既報の通り、KDDIと沖縄セルラーは11月下旬からAndroid搭載スマートフォン「IS03」を発売する。おサイフケータイやワンセグ、Cメールといった国内固有のサービスにも対応し、従来の携帯電話と同様の機能を備えつつ、Android搭載スマートフォンならではのGoogleサービスとの連携やインターネットとの高い親和性も実現した。KDDI 代表取締役執行役員専務田中孝司氏は、「待ちに待ったKDDIの新しいスマートフォン」と話す。

KDDI 代表取締役執行役員専務の田中孝司氏(左)とシャープ 執行役員 情報通信事業統轄 兼 通信システム事業本部長の大畠昌巳氏

IS03は、auの初代Android端末「IS01」と同じく、シャープが開発したスマートフォン。IS01が横長の5インチの画面にキーボードを搭載して通常の携帯にプラスした2台目需要を想定していたのに対し、IS03は3.5型960×640(WVGA) NEWモバイルASV液晶を搭載し、ハードウェアキーボードのない一般的なスマートフォンスタイル採用。通常の携帯を置き換えるような「1台目の端末」として利用できる「携帯の才能を引き継ぐスマートフォン」(田中氏)だという。

IS03(シャープ製)

「Android au」というロゴでAndroidへの注力を示し、「反転攻勢」(田中氏)を仕掛ける

携帯の機能を持ったスマートフォンが少ないため、携帯とスマートフォンの2台持ちが多いという

従来はあまり搭載されてこなかった機能を盛り込んだ。特におサイフケータイは今回初めての採用だ

IS03には、従来はなかったFeliCaチップを内蔵したことで、おサイフケータイとしての利用を実現。現時点では、11月下旬時点でモバイルWAON、ぐるなびタッチ、ビックカメラ・ヨドバシカメラのポイントカードが利用可能。その後12月から翌年にかけてクイックペイやナナコ、モバイルSuica、Edyなどに順次対応する。おサイフケータイの登場直後も、順次利用サービスが拡大していたが、ちょうど同じような状況だ。

注力するのはAndroid。すでに米国のスマートフォン市場ではiPhone/iPadなどに搭載されるiOSのシェアを抜き、世界の携帯全体の市場でも通常の携帯に使われるSymbianに次ぐ第2位になると予測されているとした。ただ、田中氏自身はAndroid以外のWindows Mobile/Phoneなどに関しても積極的に取り組む姿勢を見せている

IS01と同様に、ワンセグや赤外線通信にも対応。Flash Lite 4.0を搭載し、Flashを使ったサイトも閲覧可能。緊急地震速報にも対応する。携帯メールのEZwebメールやデコレーションメール、SMSのCメールもサポートする。カメラは、昨今の携帯のトレンド通り高画素化しており、有効957万画素のCCDカメラを搭載する。

やや大きめだが、男性の手のひらなら収まるサイズ。背面はやや曲面となっており、手のひらにフィットする形だ

UIはocean observationsが開発したもの

本体背面にはカメラを搭載。LEDフラッシュも備えるほか、赤外線、おサイフケータイのマークも配置されている。カメラは画像処理エンジン「ProPix」を搭載し、720pのHD動画の撮影も可能。笑顔検出やシーン自動判別などの機能も備えており、高機能だ

画面の下部には、Android端末ではおなじみのメニューボタン、ホームボタン、戻るボタン、検索ボタンを配置。この部分は低消費電力のメモリ液晶となっており、画面がオフの場合は時計や着信メール、地震速報などの情報が表示される「コンビネーション液晶」(シャープ 情報通信事業統轄兼通信システム事業本部長 大畠昌巳氏)を初めて採用している。

液晶下部にあるのがメモリ液晶。画面オン時は4つのボタンとして機能し、画面オフ時は時計などの常時表示が可能

本体を横にするとアイコンも横になる

本体カラーは3色。ブラックはややマットな手触り

本体下部にストラップホール

右上にあるワンセグ用アンテナ

アプリとしては、歩行者ナビの「au oneナビウォーク」を搭載。UIを刷新したほか、自転車経路検索や時刻表表示などの機能も追加されている。今後、IS01に搭載されていたアプリもバージョンアップで機能追加するほか、自動車用のナビアプリも今後新たに追加する。

Googleのアプリ配信プラットフォーム「Android Market」に対応。さまざまなアプリをインストールして機能拡張できる

auがオススメするアプリなどを配信するau one Marketも用意する

「auといえばLISMO」(田中氏)という位置づけの音楽配信サービス「LISMO!」対応アプリも搭載。「スマートフォンでも音楽サービスを、気合いを入れてやっていく」(同)考えだ。

LISMO!のアプリ画面

おサイフケータイ対応アプリの管理画面

Android端末ではおなじみの、画面上から表示する通知領域

au oneナビウォークの画面。タブで区切られた新しいUIを採用

地図は画面上部から下にスライドさせるようにして表示する。電池の消耗を防ぐため、この時点で位置情報の取得を行うらしい。無線LAN、3G基地局、GPSといった情報を測位するため、測位の速度はAndroid標準のGoogleマップと同程度だという

文字入力画面。なお、IMEとしてはiWnnを採用している

全体のUIは、IS01と同じく「ocean observations」が開発したもので、IS01の横長表示に対して縦長表示となるIS03向けにカスタマイズされている。ボディカラーはオレンジ、ホワイト、ブラックの3色。側面にはカメラボタン、電源ボタン、本体下部にはストラップホールも設けられている。

Webブラウザでマイコミジャーナルを表示したところ。解像度が高いため、一度に表示される情報量が多い。画面をダブルタッチして、その場所が拡大表示される

同じようにiPhone 4と同じサイトの表示を比較

手元にあったAndroid端末Nexus One(3.7型800×480液晶)、iPhone 4(3.5型960×640)、IS03(3.5型960×640、Dell Streak(5型800×480)。重ねてみると思ったよりも厚みがあるのがIS03

田中氏は、「auの本気度を"Android au"として進めていきたい」と話す。10月18日に通常の携帯電話を含む発表会を改めて開催し、その場でさらにスマートフォンを発表する予定だという。さらに田中氏は、「言おうかどうか迷った」と前置きしつつ、18日の発表会では「禁断のアプリケーションもあわせて発表する」という。それがどういったアプリかは明らかにされなかったが、「auの本気度を問うために発表する」とのことだ。

次期社長として就任する田中氏は、これまでUQコミュニケーションズで社長を務めており、auのスマートフォン事業については率直に遅れを認めつつ、IS03については、企画自体は長く煮詰めて、納得する機能を盛り込めるまで開発を進めてきたと語る。「シャープの協力を得ていいものができたと思う。会社のすべてのリソースを使ってIS03をみなさんに知ってもらいたい、という気持ちでやっていく。秋商戦で、auの本気度を見てもらいたい」と今後の抱負を述べた。

おサイフケータイ関連に関しても18日に何らかの発表を行う予定だ。KDDI コンシューマ事業本部サービス・プロダクト企画本部長の増田和彦氏は、「(従来の携帯である)フィーチャーフォンは、各キャリアの製品はエクスクルーシブ(排他的)だが、もはやそういった時代ではない」と指摘。18日にはそのあたりも踏まえた発表がある見込みだ。

また、IS03はAndroid OSとしてAndroid 2.1(Eclair)を搭載しているが、Live Wallpaperや音声認識、マルチタッチなどをサポートしている。ただ、現在の最新版であるAndroid 2.2(Froyo)を搭載していないため、Flash Player 10を含む一部のアプリが動作しない。最新版を搭載しなかった点について田中氏は、おサイフケータイなどの日本固有の機能の搭載を優先したため、としているものの、Froyoへのバージョンアップに関しては確約。提供時期は明らかにされなかったが、「発売後半年といったスパンでは遅すぎる」(田中氏)との認識を示しており、早期の登場が期待される。

なお、今回の会見はシャープとの共同会見という形を取った。会見に出席したシャープ 執行役員 情報通信事業統轄 兼 通信システム事業本部長の大畠昌巳氏は、世界初の液晶電卓から電子手帳、ザウルスといったモバイル機器、カラー液晶やカメラ付き携帯、テレビブランドを冠したAQUOSケータイ、太陽電池を搭載したソーラーフォンなど、「常にお客様の目線で、ニーズを先進的に、半歩先取りする形で商品化してきた」と自負を示し、今回のIS03に関しては、「これまでの携帯ユーザーを徹底的に分析し、ユーザーのニーズを実現すべく、シャープのモバイル機器に対する物作りのDNAの粋を集めたもの」と自信を見せた。

IS03は、「本当に1台持ち(のため)の機能や気配りが入っている」と田中氏。ユーザーが1台持ちで必要な機能は何かを調査して機能を盛り込んできたということで、田中氏は、「やっと1台持ちのスマートフォンが出てきた」と語る。日本固有の機能とスマートフォンを融合させた端末に自信を見せている。

なお、IS03は5日から千葉県・幕張メッセで開催される展示会「CEATEC 2010」のKDDIとシャープのブースでそれぞれ出展するほか、東京・原宿のKDDIデザイニングスタジオでも実機を展示するということだ。