江ノ電由比ヶ浜駅から、海とは反対方面へ歩くこと約500m。車通りの多い信号を渡り住宅街の間を抜けると、細い道は高台へ至る坂へ続く。こんもりと木の茂る緩やかな坂を登った所には、青い屋根の洋館『鎌倉文学館』が湘南の海を見下ろしている。

鎌倉文学館の建物は、国の登録有形文化財に指定されている

「旧前田侯爵家別邸」は立地も建築も訪れる価値あり

鎌倉文学館は、鎌倉にゆかりある文学者の原稿、著書、愛用品などの資料を収集保存・展示する施設として1985年(昭和60年)に開館した。もともとは1890年(明治23年)頃に加賀藩主であった前田侯爵家15代当主前田利嗣氏が別邸「聴涛山荘」を建てた地である。その後、火災や震災により当時の建物は失われたが、1936年(昭和11年)に16代当主前田利為氏によって現在の形に改築された。

入り口で靴を脱いで入館。屋内はカーペットが敷かれている。使われているドアや窓、照明器具などは当時のまま

ステンドグラスも当時のもの。現在ではこの色を再現することは難しいそうだ

建物は木造3階建て(3階は一般公開されていない)。洋館と言っても、瓦の切妻屋根に畳の座敷もあるという和の雰囲気を持つ、独特のデザインだ。戦後はデンマーク公使や当時の佐藤榮作総理などがこの館を借り、別荘として使用していたという。その後、1983年(昭和58年)に前田家より鎌倉市へこの別邸が寄贈され、2年後の1985年(昭和60年)に永井龍男氏を初代館長として同館がオープンした。鎌倉文学館は、この建築物をそのまま展示室に使用している。室内には大きな展示ケースなどが設置されているが、窓やドアなどからは当時の雰囲気を感じることができる。

この展示棚はかつて配膳用の棚として使用されていたという

2階の一番奥は「談話室」。落ち着いた雰囲気の部屋で一休み

談話室の前の一部のみテラスが開放されている

海を臨むテラスからの眺め

建物の南側には広い庭があり、コンサートや野点が行われることもある。また傾斜を降りた所には200株以上のバラが植えられたバラ園があり、毎年5月に「バラまつり」が開催される。「鎌倉」「流鏑馬」など鎌倉にちなんだ名前の品種もあるそうだ。

庭には弁当の持ち込みも可能。ただし、トンビが来るのでご注意を

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