市場ではリスク回避的な志向が台頭しやすいのか、それともこれまでのリスク回避からの調整が見られるのか、と市場心理も日々紆余曲折の展開となりそうです。
市場の旬の話題は、やはり朝鮮半島情勢でしょう。そして、ドミノ現象がみられるのか?という点で欧州周辺国に対する懸念が続き、米消費者心理も絡んだ金曜日の雇用統計に向けて、という市場展開でしょうか。
まずは、北朝鮮情勢ですが、北朝鮮は臨戦体制に入っているようです。一方、中国に働きかけに対して米韓はそろって6ヶ国協議への早急な参加は否定的なスタンスをとっています。米韓共同軍事演習は今週の水曜日までの予定で実施されることから、それまではアジア株式市場の展開は、地政学上リスクにさらされている状態といえるでしょう。
もちろん、実際の衝突があるのかどうかは、誰もわかりません。前線にある部隊の対応次第では、緊張感が高まったりしますので、何も起こらないことを祈るしかありません。
ただ、実際に衝突が起きた場合はどうなるのでしょうか? 軍事面で言えば、米韓の方が装備等の面でかなり優位にあるといわれています。問題は、中国がどの程度まで介入してくるのかどうか。今回の軍事演習に関して中国は排他的経済水域(EEZ)内に関して反対の立場をとっています。ある意味、米韓演習を容認する形となっています(EEZ海域以外では)。
公海上において判断することは容易ではないですが、米韓ともにプレゼンスをはっきりと示す意味で、行動範囲に慎重ながらも演習を行うことになるでしょう。問題は、北朝鮮がその行動に対して、どう反応するかどうかなのですが、過剰反応をして韓国領土側にミサイルを発射するなどに事態になれば、中国側としても面目丸つぶれになり、米韓としては対応をせざるを得ない状態になります。イ・ミョンバク大統領としては国民の声に対応して、強気のスタンスをとるでしょう。38度線を挟んだ緊張が高まり、一触即発の状態になるやすくなると思います。
当然のことながら、韓国市場への影響はマイナスになりますし、中国の資本市場も混乱することになるでしょう。
無事に演習が終わるまでは、地政学上リスクという話題はアジア時間において無視できない展開となりそうです。オバマ大統領が前回の砲撃を受けて、かなり激怒したことを考えれば、アメリカ側の強気のスタンスはそう簡単には収まりにくいと考えたほうがよさそうです。
その意味では、緊張がほぐれない間は、ドルが選好されやすい地合いとなりそうです。円売り地合いになりやすいとはいえ、地政学上リスクでは日本の株式市場にとっては、方向感が定まりにくい展開でしょうか。
そして、為替市場でもユーロの展開がどうなるのか、という点で注目されている欧州の混乱。
週末、どうにかEUのアイルランドに対する支援を決定し、イギリスなども単独での支援策を考えていることから、週明けのユーロは短期筋の買い戻しで多少持ち直している展開になっています。しかし、市場の焦点はアイルランドから別の地域に既に移っています。
今年初めのギリシャ危機は国家の財政破たんという点でしたが、もともとユーロに参入する以前から、放漫財政という点でギリシャは市場から揶揄されていました。よくユーロに参入できたな、と市場でも話題になりましたが、まだ先進国の経済状態が良かったがために見過ごされてきたといえるでしょう。また、経済規模からみてもユーロ圏内でわずかな割合でしかないことから、影響は限定的と見られてきました。
ただ、今回のアイルランドにおいて注目されるのは、金融機関の破たんです。低い法人税の恩恵を受けて経済規模を伸ばしてきたアイルランド経済は、リーマンショックを受けて各金融機関の融資焦付きが膨らんで、3大銀行の一つはすでに国有化され、残りも今回の支援で実質的に国有化されると市場ではみています。投資家においてはヘアカット(債務削減)が気になるところでしたが、今回は見送られています。アイルランドの政局も不安定になっていることから、はたして債務削減案が履行されるのかどうかも不安要素になっています。
今市場の話題になっているのは、ドミノ現象という展開で、ポルトガル、スペインがどうなるのかです。それぞれの政治面では安定的になっているものの、ポルトガルも債務削減が必至ですし、スペインに至っては不動産融資がアイルランド同様にかなり問題視されており、今年の夏には貯蓄銀行(カハ)に対する懸念が高まりました。
今回のポルトガル・スペインに対する懸念が増大しますと、かなりユーロにとってはネガティブな要素となります。各国に対する欧州系金融機関の融資額はかなり大きく、さらにはお互いに持ち合いで債権を保有しているという状態になっています。ましてや、来年度の償還金額に対する懸念が市場では根強くあります。
市場の不安心理は国債利回りの上昇(債権価格の下落)、ドイツ国債との利回り格差拡大、借入コストの上昇という状態で反映されています。この状態が改善されない限りは、良い経済指標・話題が出てきたとしてもユーロの反発は厳しいでしょう。
今週のイベントでは市場が注目するのは、ECB理事会後の記者会見でトリシェECB総裁がどのような苦言・提案を示すことになるのかどうかです。今年のレンジで見れば、6月の安値からの上昇で見た38.2%(1.3365)を既に割り込んでおり、1.3000割れの可能性があるかもしれません。
上記の2点で考えれば、欧州、そしてアジアに対する懸念から新興国からの資本回帰も合わせてドルの反発地合いになりやすいのですが、今週は米雇用統計を控えています。
先週のブラック・フライデーの売り上げは、期待するほどではなかったようです。株式市場の回復で富裕者層では回復基調を見せていますが、小売業界がかなり前宣伝でセールスを行い、一般消費者の間ではオンラインでさらなる値下げの可能性があるのではとかなり慎重姿勢のようです。
なんとなく底打ち感があるのでは? という資本市場の見方とは裏腹に、実際の雇用情勢が改善されるという展開になるまでは、国内の売り上げ期待はそう簡単に盛り上がりにくいかもしれません。
その意味では、今週金曜日の雇用統計に向けて、市場関係者はいくつかの米経済指標における雇用関連の指数がどのような内容になるのかに注目しています。
また、今月のQE2後の米金利の上昇についても、現状の雇用情勢が継続されるのであれば、さらなる上昇という展開にはつながりにくいです。最近の米ドルの反発基調も、米金利上昇という追い風があればこそで、今週の各イベントを受けて期待感後退となりますと、短期的なドル買い思考からの利益確定の動きが出てもおかしくはないです。
火曜日に、シカゴ購買部指数・消費者信頼感指数、水曜日にケース・シラー、ISM景況感指数にADP雇用者数の発表があり、その上バーナンキFRB議長、イエレンFRB副議長などの講演予定もあります。前述の二つのリスク回避的な話題がある中で、各イベントの結果を受けた米資本市場の展開およびドルの地合いはかなり神経質になりそうです。
そして、主要3通貨だけではなく、3市場の混乱が継続されるのであれば、新興国・資源関連地域に対する投資も年末を控えて一旦は後退しやすくなるかもしれません。インド市場ではここ数週間、2008年のリーマンショック以来の高値を付けてから乱高下を繰り返しながら反落基調に転じています。現状では今年の5月につけた安値からの上昇で見た38.2%付近でどうにか踏みとどまっています。
ただ、中国の株式市場において、中国当局のスタンスへの警戒感に北朝鮮の話題が加わって上値が重たくなっていることから、新興国を中心としたリスク回避的な動きが再燃すれば、消去法的にドルへの回帰が加速するかもしれません。
年末のファンド筋も含めて利益確定の動きがでやすい時期でもあり、上昇基調だけではなく、下落基調の展開も可能性としてシナリオに加えておいた方がよさそうです。また、不透明要因に反応しやすい各市場だけに、方向性を求めるよりは、リスク管理の視点でエントリーを考えていったほうがよさそうです。
今週の主な経済指標
11月29日(月) |
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(NZ)10月貿易収支 |
(日)10月小売業販売額 |
(NZ)11月NBNZ 企業信頼感 |
(スウェーデン)10月小売売上高 |
(英)10月住宅ローン承認件数 |
(英)10月マネーサプライM4 (確定値) |
(ユーロ圏)11月 消費者信頼感 (確定値) |
(豪)スティーブンスRBA総裁 講演 |
(加)第3四半期経常収支 |
(米)11月ダラス連銀製造業活動 |
(米)ブラード・セントルイス地区連銀総裁 講演 |
11月30日(火) |
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(NZ)10月住宅建設許可 |
(日)10月失業率 |
(日)10月鉱工業生産 (速報値) |
(英)11月GFK消費者信頼感調査 |
(豪)10月住宅建設許可件数 |
(豪)第3四半期経常収支 |
(独)11月失業者数 |
(ユーロ圏)11月 消費者物価指数速報 |
(ユーロ圏)10月 失業率 |
(ユーロ圏)トリシェECB総裁 経済・金融委員会に出席 |
(南ア)10月貿易収支 |
(加)9月GDP |
(米)第3四半期S&P/ケース・シラー米住宅 |
(米)11月シカコ゛購買部協会景気指数 |
(米)11月消費者信頼感指数 |
(南ア)第3四半期GDP |
(米)コチャラコタ・ミネアポリス地区連銀総裁 講演 |
(米)バーナンキFRB議長 ディスカッションに参加 |
12月1日(水) |
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(スイス)11月SVME購買部協会景気指数 |
(独)11月PMI製造業 確報値 |
(ユーロ圏)11月PMI製造業 (確定値) |
(英)11月PMI製造業 |
(米)イエレンFRB副議長 講演 |
(米)11月チャレンジャー人員削減数 |
(米)11月ADP雇用統計 |
(米)第3四半期・非農業部門労働生産性 (確定値) |
(米)11月ISM製造業景況指数 |
(米)10月建設支出 |
(米)フィッシャー・ダラス地区連銀総裁 講演 |
(米)地区連銀経済報告 |
12月2日(木) |
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(豪)10月小売売上高 |
(スイス)GDP-3Q(15:45) |
(スイス)10月小売売上高 |
(英)11月PMI建設業 |
(ユーロ圏)第3四半期・GDP (改定値) |
(ユーロ圏)10月生産者物価指数 |
(ユーロ圏)ECB(欧州中銀)政策金利 |
(ユーロ圏)トリシェECB総裁 記者会見 |
(米)新規失業保険申請件数 |
(米)プロッサー・フィラデルフィア地区連銀総裁 講演 |
(米)ブラード・セントルイス地区連銀総裁 講演 |
(米)デュークFRB理事 講演 |
12月3日(金) |
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(スイス)11月消費者物価指数 |
(ユーロ圏)トリシェECB総裁 講演 |
(独)11月PMIサービス業 |
(ユーロ圏)11月PMIサービス業 (確定値) |
(英)11月PMIサービス業 |
(ユーロ圏)10月小売売上高 |
(加)11月失業率 |
(米)11月雇用統計失業率 |
(米)11月ISM非製造業景況指数 |
(米)10月製造業受注指数 |