前回は、国民新党代表で前金融・郵政改革担当大臣の亀井静香氏に、"中小企業への融資"などをテーマに、「中小企業金融円滑化法(モラトリアム法)」の延長問題や、消費者金融各社が苦境に陥っていることによる影響などについて話を伺った。今回は、急激に進んだ円高への対策や、景気後退感が増す日本経済の処方箋について、亀井代表が自民党の政調会長だった際の話なども交えながら、話していただいた内容をお伝えする。

急激に進んだ円高への対策や、景気後退感が増す日本経済の処方箋について、亀井静香氏に話していただいた

「円高対策は、為替レートの対応だけではできない」

――プラザ合意以降、米国の都合により為替レートが左右され、今また、米国の政策の影響で円高・ドル安になっていることについて、亀井代表はどう思われますか。

それはね、米国だけじゃなくて世界の国が、それぞれ自分の国のエゴイスティックな立場で行動することを、阻止する手段はありません、残念ながらね。こういう場合は、わが国は、断固たる対策をとるべきなんです。

(政府・日銀による為替介入で投じられた)3兆円のね、一時的な介入をしたことろで(円高を)是正できるわけじゃない。一番大事なことは、円高という状況に対して、具体的な対策をどうとっていくか。

一つは、外需頼みではない、内需を大胆に思い切って振興していくということです。今のように、外国の発注する事業を受注することに頑張るのもいいですよ。それもやらなければいかんけれども、日本国内でインフラ整備を含めてどんどんやって、わが国の企業が利益を上げ、内需をきっちりと振興していくという政策をやらないと。

円高対策と言ったってね、為替レートの対応だけではできません。思い切って、円高という逆のふれを使って、ドルを持っているんだから、カリフォルニア1州を買収するぐらいの気持ちで、外国のレアメタルとかレアアースとか世界中にあるでしょ、そういうこと(買収)を大胆に思い切ってやったらいいと思う。

「円高対策と言ったってね、為替レートの対応だけではできません」と語った亀井代表

そういうことを大胆に、世界中でやっていくということをやらないで、円高対策と言っても無理があるんですよ。為替レートを(動かすために)3兆円、ちまちましたことをやっていたって、効果がないんですよ。そういうことじゃなくて、今私が言っているような、具体的な策をどんどん大胆にしていくこと、これを国際社会でやっていく。国内においては、内需を拡大していくということを、やればいい。

――為替介入だけでは、効果がないということですね。ところで、日銀は、「包括的な金融緩和政策」を打ち出しました。亀井代表は、これをどう見ていますか?

リスク商品を買い取るということにまで日銀が踏み出したわけだけれども、金融緩和だけではね、ジャブジャブ円をあふれさせるということだけではね、デフレギャップは解消されない。

やはりこれ(包括的な金融緩和策)は、(日銀が)政府に対して「後は財政出動(が必要)ですよ」と、サインを送ったわけです。政府側が、ちゃんとした景気対策をやっていくということをやらなければ、日銀だけに頼っておって、このデフレギャップから脱することはできません。

――そのデフレギャップですが、この20年間、なぜ脱却できないのでしょうか?

政府が、財務省、かっての大蔵省に乗っているからだ。(政治家が)財務省の手に乗っているから、大蔵省・財務省の役人がやっていることに引きずられている。

――昨年に「政治主導」を掲げる民主党に政権交代したにもかかわらず、そうした状況は続いているんでしょうか?

それはね、掛け声だけじゃ駄目なんですよ。具体的に政治がやらないから駄目なんだ。財務省の手から予算編成権を取り上げていく。簡単よ!

私はかってね、(自民党の)政調会長時代に、橋本財政が大蔵省の手に乗ってやったから駄目だと、(大蔵省の官僚に対し)、「君たちは会社で言えば経理係だ。俺は事業部長だ」と(言った)。「事業部長が経理に合わせて事業をやるわけにはいかん」と(言って)、党で予算を組んでいたから、マイナス成長からプラス成長になったでしょ。

(予算編成権を政治家が獲得するのは)できるんだ、簡単にできる。できると決意をして実行するんだ。(そうすれば官僚は)抵抗はできません。財務省と言えども抵抗できない。それ(予算編成権の獲得)をできないと言うのは、やらないだけ。やらないほうが悪い。やらない罪は政治のほうにある。それを役人のせいにしちゃいけません。

やれば、日本の法制度から何から、役人は抵抗できないようになっているんだから。総理がやると言ったこと、財務大臣がやると言ったこと、権限的に、次官以下局長もノーと言えない。(だが今は)それが逆立ちしている。

亀井代表は、財務省から予算編成権を政治家が取り戻すべきだと主張した

――話を景気対策に戻します。国民新党の代表として、どのように主張していきますか?

連立を組んでいるわけですから、国民新党として、今度の補正予算についても、(景気対策・財政出動が必要だという)その点を主張したわけだけれども、来年度予算に向けて、私が言ったようなことを主張しますよ。

――もし亀井代表が先ほどおっしゃったような対策を行わない場合、どのような事が起きますか?

日本経済はメルトダウンしますね。間違いなく。日本列島はなくなっちゃいます。こんなに激しいデフレスパイラルになっているのは、日本だけでしょ、(だから対策を実施しない場合)どんどん国が縮んでいく。

経済面から、憂国の思いを語ってくれた亀井代表。なぜ日本がデフレスパイラルから抜け出せないかについては、さまざまな要因があると思うが、亀井代表は、官僚主導から抜け出せない政治の責任という側面を強調する。その思いは、国民に届くのだろうか。