MicrosoftがPC向けOSとしてWindows 7の提供を開始してほぼ一年が経過した。同社は、Windows 7を組込機器などでの活用を目指し、組込関連向けOS「Windows Embedded」に関してもWindows 7ベースの製品を提供するべく製品展開を進めている。2011年の前半には、すべてのEmbedded関連製品が7ベースとなる今の同社組み込み関連の状況を、同社日本法人マイクロソフトのOEM統括本部 OEMエンベデッド本部 シニアマーケティングマネージャーの松岡正人氏に話を聞いた。

簡単にWindows Embedded関連の製品スケジュールをおさらいすると、すでに「Windows Embedded Standard 7」の提供が2010年6月より開始され、カーナビゲーションシステム向け「Windows Embedded Automotive 7」およびハンドヘルド機器向け「Windows Embedded Handheld」が2010年第4四半期に、そして2011年上半期にはCEの次世代版となる「Windows Embedded Compact 7」、ならびにPOS端末など向け「Windows Embedded POSReady 7」がそれぞれ予定されている。

Windows Embeddedシリーズの製品ロードマップ

ちなみに、Standard 7を搭載した機器は実はすでに出荷されているという。多くがデジタルサイネージやキオスク向けだが、一般的な組込機器への新OS搭載スケジュールが登場から1年程度と考えると6月発表とほぼ同じ時期の製品出荷がなされたことを考えると「思った以上に7に対する期待値が組込機器で高かった」(松岡氏)という評価になるという。また、そうした分野はCPUとグラフィック表示能力が求められるため、WindowsのようなリッチなOSが求められるのは理解できるが、そうした分野以外でも、現在話が進められている状況であり、近い将来にはそうした機器での搭載も行われる予定とのことだ。

Windows Embeddedの製品ラインナップとそれぞれの対象領域

ET2010では、Compact 7のデモも予定

こうした状況の中、2011年頭に登場予定のCompact 7とAutomotive 7のデモを12月1日から開催されるEmbedded Technology(ET)2010において同社では行う予定だ。同デモは、同社単体ではなく、Freescale Semiconductorとルネサス エレクトロニクスの2社が協力する形で行われるという。

「2009年のETは会場がAndroidにジャックされた感があったので、今年はそれをWindowsでやりたいという思いがある。チップベンダに加えて、ボードベンダやSIベンダなどのブースにもWindowsがお邪魔させてもらうつもりで、会場全体にWindowsの存在感を示すつもり」(同)という方針を松岡氏は示す。

同社がここまで組込機器向けにWindows 7ベースのEmbeded 7シリーズを押していく背景について、松岡氏は「この2年間はちょうど組込機器の端境期だった。だからこそスレートタイプやスマートフォンなども登場してきた」との見方を示す。そうした中、同社としては、ミドルローの領域をCompact 7、自動車向けをAutomotive 7、ミドルハイの領域をStandard 7でカバーする計画で、「スレートタイプやスマートフォンも使い方次第ではバッテリが1日持たない場合もある。しかし、多くのユーザーが組込機器で使いたい機能というのは、Webのブラウジングだったり、Flashなどによる動画再生だったり、SNS、メールだったりで、それ以上の複雑なことはPCで行うという感覚。これはAppleがすべてをiPhoneで行わせるのではなく、Macと組み合わせて使わせていることと共通する考え方」と、それぞれの領域に応じたユーザーが求めるシナリオをコストまで含めてどうやって提供していくかがポイントになるとする。

ただし、ミドルローの領域は、「ある意味、今後、玉石混淆の状態になる」とするが、「それでもある程度の性能がないと、ユーザーに選択してもらえない。そういった意味ではWindows 7で開発が可能なEmbedded 7をいかにそうした領域に適用していくか、その手伝いをいかにMicrosoftが行っていくか」がポイントになるとしており、その切り札の1つが「Siliverlight」によるUIの強化であると強調する。