9月27日、Linuxをテーマにした技術カンファレンス「LinuxCon Japan 2010」が東京都港区の六本木アカデミーヒルズにて開幕した。

LinuxCon Japan 2010では、昨年同様、世界中からLinuxカーネルや周辺技術の開発責任者/著名エンジニアが参集。3日間で合計70以上のセッションが催され、Linux関連技術の詳細や最新動向が解説されている。

ここでは、初日に行われたオープニングセッションの模様を簡単に紹介しよう。

Linuxが秘める可能性

Linux Foundation, Executive DirectorのJim Zemlin氏

「Linuxは今や、OSという枠を超え、未来のコンピューティング環境を構築するための基盤となりはじめている。そうしたポジションを築けたのも2010年に遂げた大きな進化があったため。2010年は、Linux、ひいてはITの新しい時代の始まりと言ってよいだろう」

オープニングセッションの最初のスピーカーを務めたLinux Foundation, Executive DirectorのJim Zemlin氏は、このような言葉でLinuxCon Japan 2010をスタートさせた。

氏は、LinuxCon Japan 2010のベースとなるセッションとして、将来のコンピューティング環境に言及したうえで、Linuxが今後どういった価値を提供できるのかについて簡単に説明した。

すべてのデバイスでLinuxが組み込まれる時代に

Zemlin氏がまず語ったのはLinuxのビジョンである。冒頭、IT業界の過去と現在を振り返り、「Microsoftは20年前、すべてのコンピュータでWindowsを動作させるという目標を持って事業を開始し、それを概ね達成した。しかし、現在はPCに限らず、さまざまなデバイスがネットワークにつながっており、今後その種類はますます増えていくことになる。これにより、Microsoftが築いてきた時代が終焉を迎え、新たな時代が始まることになる」と説明。そのうえで、「Linuxは、その新時代において、すべてのデバイスに導入されることを目指している」との目標を語った。

氏はさらに、Linuxが証券取引システムや航空管制システムなどの極度に高い信頼性が求められるシステムから、モバイルデバイス、車載システム、スマートメーターなどの端末まで、多岐にわたり採用されていることを紹介。今後は、「カメラや照明、医療機器にもIPアドレスを持たせてネットワークにつなげられるようになる」との見方を示し、「そうなると、数百億ものトランザクションが発生するような環境の中で、データを収集し、分析し、さまざまなデバイスにデータを即時配信できるような環境を築く必要がある」と説明。さらに、「Linuxは、こうした環境すべてにおいて有効である」と語った。

講演で使われたスライド。Linuxは現在のITトレンドのすべてにおいて中心にあるという

Google、Amazon、Facebookの成功を支えるコストメリット

氏の講演では、Linuxの大きなメリットの1つである生産性の高さやコスト効率についても強調された。「Linuxではコミュニティが力を合わせて開発を進めており、それを自由に使うことができる。携帯電話が平均14ヶ月で買い換えられる現在、一般的なソフトウェアに共通の機能を自分たちで開発しているようでは改修が間に合わないし、コストも圧倒的に高くつく」とコメント。「IT産業全体がサービス型ビジネスに向かっている現在、クローズドモデルでは追いつかなくなり、コラボレーションモデルが採用されはじめている」と続けた。

そのうえで、GoogleやAmazon、Facebookといった導入企業を挙げて「彼らがもし.NET Frameworkを使っていたら今のような成功が得られただろうか」と問いかけ、「彼らの成功から言えることは、サービス型ビジネスをLinuxが駆動しているということ」と説明。「今や150億ドルのエコシステムに成長したLinuxだが、今後もさらに広がっていくだろう。皆さんも、Linuxにまつわる技術動向を注視し、イノベーションに活用してほしい」と、メッセージを投げて降壇した。