10月20日に米Appleが開催した「Back to the Mac」イベントで、同社は「iLife '11」「FaceTime for Mac」「MacBook Air」を発表、Mac OS X Lionの一部機能のプレビューを披露した。各製品については、マイコミジャーナルでも4本のニュース記事と2本のレポートで報じている。ここではキーノート全体の流れをふり返ると共に、もう一度イベントのテーマ「Back to the Mac」の意味を考えてみる。

2年ぶりの秋のMacスペシャルイベントは「Back to the Mac」

今回のキーノートはCEOのSteve Jobs氏のひとり舞台ではなく、各製品を担当するエグゼクティブや開発責任者と分担。State of the MacはCOOのTim Cook氏が担当した

キーノートはMacの現状を説明する「State of the Mac」から始まった。以下はCOOのTim Cook氏が示した2010年度(2009年10月-2010年9月)のMacのデータだ。

  • 2010年度のMacの販売台数は1,370万台、5年前の3倍に成長。
  • Macの売上高は220億ドル。これはAppleの事業全体の33%。
  • Macの売上げだけでForune 500の110位に相当。
  • インストールベースで5,000万台到達間近。
  • 7月-9月のMacの成長率は前年同期比27%増、PCの2.5倍のペース。

18日(米国時間)にAppleが発表した2010年度第4四半期(2010年7月-9月)決算は売上高・純利益ともに過去最高だった。ちなみに同社は2010年度に3度も四半期ベースで売上高の記録を更新している。その立役者はタブレットという新しい製品カテゴリを確立したiPadであり、世界の隅々にまで市場を広げるiPhoneだ。Appleの2010年度を一言で言い表すと「iPadとiPhone 4で躍進した年」になる。一方でMacはスポットライトの陰に追いやられた感がある。話題をさらわれただけではなく、WWDCも今年はiOSの開発者カンファレンスと化した。だが、あまり目立っていないものの、Cook氏が示したようにMacも好調に売上げを伸ばしている。

過去5年間のインストールベースのMacの伸び

Macは、ANSIのユーザー満足度ランキング、Consumer Reportsのカスタマーサポートランキング、PCWorldの信頼性調査で1位を獲得。PC Magazineのリーダース・チョイスに選ばれている

2010年度がiPadとiPhone 4の1年になったのは、2009年8月リリースのSnow LeopardでMac OS Xがユーザーを十分に満足させられるレベルに到達したからだ。そのため2010年度にAppleはMac OSを離れてiOSとiOSデバイスの推進に専念でき、iPadやiPhone 4の躍進を実現した。iOSデバイスはPCもサポートするが、MobileMeとの連携などMacとの組み合わせでユーザーはよりすぐれた利用体験を得られる。Mac OSとiOSは1つのプラットフォームとして相乗効果を生み出しており、Mac OS Xに大きな動きはなかった同時期にもMac市場は拡大した。

2011年度、今度はMacが話題をさらう順番だ。2010年度にMac OS Xは表向き歩みを止めていたが、Appleが停滞していたわけではない。OS Xをベースに2007年にiPhone OSが誕生し、その進化が2010年度のiPadとiPhone 4に結実した。AppleがiPadの成功から学んだことを、今度はMac OS XやMacに活かす。だから今回のMac主役のスペシャルイベントを「Back to the Mac」と名付けた。

iOSとiPadの成功から受けた刺激や学んだことを、Mac OSとMacに活かす