内向けはディレクターズカット版の方となる。渋谷での上映は例外的にノーマル版だったが、今後、国内で配給されるものはすべてディレクターズカット版になる模様だ。さらにショート/ロング版の違いもあり、どちらになるかは上映館の選択となる。

    各バージョンの上映時間は以下のとおり。

    ショート版 ロング版
    ノーマル版(海外向け) 27分37秒 44分22秒
    ディレクターズカット版 28分13秒 44分58秒

    現在、国内での上映は渋谷のみだが、今後、全国のプラネタリウムや科学館などに配給される。すでに、2011年1月2日~3月31日のスケジュールで、鹿児島市立科学館にて上映されることが決まっている。

    最初の週末となった27日には、渋谷での上映後に、上坂監督による舞台挨拶があった。HBTTEを観て泣いてしまった女の子に会ったエピソードを紹介し、「その女の子に言ってあげたい。はやぶさは大丈夫だよと。確かに、はやぶさはオーストラリアの空に散ってしまったけど、命の本質というのは、その想いを繋げていくことだと思う。はやぶさが成し遂げたことはみんなの心に生きている。それこそが、僕がHBTTEで表現したかったテーマ」とコメントした。

    HBTTEの上坂浩光監督。はやぶさの実物大写真パネルがあるロビーにて撮影

    上坂監督の舞台挨拶には、HBTTEを監修したJAXAの吉川真氏も駆け付けた

    「はやぶさ」は帰還後に大ブレーク。カプセルの一般公開には大行列ができ、テレビや雑誌なども連日のように特集を組んだ。今年の流行語大賞にノミネートされたほどだ。しかし、そういった世間一般の盛り上がりとは対称的に、後継機である「はやぶさ2」については、未だに開発のための予算が付いたという話は伝わってこない。帰還直後には、首相や閣僚からも後継機に対して前向きな発言があったのに、これはどういうことか。

    「はやぶさ2」の来年度予算(要求額:30億円)については、「陸域観測技術衛星2号(ALOS-2)」(同61億円)や「水循環変動観測衛星(GCOM-W)」(同115億円)などとともに「元気な日本復活特別枠」に回されており、評価会議の結果、優先度が2番目に高い「B」判定を受けた(最低はD)。最終的には、首相によって配分額が決まることになっているが、満額が認められなかったときに何が削られるのか、不透明さも残る。

    「はやぶさ2」は目標天体との位置関係から2014年に打ち上げる必要があり、そのためには開発を来年度から始めないともう間に合わなくなってしまう。「はやぶさ2」リーダーのJAXA吉川真氏は、「予算は遅くとも12月には決まるはずだが、こちらには何も情報が来ていない。はやぶさ2は今回が本当にラストチャンス。米国は日本の様子を見ている。日本がやらないとなると、すぐに自分たちでやってしまうだろう」と危機感を隠さない。

    小惑星サンプルリターンという科学は、世界で初めて「はやぶさ」が切り開いた分野だ。しかし、それはまだ始まったばかり。「小惑星」と一括りにされてしまうが、セレス(現在の新しい分類では準惑星だが)のように1,000km近い大きなものもあれば、イトカワのように500mしかないものもある。分類上もS型/C型/P型/D型など様々な種類がある。これだけの多様性があり、もうイトカワに行ったんだからいいでしょ、ではないのだ。

    「はやぶさ」は本来「工学実証機」であり、そもそも、本番のサンプルリターン探査機のために必要な技術を実証することが目的だった。「はやぶさ」の想いを次の探査機に繋げることができるか――それがまもなく決まる。

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