日本アイ・ビー・エム 専務執行役員 システム製品事業担当 薮下真平氏

日本アイ・ビー・エムは12月1日、プレスに向けて、ハードウェアビジネスを統括しているシステム製品事業の2010年度の取り組みと2011年度の事業戦略について説明を行った。

専務執行役員 システム製品事業担当の薮下真平氏は初めに、「今年は新製品が相次いで発表されたこともあり、全般的にビジネスが好調だった」と説明した。「1月から9月までの決算は好調に推移しており、サーバは4月-6月期で久しぶりにシェアを奪回し、速報値ではあるが7月-9月期はさらにシェアを拡大したと聞いている。サーバと同様に、ストレージも好調だ」

これからはデータの処理方式の多様化が進んで爆発的にデータが増加するとして、同社は今年「ワークロードの最適化」というコンセプトの下、さまざまなハードウェア製品をリリースした。その例としては、「POWER7」「eX5」「zEnterprise」などがある。同氏はこれらの特徴として「運用管理に要するコストを削減すること」を挙げた。

ワークロードを最適化するIBMの製品群

2010年に発表されたIBMのハードウェア製品群

1個のCPUでスケールアウト型の拡張とスケールアップ型の拡張を実現するPOWER7プロセッサを搭載するPower Systemsは、統合効果によって競合製品に対して省電力、スペース減 ライセンス料削減においてアドバンテージを持つ。

競合製品に対するPOWER7プロセッサのコスト削減効果

またeX5搭載サーバは、プロセッサ数が同じ他社のサーバよりも多くの仮想マシンを搭載できるとともに、同等のパフォーマンスを持つ他社のサーバよりもライセンス料などのコストを削減できる。

メインフレームのzEnterpriseはWebサーバ、アプリケーション・サーバなどデータセンターにあるサーバをすべて統合してあらゆるワークロードを1台で最適化し、異機種混在環境の一元管理化を実現する。

同氏はzEnterpriseにおける課題として、「メインフレームは"大昔の古い技術"と認識している人が少なくない。恥ずかしながら、当社にも"メインフレームの開発は終了している"と思っている社員がいる。これからは、メインフレームの現状をもっと広めていきたい」と語った。zEnterpriseの販売は欧米では好調だが、国内では堅調にとどまっている。「欧米の反響から見れば、国内でももっと注目を集めてもいいはず」と同氏。

2010年度の活動を踏まえ、2011年は「顧客のグローバル競争力強化のためにテクノロジーを最大限に活用いただく」という方針の下、事業が展開される。

同氏は「日本の企業と欧米の企業では新製品の導入スピードが異なる。個人的な感覚ではあるが、日本の企業は新製品がリリースされてから導入するまで2年くらいかかる。対する欧米の企業は新製品がリリースされると即座に導入して、コストメリットを享受している。というのも、大抵の新製品は省電力機能が向上しているなど、コスト効果が高いケースが多いかだら」と話した。

そこで、同社としては日本企業にもっとテクノロジーを活用してもらうことで、グローバルで戦える力をつけてもらいたいというわけだ。ちなみに同社のグローバルの会議でも、「日本の企業はテクノロジーを活用することでもっと生産性を上げられるはず」という意見が出るそうだ。

そのための具体策として、「マーケティング戦略」と「営業開発専門チーム、技術部門」の強化を行うとともに、マイグレーション・ファクトリーによる移行支援を行っていく。

また、今年はハードウェアの基盤としての新製品のリリースを行ったが、来年はこれらをソリューションとして提供していく。ソリューションとしてのインフラの提案の例としては、「ワークロード最適化ワークショップ」が紹介された。これは顧客の環境における課題の整理と最適化の実現方法を提示するもので、すでにすべての産業で事例が出ているという。現在は「クラウド実現に向けたITインフラ最適化ツール」のパイロットが行われており、来年には本格的に展開される予定だ。

同氏は来年度に特に注力したいこととして、「IBMを知らない人の数を減らすこと」を挙げた。先のメインフレームをはじめ、「System zで稼働するLinuxは標準のLinuxではない」、「IBMのストレージはIBMのサーバにしか接続できない」など、顧客の声からさまざまな誤解があることがわかったとして、今後はそのための人材を強化していくという。