【レポート】

ビクター、iPod/iPhone対応コンポ「EX-S1」発表会で音響技術の詳細を解説

日本ビクターは17日、iPod/iPhone対応コンポ「EX-S1」を発表した。十月上旬発売予定で、価格はオープン。店頭予想価格は45,000円前後となる。これに合わせて開催された製品発表会では、同製品の特徴の1つであるウッドコーンスピーカーについて、素材選定の理由から音響構造についてまで、詳細な解説を行った。なお、製品については、すでに別稿で紹介しているので、そちらを参照していただきたい。

「EX-S1」

カラーバリエーションはそれぞれ異なるインテリアを想定

発表会では、まず商品の概要が紹介された後、デザインを担当した吉村智至氏が「EX-S1」のデザインについて解説。「ライフスタイルに心地よくフィット」というデザインテーマを紹介し、それを実現するためのデザインポイントとして、「インテリアに心地よくフィットする低いプロポーション」「心地よい存在感が漂う、洗練されたやさしいフォルム」「4つのインテリアスタイルに合わせたカラー」の3点を挙げた。

設定されたカラーバリエーションについては、それぞれ想定しているインテリアのイメージを紹介。ナチュラルウッドは木肌のぬくもりを感じるナチュラルなインテリア、ホワイトが洗練されたシンプルなインテリア、ブラックが落ち着いた色調のモダンなインテリア、ピンクがスイートカジュアルなインテリアにフィットするようにデザインしたものだと語った。

デザインを担当した、経営企画部 デザイングループ クリエイティブスタジオ デザイナーの吉村智至氏

カラーバリエーションは4色。上段がブラック、中段がナチュラルウッド、下段左がピンク、下段右がホワイト

なぜウッドコーンスピーカーなのか

ホーム・エンタテインメント事業部 パーソナルAV統括部 技術部 開発グループ シニアエンジニアリングスペシャリストの今村智氏

次に、開発を担当した今村智氏が音響面の詳細について、なぜビクターが"ウッドコーン"という木材を振動板の素材に採用しているのかという点から解説した。

まず、一般的な振動板の素材が紙(コーン紙)であり、原材料である木材から紙へと加工する際にもっとも重要な成分が失われるからというのが、ビクターが"ウッドコーン"スピーカーとして木を振動板の素材に使用している理由。木材から紙へと加工する際には、骨組みにあたるセルロース/ヘミセルロースの間を充填するリグニンが失われる。そのリグニンが失われていない木材こそがスピーカーの振動板として最適だという。

木材は音響素材として、自然な減衰特性に起因する心地よい響き、伝搬速度が高く適度な内部損失を持つという理想に近い物性値、繊維方向が速く直交方向は遅い異方性の伝搬速度という特徴を持つ。これらの木材の特性が、まさにスピーカー振動板の素材として最適だというのだ。

鉄筋コンクリートに例えて、木材のリグニンが音響的に重要であることを説明

素材ごとの響き方の違いを確認するため、木、樹脂、金属などの素材をその場で叩いてみせ、その音を確認した

ではなぜ、かつては木材をスピーカー振動板に採用しなかったのかというと、その理由は製造上の問題にある。木材を振動板に加工するには、まず丸太状の樺の木から、桂剥きの要領で薄板シートを作成する。その薄板をカットした後、プレス機にかけることで成型するのだが、この際にカーブのきつい部分に割れが生じてしまうことが難点だったというのだ。ビクターはこの問題を、なんと薄板を日本酒に含浸することによって解決。日本酒に含まれるグリセリンやブドウ糖が保湿効果を持つため、高温のプレス機にかけても乾燥せず、割れが生じなくなるのだという。

次に問題となったのが、高温・高湿の環境に置かれたときに発生する丸まりなどの変形。これは木材専用の熱硬化性樹脂を利用して形状を固定することになったというが、木の音色を残しつつ形状の固定を図るために約4年をかけてさまざまな条件を研究。ようやく2003年11月に初のウッドコーンスピーカー採用のシステムコンポ「EX-A1」を発売するに至ったという。

成型時に発生する割れが第一の難関。これは薄板を日本酒に含浸することで解決

高音・高湿により変形が発生する問題に対しては、熱硬化性樹脂で形状を固定した

ウッドコーンのポテンシャルを活かす製品設計

このようなして開発されたウッドコーンであるが、今回の「EX-S1」の開発にあたっては、そのポテンシャルを活かすための設計を行ったという。

この価格帯のスピーカーでは、エンクロージャー内部にはなにもなく、スピーカーユニットだけを収めてあるのが通例だという。しかし「EX-S1」では、コスト面の制約を受けながらも、補強桟や補強板、横長のデザインの中で上下方向の音の広がりを確保するためのチェリー響棒といった構造上の工夫を凝らしている。

構造の工夫でクオリティの高い響きを実現

バッフル面外側に設置されたチェリー響棒

V字型の補強桟と内側のチェリー響棒が確認できる

一見普通のスピーカーユニットだが、実際にはさまざまなこだわりが投入されている

スピーカーユニットについても、低音までリニアに再生できるよう、ボールピース上部の銅キャップ、4層ボイスコイル、不均等コルゲーション形状のダンパーなどを採用。このほか、配線ワイヤーやスピーカーケーブルも高品位なものを選択し、アンプ部にも高音質の部材を使用したという。

ちなみに今回の発表会は都内のレストランの一室で行われ、デモンストレーション用の機材はテーブルキッチンの上に設置された状態。そういった実際に使われるのに近いシチュエーションでも高音質の再生が可能だという点を、今村氏は最後に強調した。

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