スパコン関係最大の学会+展示会であるSC10が2010年11月13日に開幕した。今年はNew Orleans(最近はニューオーリンズという表記が多いが、どうもorlの発音になっていないので筆者としては馴染めない)のErnest N. Morial Convention Centerでの開催である。

正式の会期は11月13日から20日となっているが、13日は教育関係のセッション、14日、15日はチュートリアルが主体で、15日の夜のGalaが前夜祭で、16日からが本会議という感じとなり15日、16日あたりから参加する人が多い。

13日午後はガラーンとした受付の風景。参加者に配るバックパックが受付の後方にうずたかく積まれている

参加者に配られるバックパック

SC10のロゴが刺繍されているところが値打ち。左下はプログラムをまとめた冊子。厚みが2cm程度あり、結構、重い。

このSC10の参加費であるが、開催主体のIEEEやACMの会員で10月15日までの早期申込み割引を適用した場合、400ドルである。しかし、このバックパックと論文を収録したUSBメモリが貰え、学会が契約したホテルに泊まると多少割引料金になるのに加えて会場のコンベンションセンターまでチャーターの無料バスが運行されている。そして、会場では10時と3時の休憩にはジュース、果物、クッキーなどのおやつが無料提供される。さらに、前夜祭では展示会場でふんだんにおつまみのオードブルやチーズが出る。ただし、アルコールは2杯を超える分は有料である。また、水曜にはレセプションがある。これは屋外の遊園地などの場合もあるし、屋内の会場の場合もあるが、いずれにしても盛大なパーティーで、1回分の夕食を浮かすことができる。ということで、学会や展示会で入手できる情報の対価としても参加費の400ドルは高い感じではないが、これらのベネフィットを考えるとグッドディールではないかと思う。

こう書くと、SCの出席者はみんな遊んでおやつと宴会ばかりという印象をもたれるかも知れないが、それはまったく違う。朝は8時半から始まり、レセプションの日を別とすれば、夜のセッションは19時まである。そして、HPC Challengeの表彰が昼休みの12:15~13:15にあるとなると昼食も食べられない。いきおい、10時か3時のおやつで埋め合わせをするしかない。そして、論文発表の中でも、興味の薄いものはさぼって(もともと同じ時間に4~5つの発表が同時に行われているので、1人ではとてもカバーできない)、展示会場の取材も行わなければならない。ということで、論文発表の会議室を渡り歩き、広い展示会場をさまよったりとSCの取材はとにかく忙しい。

SCではスパコンのハード、ソフトに関して最新の成果をまとめた論文が発表される。論文としては一般論文以外に、「高い性能や、新規な計算アルゴリズムや高い価格性能比などの実現に顕著な進歩を達成した論文」に贈られるGordon Bell賞の候補論文というものがある。昨年(2009年)、長崎大学の浜田先生のグループの論文がPrice Performance部門でGordon Bellを受賞したが、今年も浜田先生の論文が候補論文に入っており、連続受賞なるかが注目される。

また、東工大の博士課程に在学中の下川辺氏が第一著者となっているASCAのGPU移植の論文がStudent Best Paperの候補に挙がっている。これは気象解析という大規模実用プログラムのフルGPU移植という立派な業績であり、受賞に期待がかかる。

そしてSCと言えば、スパコンランキングのTop500が発表される学会としても良く知られている。今年は11月14日の日曜にWeb公開が行われ、16日に表彰式が行われるという予定になっている。そして、下馬評では、今回は米国のJaguarを抜いて、中国の天河1Aスパコンがトップになると見られている。これまで、中国はTop500で高いランキングを占めても直接の関係者が授賞式に来ることは無く、アメリカに居る人が代理出席などというケースが多かったが、今回のトップ表彰には本当の開発関係者が来るのかというのも興味のある点である。

昨年のSC09の参加者は1万人以上に上ったが、論文発表を聞く人は1/3程度で、2/3の出席者は展示を行ったり、展示だけを見に来るという人たちである。今年は340あまりのブースが出される予定で、MicrosoftやIntel、IBMなどの大ブースから1~2人が座っているだけの小ブースまであるが、1ブースあたり平均5人としても、展示員だけでも2000人程度は参加している計算となる。

今年の展示の目玉が何になるかは見てみないと分からないが、昨年、POWER7ベースのBlue Watersスパコンのノードの展示をしてしまったIBMが、今年は20PFlopsと言われるSequoiaスパコン用のBlue/Gene Qを出すのかどうかが気になるところである。また、Hardcore Computerという会社がジャブ漬け液冷のワークステーションやブレードサーバを展示する予定である。ジャブ漬けは冷却液が高いとか保守がやり難いなど色々問題がありそうであるが、どのような工夫がなされているのか興味深いところである。

展示場への入り口

一般公開は15日の前夜祭で、係員が居て展示員のバッジを持っていないと入れてくれない。ブース番号が2500-2800となっているが、25列から28列あたりという意味で、ブースの通し番号ではない。