電子機器設計用ソフトウェア・ツールの大手ベンダである図研は、同社主催の顧客向け講演会兼展示会「Zuken Innovation 2010」(会期:10月21~22日、会場:パン パシフィック横浜ベイホテル東急)において、2011年秋にリリース予定の新CADツールの内容を先行して一部明らかにした。10月22日の最終講演セッションで図研の取締役兼技術本部長を務める仮屋和浩氏が、概要を説明した。

「Zuken Innovation 2010」の案内看板

図研といえば、電子回路基板の設計ソフトウェア・ツール群による設計環境「CR-5000」が良く知られている。CR-5000には、回路図エディタ「CR-5000 System Designer」やプリント基板用フロアプラン・ツール「CR-5000 Lightning」、プリント基板設計ツール「CR-5000 Board Designer」、プリント基板製造用データ作成ツール「CR-5000 Board Producer」などのツールがある。

電子機器や電子回路などの設計ツール業界では、海外のベンダが比較的強い。特に半導体回路の設計では、米国のツール・ベンダが圧倒的である。これに対して半導体のパッケージからプリント基板を含めた電気設計では、図研の設計ツールが普及している。その立役者がCR-5000だとも言える。1995年に出荷が始まって以降、CR-5000は世界中で使われるようになった。

CR-5000は、1枚の電子回路基板を設計する各工程をフルカバーするツール群だ。1990年代後半は手作業による各工程が設計ツールによって次々と半自動化された垂直統合の時代であり、CR-5000を構成するツール群も基板設計を垂直統合する形で拡充された。

それが2000年以降は、基板設計を取り巻く状況が大きく変化した。設計環境が1枚のプリント基板に収まらなくなってきたのである。システムはそれまでにも複数のプリント基板で構成されていたものの、プリント基板同士の接続にはそれほど気を使わずとも良かった。極端に言えば、基板間の配線設計は手作業で済んでいた。

しかし複数のプリント基板をつなぐ配線を走る信号がどんどん高速になり、配線の本数が増えると、複数のプリント基板をまとめて扱える設計ツールが必要とされるようになった。そこで複数のプリント基板を基板間の配線設計まで含めて取り扱う設計ツール群を図研は、順次整備してきた。これら新世代の設計ツールの例が、回路図エディタ「Design Gateway」や製造データ作成ツール「DFM Center」などである。

またプリント基板と半導体パッケージを従来は個別に設計していたのが、システムの高性能化によってパッケージ内配線とプリント基板配線の相互作用が無視できなくなってきた。さらにはプリント基板が半導体チップや受動部品などを内蔵するようになり、3次元的な高密度化が進んだ。

そこで、3次元積層の高密度実装システムを一括して扱える新CADツールとして開発されたのが「Triforce(トライフォース)」(開発コード名)である。ここで高密度実装システムとは、半導体チップの入出力回路設計、半導体パッケージの配線設計、複数のプリント基板の配置配線設計、プリント基板間の接続配線設計はもちろんのこと、パッケージ・オン・パッケージ(PoP)や部品内蔵基板などの新しい3次元積層モジュールを含めたシステムを意味する。

次期基板設計ソフトウエアの開発コード名「Triforce(トライフォース)」。製品名は未定だとする

電子回路基板設計システム(EDAシステム)の3要素。CAD(設計)とCAM(製造)、CAE(解析検証)

なお、Triforce(トライフォース)はCR-5000 Board Designerを置き換えるツールではない。1枚のプリント基板を設計するためには、CR-5000 Board Designerで十分だ。むしろTriforce(トライフォース)は不要だと言える。