電機大手8社の2010年度上期(2010年4月 - 9月)連結決算は、すべての企業が、本業の儲けを示す営業利益で増益となるなど、比較的好調なものとなった。8社合計の売上高は22兆1,778億円。前年同期の8社合計が20兆2,779億円だったことに比べて、約9.4%の増収となっている。

電機大手8社 2010年度上期連結業績

売上高(対前年同期比) 営業利益(対前年同期比) 当期純利益 営業利益率
日立製作所 4兆5,024億円(109.2%) 2,180億円 1,580億円 4.8%
パナソニック 4兆3,679億円(131.0%) 1,689億円(584.4%) 747億円 3.9%
ソニー 3兆3,942億円(104.1%) 1,356億円 568億円 4.0%
東芝 3兆811億円(106.4%) 1,048億円(4,990.5%) 278億円 3.4%
富士通 2兆1,474億円(98.2%) 471億円 190億円 2.2%
三菱電機 1兆7,118億円(111.9%) 1,129億円(723.7%) 712億円 6.6%
シャープ 1兆5,039億円(116.7%) 434億円(2,893.3%) 143億円 2.9%
NEC 1兆4,691億円(88.6%) 10億円 ▲270億円 0.1%
8社合計 22兆1,778億円(109.4%) 8,317億円 3,948億円 3.8%

売上高ではパナソニックが31.0%増という高い伸びを示したが、これは三洋電機を子会社化した影響が大きい。三洋電機を除いたパナソニックグループとして比較すると売上高は7%増の3兆5,537億円となっており、それでも高い伸びを示していることがわかる。「新興国での大増販が貢献しているのに加えて、エコポイント制度の影響があった国内家電分野は過去最高の売上高となっている」(パナソニック 大坪文雄社長)という。

また、シャープが前年同期比16.7%増、三菱電機が11.9%増と2桁の成長となっている。シャープは液晶パネルや太陽電池などの電子部品が好調に推移したほか、白物家電の健康・環境機器も13.2%増と2桁の成長。液晶テレビを含むAV・通信機器も8.6%増の成長率となっている。三菱電機は、産業メカトロニクスや電子デバイスが、いずれも前年同期比約40%増という大幅な成長。家庭電器も13%増と2桁の成長を遂げている。

パナソニック 大坪文雄社長

シャープ 片山幹雄社長

富士通 加藤和彦執行役員専務

これに対して、売上高が前年割れとなったのが富士通NECのIT/通信系の2社。富士通は、前年同期比4.9%減となったサービス事業が含む、テクノロジーソリューション部門が3.5%減。国内、アジアは堅調に推移したものの、英国政府の財政緊縮策の影響を受けた欧州での売り上げ減少が響いた。また、NECは、キャリアネットワークス、ITサービスでの売り上げ減少が響いたほか、子会社だったNECエレクトロニクスを、ルネサステクノロジに統合した影響もあった。

営業利益は、8社すべてが増益となり、さらに、日立製作所、ソニー、富士通、NECの4社が前年同期の赤字から黒字転換。すべての企業が黒字化した。8社の合計は8,317億円となり、前年同期の908億円の赤字からも大幅に改善となった。

日立製作所が半期としては過去最高の営業利益を達成。パナソニックが新興国市場での売り上げ増、損益分岐点の引き下げにより、営業利益がすべての部門で前年実績および公表値を上回ったほか、東芝もデジタルプロダクツ、電子デバイス、社会インフラ、家庭電器のすべてのセグメントがいずれも黒字化。リーマンショック前の2007年の上期実績を上回るところにまで回復したという。

営業利益の回復は、新興国市場における事業拡大、ここ数年に渡る構造改革の成果が影響している。ソニーの加藤優CFOは、「利益を生み出す基礎体力がついてきた」と表現する。だが、日本の大手電機と、韓国サムスンとの差には依然として開きがある。

韓国サムスンの決算を、日本の企業と同じ2010年度上期にあたる2010年4 - 9月に置き換えてみると、この間、サムスンの売上高は78兆1,200億ウォン(5兆4,684億円)、営業利益は9兆8,700億ウォン(約6,910億円)。営業利益率は12.6%と高い水準となっているのに対して、日本の電機大手8社合計での営業利益率は3.8%。もっとも営業利益率が高い三菱電機でも6.6%に留まる。

サムスンは半導体部門の好調ぶりを背景に、2010年4 - 6月には、四半期ベースでは過去最高水準の営業利益を確保。さらにスマートフォンの投入によって、7 - 9月は携帯電話事業が伸張するといった貢献も見逃せない。しかし、7 - 9月は薄型テレビ事業と、白物家電事業が赤字に転落するなど、万全の体制とは言い難い部分もある。薄型テレビでは黒字化に向けて体質強化が進展し、白物家電は利益体質が定着しつつある日本の企業が、巻き返しに向けて着実に歩みを進めているともいえる。

一方、最終利益では、8社合計が3,948億円となった。前年同期が3,451億円の赤字であったことに比べると、業績の回復ぶりは特筆できよう。

だが、通期の見通しでは、日立製作所や三菱電機が売上高、営業利益、最終利益のすべてを上方修正すると発表する一方、上期は増収増益だったシャープは営業利益と最終利益を下方修正。NECも経常利益を下方修正。ソニーや富士通も売上高を下方修正するといった動きがみられる。

日立製作所 三好崇司副社長

ソニー 加藤優CFO

「欧州の金融不安、中国のローカルブランドメーカーの不振、北米市場の景気低迷などの影響で、液晶テレビの在庫が市場に積みあがっており、価格下落が進展している」(シャープ 片山幹雄社長)、「来年3月にかけて不透明感が増してくる。各国の経済政策効果の一巡、新興国の緊縮、経済新興国でのインフレ施策、円高の影響などがある」(日立製作所 三好崇司副社長)、「民需の回復遅れがあり、商談の先送りといった動きもある」(富士通 加藤和彦執行役員専務)、「営業利益見通しは上方修正するが、下期は厳しい事業環境を想定。慎重な見方をしている」(ソニー 加藤優CFO)など、厳しい見方は各社に共通したものとなっている。

2010年度下期の経営の舵取りも厳しい状況であることには変わりはなさそうだ。そのなかで、通期業績達成に向けた各社の取り組みが注目される。