【インタビュー】

"為替のプロ"井上氏が新著を語る - 『FXチャートリーディング』の極意とは?

    牧野武文  [2010/11/12]

    オスピスの取締役、井上義教氏は、元銀行の為替ディーラー。いわゆるプロ中のプロトレーダーだ。そのプロが1冊の本を上梓した。『FXチャートリーディングマスターブック~為替のプロが実践する本当に勝てる技を大公開!』(井上義教・株式会社オスピス著、ダイヤモンド社刊、2,940円)だ。

    この本は、サイバーエージェントFXが主催する「リアルチャートリーディングセミナー」で、話した内容をまとめたものだ。このセミナーはオンラインで行われ、サイバーエージェントFXの口座を開設していなくても、事前に申込みをすることで受講が可能だ。

    『FXチャートリーディングマスターブック~為替のプロが実践する本当に勝てる技を大公開!』(井上義教・株式会社オスピス著、ダイヤモンド社刊、2,940円)

    内容は、「ローソク足」「移動平均線」「MACD」「ストキャスティック」「ボリンジャーバンド」などの指標や、「押し目買い」「戻り売り」「トレイル」などのトレード手法について、プロ目線からの解説がされているという、ボリューム的にも内容的にも濃いものになっている。

    「すべての答えはチャートに書かれている」

    しかし、全編を通した主張は実にシンプルだ。

    「すべての答えはチャートに書かれているということなんです」(井上氏)。FXの値動きを判断するのには、チャートのパターンから予測をする「テクニカル分析」、経済指標などから判断する「ファンダメンタルズ分析」の二つがあるが、井上氏はファンダメンタルズ分析は必要ないと断言している。

    「すべての答えはチャートに書かれているということなんです」と語る井上義教氏

    「為替というのは非常にたくさんの人が参加する取引です。言ってみれば、世の中のすべてのインサイダー情報が、チャートという表側に現れているのです」。

    経済指標がどうなるとか、為替介入があるとかないとか、そういうことを気にするのではなく、マーケットがどちらの方向に動こうとしているのか、それを見極めてトレードをしてほしいと言う。

    しかし、例えば9月15日には、日銀の為替介入があり、ドル円相場は半日で3円近く上昇した。あの時、買いポジションを持っていたら、大きな利益を取ることができたろう。現在も、小規模の介入を期待して、買いポジションを持ち続けている人がいるかもしれない。

    「あれは取れなくていいんです。というより、取ってはいけないんですね。あの時は、明らかに下向きの圧力があって、マーケットは下がる方向に進んでいました。ですから、売りで入るのが正しいんです。もちろん、売りで入ったら、介入の瞬間は大きな損失をだしてしまうことになりますが、ロスカットをしっかり入れておき、小さな損失で抑えるというのがベストの選択でした」。

    とはいえ、半日で3円の上昇を無視しなさいというのは、なんとももったいない話にも聞こえる。

    「トレードというのは、四六時中ポジションを持っていなければならないというわけではないんですね。確実に利益が出せそうなとき、出せると自信があるときだけ、ポジションを入れればいいのです。ドル円は、ここ数年、120数円を頂点にずっとマーケットは下向きなんです。今まで、いくらでも利益を出せる場があったはずなのです」。

    言われてみればその通りで、数年間ドル円で売りを続けていれば、120円~80円までの40円の幅で利益を出すことができたはず。それが、ただ一度の3円の上昇で、取れない、逃したと騒ぐのは意味がないことだ。「マーケットの方向性に逆らわず、素直にポジションを取るということがとても大切なんです」。

    「長期を見据えたスイングトレードを」

    もう一つ、井上氏が、本書の中で個人トレーダーに伝えたいのが、「デイトレードではなく、長期を見据えたスイングトレードを考えてほしい」ということだ。

    井上氏は、新著の中で個人トレーダーに伝えたいことの一つが、「デイトレードではなく、長期を見据えたスイングトレードを考えてほしい」であると話した

    「デイトレードで勝つのは難しいんです。たとえば、100メートル競争というのは誰でも参加できます。ライバルは地球の人口と同じ60億人もいるんです。でも、マラソンとなると、途端に参加者が少なくなる。参加者が少なければ、勝てる確率がぐっと上がるんですね」。そのために、本書では、日足チャートの読み方を中心に解説がされている。

    「ただ、日足であっても、時間足であっても、チャートの読み方の基本的な考え方は同じです。ですから、デイトレード指向の方でも、そのまま参考にしていただけると思います。ただしデイトレードは、介入や大口の買いなどが入って、1日の値動きの中では比較的大きく動くことがあって、これは予測不可能ですよね。これは雑音なんです。雑音にリスクを取るようなことはせずに、マーケットの動く方向にリスクを取ってほしい。だから、スイングトレードなんですね」。

    昼間仕事をもっている人は、数分ごとにチャートを確認したり、ましてや分析をしてみたりなどということはできない。昼休みや帰宅してからチャートを見るしかない。

    「そういう方こそ、なおのことチャートをしっかり読んで、マーケットの方向にポジションを入れていくという手法を身につけてほしいと思っています」。

    「相場を素直に簡単にとらえる見方」を解説

    しかし、もしスイングトレードをするのだとしたら、ファンダメンタルズ分析はより重要になってくるのではないだろうか。例えば、現在の通貨はやや動きが乱れているにしても、経済が好調の国の通貨が高くなるという原則は変わらない。経済が強い国の通貨を買うというのは、スイングトレードの基本でもあるように思える。

    「それでは勝てないんですね。なぜなら、ファンダメンタルズの要素がはっきりとしてきたときは、もうすでにマーケットがそちらの方向に動いてしまっていますから。遅いんです。一方で、チャートにはファンダメンタルズよりも早く、方向を示唆する兆候が現れてきます。それを捕らえて、ポジションを持つというのが重要なんです」。

    例えば、ドル円相場についても、評論家や経済学者はさまざまなことを言う。いわく、「ファンダメンタルズからみると、ドル円は90円が妥当な価格」「各国中央銀行の政策を見ると、このままでは70円割れもありえる」などなど。

    「本当にそう思うのだったら、そう取引をすればいいだけの話ですが、個人トレーダーはそういう情報に惑わされない方がいいと思います。私は、とっても簡単なことしか言っていなんですよ。マーケットが上がるのか、下がるのか、横ばいなのかをチャートから読みましょうということです。上がるのなら買って、下がるのなら売って、横ばいならお休みする。このシンプルな方法で、FXはだれでも利益を出すことができます。ただし、チャートを読むには技術と相場観が必要で、それを私の本を参考に学んでいただければと思うのです」。

    本書は、プロ目線のチャートの読み方を解説しているので、これからFXを始めようという人にはやや難易度が高いかもしれないが、「移動平均線」「MACD」などの言葉を一度でも聞いたことがある人であれば、とても平易に解説がされていて、なおかつ、従来の常識とはまったく違った「相場を素直に簡単にとらえる見方」が解説されているので、じゅうぶん理解できるし、大いに参考になるだろう。

    裁量トレードをしたいと考えている人には、必須の教科書として一読されることをお勧めする。

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