アナログ半導体の大手ベンダである米Texas Instruments(米TI)の日本法人である日本テキサス・インスツルメンツ(日本TI)は、10月22日に東京都新宿区の本社会議室で記者会見を開催し、高性能アナログ半導体事業の現状を説明した。

記者会見の説明役となったのは米TIの高性能アナログ(High Performance Analog)事業担当シニア・バイス・プレジデントのスティーブ・アンダーソン氏、日本TIで営業・技術本部マーケティング/応用技術統括部の統括部長を務める山口康和氏、米TIの高性能アナログ事業で高精度アナログ(Precision Analog)事業ユニット担当ゼネラルマネージャーを務めるニック・ハッサン氏である。アンダーソン氏はワールドワイドのTI全体とTIの高性能アナログ事業、山口氏は日本におけるアナログ事業、ハッサン氏はTIの高精度アナログ事業についてそれぞれ、説明した。

米TIの高性能アナログ(High Performance Analog)事業担当シニア・バイス・プレジデントのスティーブ・アンダーソン(Stephen Anderson)氏

日本TIで営業・技術本部マーケティング/応用技術統括部の統括部長を務める山口康和氏

米TIの高性能アナログ事業で高精度アナログ(Precision Analog)事業ユニット担当ゼネラルマネージャーを務めるニック・ハッサン(Nick Hassan)氏

TIワールドワイドの2009年売上高は104.3億ドル。製品分野別ではアナログ半導体が42.7億ドルで41%、組み込みプロセッサが14.7億ドルで14%、ワイヤレス半導体が25.6億ドルで25%、そのほかが21.3億ドルで20%を占める。アンダーソン氏の説明によると、アナログ半導体のシェアは世界市場で14%を占めて首位、組み込みプロセッサは世界市場で11%を占めて2位につけているという。

なお記者会見では説明がなかったが、TIの2009年における地域別売上高は北米が11.4億ドルで11%、アジア(日本を除く)が65.8億ドルで63%、欧州が14.1億ドルで14%、日本が9.8億ドルで9%、そのほかが3.3億ドルで3%となっている(TIのAnnual Reportによる)。なお、アナログ半導体の売上高に占める日本地域の比率は、公表していない。

TIワールドワイドの2009年売上高と製品分野別比率

TIワールドワイドの事業戦略。積極的な企業買収、着実な研究開発(R&D)、新製品の開発による製品系列の拡充、生産能力の拡大、で構成される

TIのアナログ半導体製品ファミリ。品種数が非常に多い

最近の同社の動きの中で積極的なのは、生産能力の拡大である。それも、アナログ半導体の生産能力を拡大しようとする姿勢が目立つ。TIは2009年以前に米国のダラスとヒューストン、ドイツのフライジング、日本の美浦(茨城県)と日出(大分県)に前工程(ウェハ・ファブ)の拠点を設けていた。2010年に入り、4月にはQimondaのドイツ拠点と米国拠点から100台を超える半導体製造装置を購入してアナログ半導体の生産能力を増強すること、7月にはSpansion Japanの会津工場(福島県)を買収すること、10月には中国のCension Semiconductor Manufacturing Companyから成都工場を買収することを発表した。

TIワールドワイドの生産拠点。前工程(ウェハ・ファブ)では今年(2010年)だけで日本の会津と中国の成都が新たに加わった

生産能力の増強手段。2009年は約8億ドルを設備投資に充てた。2010年は前年の1.5倍に相当する約12億ドルを製造設備の増強に投じる予定

買収した会津工場の利用方法。TIが「HPA07」と呼ぶ最新のアナログ半導体プロセスによってアナログ半導体製品を製造する

アナログ半導体プロセス「HPA07」の概要

日本市場におけるアナログ半導体事業では、2009年後半から営業拠点を順次拡大し、それまでの3拠点(東京、名古屋、大阪)から、11拠点に拡大したことを訴求した。新規に設立したのは以下の営業拠点である。

2009年9月:仙台、松本、金沢、福岡
2009年10月:京都
2009年11月:広島
2009年12月:さいたま
2010年2月:名古屋(拡張)
2010年7月:横浜

日本TIの営業拠点と生産拠点

このほか、半導体の販売代理店と提携してオンラインの小口販売サービスを開始することを明らかにした。1個単位の小口注文にも応えられるようにする。サービスの詳細は今後、公表される見込みだ。