NXP Semiconductorsの日本法人であるNXPセミコンダクターズジャパンは11月16日、都内で会見を開き、同社のスマートハウス市場に向けた取り組みを説明した。

スマートハウスで注目されるのがスマートメータであり、もちろん同社もそうした機器向けに製品を提供しているが、それ以外にもZigBeeなどのRF技術を活用し、さまざまな機器の制御を行ったり、各種電気機器の消費電力の状況を監視したりといった製品、技術など、家の中の電気機器すべてをネットワークで結ぶためのソリューションを展開しようとしている。そんな同社が今回、主なソリューションとして提示して見せたのが、ZigBeeを用いたホームオートメーション化、同じくZigBeeによるスマートライティング、そしてARM Cortex-M0をベースとした電力計測用LSIによる消費電力の監視である。

NXPがフォーカスするスマートグリッド(スマートホーム)の分野

ZigBeeを活用してホームオートメーションの実現を狙う

NXPセミコンダクターズジャパンのハイパフォーマンス・ミックスドシグナル(HPMS)事業部 Low Power RFマネージャであるAdrian Ward氏

同社ハイパフォーマンス・ミックスドシグナル(HPMS)事業部 Low Power RFマネージャのAdrian Ward氏は、同社のスマートホームに向けたRF事業の現状について、「2010年夏に2.4GHz帯のRFソリューションベンダである英Jennicを買収したことで、低消費電力RFソリューションを提供できるようになった。Jennicは2004年12月よりトランシーバ搭載マイコンの提供を開始しており、現在は2009年より第3世代チップ「JN5148」の提供を行ってきた」とし、これによりさまざまな分野に向けてRFソリューションを提供できるようになったと説明する。

JN5148は、32ビットRISCコアを搭載しており、4~32MHzで動作、IEEE802.15.4の2.4GHzトランシーバを搭載し、クローズドネットワーク用スタックの「JenNet propreietary stack」および「ZigBee PRO」をサポートしている。Evalution Kitとしては、コントロールボード1枚に、照度センサおよび温度センサを搭載したセンサボードが4枚、これにEclipseベースの統合開発環境とライセンスフリーのJanNetライブラリとZigBee PROライブラリが提供される。

JN5148の概要

また、同社のZigBee PROソリューションとして、スマートエナジー(SE)・プロファイルやホームオートメーション(HA)・プロファイルが提供されており、スマートメータなどの各種機器との接続に向け米カリフォルニアで実証実験が行われているという。

ネットワークのサポートとしては、現在はJenNetとZigBee PROに加え、「ZigBee RF4CEの認証を先日受けた」とのことで、2011年初頭よりプラットフォームが提供される予定。また、IPv6版のZigBeeである「ZigBee IP」が2011年下期に、「IPv6 over Low-Power Wireless Personal Area Networks(6LoWPAN)」に対応する第2世代プラットフォームが同じく2011年下期にそれぞれ製品展開される予定で、「同じハードウェアプラットフォームにさまざまなスタックが搭載することとなる」(同)とする。

各種ネットワークに対するJN5148の対応スケジュール

左がEvalution Kitに含まれるコントロールボード、右がセンサボードで、照度センサと温度センサを備えている

バッテリの長寿命化を実現した32ビットマイコン

一方のスマートライティングに対しては、「RFだけでなく、ARMプロセッサ製品、ディスクリート製品含めたトータルソリューションで提案していく」(同)としており、手始めに照明向け低コストRFソリューション「JN5142」のサンプル出荷を2011年3月より開始する計画とする。JN5142はJN5148からメモリ容量を削減し搭載機能を照明管理と通信に絞った製品で、トランシーバの送信電流15mA、受信電流17.5mAを実現、競合製品が1回の通信に2パケットなのに比べ、同製品は3パケットの通信が可能ということで、「競合製品比で35%の電力低減が可能となっており、結果、バッテリの長寿命化につながり、10年以上利用することができるようになる」(同)と説明する。

NXPの提供する照明向けソリューション各種

JN5142の概要

1度に送信できるパケット数を増やすことで、電力消費を抑制することが可能となった

また、ZigBee Allianceが現在策定を進めているエナジー・ハーベスティング関連機器向け無線通信仕様「ZigBee Green Power」にも準拠する予定のほか、同社はZigBee SmartLightの規格策定にも参加しており、「標準化はほぼ終了しており、NXPとしても規格の公開と似たようなタイミングで製品を発表する予定」(同)とした。

旧Jennic製品のロードマップ。JN5148はハイエンド向けということでClass 3に属し、JN5142はより簡易な部分向けということでClass 2に属する。さらに簡素なClass 1および、よりハイエンドなClass 4に関してはNXPのプロセスと組み合わせることで製品化し、2011年末より提供を開始する予定としている

家電製品個々の電力測定を可能とするLSI

最後はCortex-M0をベースとした電力計測用LSI「EM773」だが、こちらは非課金用途向けとのことで、スマートメーターなどではなく、コンセントや電力タップといった部分に活用されるものとなっている。

EM773は48MHz駆動のCortex-M0と電力計測用エンジンを搭載したLSIで、ワイヤレスM-Busに対応したデモ用デザインが用意されている。Evaluation Kitとして、ボードのほか、ソースコードや基板のガーバーデータ、電力計算用のアプリケーションなども含まれており、カスタマは面倒な電流計測の計算などを行わなくても、即座に評価を行うことができるようになっている。

各種電力メータ向け製品ラインアップ。EM773は最下位のNon-Billing Energy Metering ICに位置付けられる。ちなみに上位2種の色が異なるが、この分野については現在、検討中とのこと

スマートメータ向けのブロック図。オレンジ色の部分がまだ提供できていない機能だが、今後はそうした分野の拡充も図っていくという

EM773の概要

なお、こちらも将来的にはZigBeeによる通信に対応するべく開発を行っており、ほぼ出来ている段階としている。

左の白いのが電力測定用のモジュールでコンセントに挿して使用する。なお、プラグの形が丸いのは欧州仕様のため。右のUSBにワイヤレスM-Busでデータを飛ばして、PCなどでそれを確認することができる