【レポート】
マイクロソフトは10月10、11日の2日間、Imagine Cupに参加する学生向けのスペシャルトレーニングを開催した。本稿では、アイデアの発想を強化する方法について解説された初日の模様を簡単に紹介しよう。
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Imagine Cupは、2003年から開催されている「テクノロジーを使って今日の世界に変化を起こさせたいという情熱、想像力をもった学生を応援する、全世界を対象とした技術コンテスト」である。「ソフトウェアデザイン」、「組み込み開発」、「ゲームデザイン」、「デジタルメディア」、「ITチャレンジ」の5部門が設けられており、16歳以上(本大会開催時)の学生ならだれでも参加することができる。ゲームデザイン、デジタルメディア、ITチャレンジの3部門は米国本部での直接審査により世界大会進出者が決まり、ソフトウェアデザイン、組み込み開発の2部門は日本大会を勝ち抜いた各1チームが世界大会に進出することになる。
2011年大会は来年7月にニューヨークで開催される予定で、すでにエントリーが受け付けられている。日本大会が開催されるソフトウェアデザイン部門および組み込み開発部門に関しては、2011年1月末に受け付けが締め切られ、応募素材(ソリューションを説明する文書、パワーポイント資料、プレゼンテーションビデオ)による1次審査が行われる。その後、3月に1次審査を勝ち抜いた3チームによるプレゼンテーションが行われ、優勝チームが本大会への参加資格を得る。
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ポーランドで開催された2010年大会の模様 |
日本チームの過去最高成績は2006年のファイナル(6チーム)進出。マイクロソフトではさらなる好成績を目指しており、「Imagine Cupで上位に入るには、アイデアの部分が非常に重要」(マイクロソフト デベロッパー&プラットフォーム統括本部 アカデミックテクノロジー推進部 アカデミックエバンジェリズムグループ アカデミックエバンジェリスト 渡辺弘之氏)との認識から、今回のスペシャルトレーニング開催に至った。
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東京大学 知の構造化センター 助教の中山浩太郎氏 |
2006年のファイナル進出チームに所属していた東京大学 知の構造化センター 助教(当時、大阪大学大学院 情報科学研究科 博士課程)の中山浩太郎氏は、今回のスペシャルトレーニングの背景について、「Imagine Cupで常に好成績を収めている国は、先輩がノウハウや経験を後輩に伝えている。日本においてそうした状況を作るのが私の義務だと思っている」と説明。さらに、「去年からImagine Cup世界大会の審査員を務めているが、日本はアイデアの部分が弱い。それを補うためには、アイデアの"打率"を上げるための方法論を身に付けなければならない」と語り、この目的を果たすために知の構造化センターにおける教育プログラム担当メンバーに協力を要請したことを明かした。
スペシャルトレーニングの初日にあたる10日は、「クイック思考な日」と題し、「デザイン思考を用いた問題解決技術」をテーマとしたワークショップが開催された。
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東京大学大学院 工学系研究科 先端学際工学専攻の横田幸信氏 |
講師を務めたのは、東京大学 i.schoolやMotivation Makerなどにおいて、さまざまな教育プログラムに携わっている東京大学大学院 工学系研究科 先端学際工学専攻の横田幸信氏。横田氏は、ワークショップ参加者に対して事前に、現代の社会問題を100個ならべた資料を配布したうえで、「101個目~103個目の問題と解決策を考えてきてほしい」という宿題を課しており、ワークショップではグループ内でその宿題を発表することからスタートした。
発表が終わると横田氏は、「104個目の問題を5分以内に考えて発表してほしい」と次の課題を提示。学生たちがざわめきながら取り組む様子を見守った。
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クリエイティビティと直感/論理思考の関係 |
この課題が終わると、右のようなグラフを描きながら、「クリエイティビティの高いアイデアを出すためには、論理思考に偏りすぎても、直感に頼りすぎてもいけない。両方を行き来しながら、その質を高めていくことになる」と解説。そのうえで、「5分間という時間の制限を設けることで、数分経っただけで焦りが生まれ、違う発想をするようになる。論理的に追っていくだけでは間に合わないので、違うものはないかと直感的に探し始めたり、そこで出てきた新しいアイデアに触発されて最初のアイデアを違う切り口から考えたりする。こうしたプロセスによりアイデアが深まっていくことが体験できたのではないか」とねらいと効果を説明し、学生に対して効率的にものごとを発想させる方法を伝えた。
横田氏によると、イノベーションを遂げるには方法論のみならず、取り組む"姿勢"も大切だという。
その具体例として、「異なる分野の人や異なる考えを持つ人の意見を聞くときは、その意見だけに着目するのでなく、『なぜこんなことを言っているのだろうか』と思考プロセスを考えると何らかの気づきが得られることが多い」といった話や、「アイデアを出す際にはポジティブに解釈することが大切。大量のアイデアを出す段階では、『十中八九はダメなもの』と考えるのではなく、『十中一、二は生きてくるはず』と考えることで、ワクワク感が生まれ前向きに取り組める」といった話を披露した。
さらに、「心の中にモヤモヤとアイデアを持った状態で他人の話を聞くと、新しいアイデアが次々と浮かぶことがある」ことを紹介したうえで、各学生の問題と解決策を書き込んだ用紙を分離させ、問題部分だけを集めてシャッフルして配布。全員に「他人が見つけた問題」と「自分が出した問題に対する解決策」という、関連性のない問題と解決策の組み合わせを持たせ、「自分が考え出した問題に対する解決策やその視点を、他人が考えた関係のない問題に適用して、新しいアイデアが生まれないか試してほしい」と次の課題を提示し、さらなる強制発想を体験させた。
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最後の課題では、以上のようにして蓄積された個人のアイデアを、グループの力によってさらに増幅/洗練させる方法が示された。
横田氏は、グループ内で出た類似する問題をひとくくりにし、各分類に名前を付けさせてアイデアの抽象化を行うよう指示。さらに、その分類結果を基にグループとしての問題や解決策を再度具体的に考えさせた。
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この結果、最終的に誰もが宿題の時点では考えつかなかった問題と解決策が生まれ、参加者全員が発想が広がったことを実感。横田氏はそうした状況を整理しながら振り返ったうえで、「宿題で考えてもらったアイデアの中に最後まで残ったものがないということは、最初の段階から80点や90点のアイデアを出す必要はないということ。60点レベルをたくさん用意して、みんなで積み上げるのが効率的であることがわかる」と、効率的な発想のヒントを提示した。
横田氏は初日のセミナーの最後に、Imagine Cupを意識したアドバイスとして、「みんなでアイデアを作るということが非常に大切。最終プレゼンテーションでも『この人たちはずっとこの事業を続けていくんだろうな』と思ってもらえないと強い印象は残せない。また、最後にものを言うのは執念。顔では笑っていても目は真剣でなければならない」と語り、学生に対してエールを送った。
なお、これに続く11日目は、「じっくり思考な日」と題し、「人間中心ビジネスアイディア作成」をテーマに、問題を分析する方法や技術を生かた解説策を見つける方法について模索するグループワークが行われた。
過去最高の応募が見込まれている来年のImagine Cup 日本大会。数だけでなく、質の面でも、大きな飛躍が期待できそうだ。
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