清水女流王将の応手は7七銀

清水女流王将は、銀を王様に近づけ守りを固めました。これがわずかに緩んだ一手で、結果的には敗着となりました。この局面はもう「あから」の必勝になっているのです。 ここから先は一方的な展開になり、およそ20手後に清水女流王将が投了を告げました。

投了図

「あから」の陣地が全くの無傷で残り、これだけ見るとコンピューターの圧勝に見えてしまいます。しかし、序盤の駆け引きから緊張感のある中盤の応酬と、両者持ち味を出した良い将棋だったと思います。

ただやはり印象深いのは、勝負を決した5七角でした。最終的に大差になったのもあの一手ゆえです。「あから」があの手を指せるのは、人間の様に「相手の攻めを恐れる」という感情を持たずに、単純に計算して攻めることができるからだと思います。一方、清水女流王将が応手を間違ってしまったのは、時間のない状態で意外な手を指された動揺からだと思います。この対局は、心を持たないコンピューターの強さと、心を持つ人間の弱さが勝敗を分けるという、我々人間にとってはややビターな結果を示したのではないでしょうか。

しかし、コンピューター将棋はまだまだ発展途上であり、必勝のプログラムがあるワケではありません。

また、コンピューターには心がないといっても個性があり、今回「あから」に搭載された4つのプログラムの合議も、意見が割れた局面はいくつもあったそうです。個性があるということは、ある種のクセや傾向があるということですから、人間の側も対コンピューター対策を練る余地は充分にあるのです。

今後も今回のようなコンピューター将棋とプロ棋士の対局は行われるでしょう。今回、女流棋士のトップが敗れたことで、次は男性棋士、果ては名人や竜王といった棋界のトップが、コンピューターと対戦する日もそう遠くないことのように思えます。人間の意地とコンピューターの進化がぶつかり合い、さらなる名勝負が生まれることを期待せずにはいられません。

罪山罰太郎

人気ブログ「俺の邪悪なメモ」を運営するブロガー。コンピューター将棋の歴史や羽生善治名人の名手を解説する記事が話題になった。ブログでは、将棋の他にも、映画、政治、ネットウォッチ、はてはアダルトグッズまで、幅広いジャンルの記事を扱っている。