"最近、なんだか無口になったなあ。そういえば、しばらく笑った顔を見てない気がする"――。目の前のパートナーに対し、ふとそんなことを感じる時。視線を上に向けると、髪には白いものがチラホラ。"あれ、急に老けた!?"――。実はソレ、夫が発するSOSのサインかも……。

いまだ出口の見えない不況。ビジネスマンを取り巻く環境は、厳しさを増すばかり。収入ダウンやリストラと背中合わせのなか、日々結果を求められ、世の夫たちは心身ともに疲弊気味。

夫のパワーダウンは、イコール家計のパワーダウンを意味してしまう。大切なパートナーの身体ももちろん心配だけど、家計を切り盛りする身としては、そちらのパワーダウンも気にかかるのがホンネ。できれば共働きで家計を支えたいが、妊娠や育児で"働けない期間"だってある。そんな妻たちにとって、「稼げる大黒柱」というのは、やっぱり心強いもの。ここはひとつ、夫に奮起してもらい、ガッチリ家計を守りたい。そのためには、夫が安心して能力を伸ばせる環境を作り、ワンランク上の"デキる男"へと押し上げる「妻の育成力」が不可欠だ。

あなたは"育成妻"になれてますか? それとも…

"育て上手な妻"の筆頭格といえば、なんといってもイチロー選手の妻、弓子夫人だろう。人気アナウンサーという華やかなキャリアを手放し、夫ともにアメリカへ――。以来、表舞台に出ることもなく、完全なサポートに徹している。夫の試合観戦中でも、炊き立てのご飯を一番おいしい状態で食べさせるため、終了時間を逆算して帰途につき、朝は欠かさず、特製カレーを用意する。

そんな献身的な弓子夫人を「妻であり、母であり、妹であり、恋人であり、戦友でもある」と評したイチロー。9年連続200本安打を達成した時には「この記録は彼女との共同作品」と胸を張った。

夫の才能に依存せず、自らの努力を怠らない。ぶれない姿勢が夫のモチベーションを保ち、さらには夫婦の絆も強くする。最大の理解者であり、もっとも頼れる存在が家のなかにいるというのは、何にも代えがたい援軍になるはずだ。

ビジネス社会やスポーツ界、歴史上の人物を見ても、成功者や優秀なリーダーの影には、必ず「名参謀」と呼ばれるパートナーが存在する。孤独な立場のリーダーが心を許し、絶大な信頼を置くいわゆる「女房役」。リーダーが能力をいかんなく発揮できる場を整え、時に成功への道筋を照らし出す。そんな「女房役」の役割をホンモノの女房が少しでも担えれば、夫にとってこんな心強いことはない。

賢い"育成妻"になって夫を伸ばす「保育」ならぬ、「夫育」プロジェクト。根底にあるスタンスは、両者とも同じ。程度の差こそあれ、母性というものを本能的に備える女性だから、やり方を踏まえれば、上手なナビゲートが可能なはず。ましてや相手は、もっとも近い存在。SOSをキャッチできるのも妻だからこそ――。

とはいえ、自我の確立していない子供と違い、夫はすでに価値観の出来上がった立派な大人。しかも、「男性は女性より感情が複雑でナイーブ」という研究結果もあるらしい。確かに"他人にしゃべって思いきり泣いて、いざ復活!"という女性お得意の現実的な切り替えテクを持ちづらい男性陣。弱さを全開にするわけにもいかず、追い詰められてしまうことも少なくない。7:3で自殺率が高いのも男性のほう。頑張ってもらいたい一心で、感情まかせにハッパをかけてばかりでは、夫婦関係に溝を作ってしまうことに。「外に出れば、男には7人の敵がいる」ということわざがあるが、その8人目が妻だった……なんて、シャレにもならない。

そのためには、妻自身もしっかりと目標を持ち、成長する必要がある。夫婦は合わせ鏡。また、こんな名言もある。

「夫婦というものは、それを構成する二人の人間のうち、低いほうの水準で生活するものである」(フランスの小説家 アンドレ・モロア)。ううむ、なかなか耳の痛いこと……。

家族の明るい未来のために、愛あるサポート&プロデュース――。なんだか胡散臭い広告のキャッチコピーのようになってしまったが、夫がいきいきと仕事に取り組め、結果、家計も潤い、夫婦の絆も深まる。妻の「育成力」は、幸せのカギともいえるだろう。 では、具体的にはいったいどうすればいいのか。詳しい方法は、次回へ!

チェックテスト

まずはアナタの「育成妻度」をチェック。"YES"の項目をカウントしてみてください。

出世や成功は、夫の実力次第だと思う。
家では、自分が一方的にしゃべっていることが多い。
正直、夫は自分を下に見ている気がする。
夫の"将来の夢"をよく知らない。
男が仕事のグチを家庭に持ち込むべきではない。
他人と夫を比べることが多い。
夫婦ケンカで負けたくないあまり、感情的になって夫のコンプレックスを引き合いに出すことがある。
自分の身内や子供の前で、夫をバカにすることがある。
夫の靴が汚れているかどうか気にしたことがない。
褒めるよりも、ダメだしをする回数のほうが多い。

YESが0の人

言うことなしのスーパー賢妻。育成力もパーフェクト! 相手を尊重しつつもしっかり手綱を握り、夫をいい方向に導く賢妻にして名トレーナー。夫からの信頼も厚く、夫婦関係も良好なはず。自らを高めることも忘れない自立した女性。自分にストイックになりすぎて、ストレスをためないよう、ご注意を。

YESが1~4の人

潜在「育成力」は高い。意識を持つことで大きく進化! 夫を応援する気持ちは強いものの、つい、夫より自分や子供中心に考えてしまうことも多いかもしれません。忙しいのは分かるけれど、感情や気分で対応がコロコロ変わらないように、つねに意識を持ちましょう。

YESが5~10の人

相手に求めてばかりになっていませんか……? 夫に対し、大きなストレスを感じていませんか? 眉間にしわが寄った状態では、家庭内はピリピリモード。イライラは伝染してしまいます。まずは育成云々よりも、アナタ自身が笑顔を取り戻せるようにストレスを取り除くことが先決。慌てず、ゆっくりと……。