現在のバージョンでは、翻訳を開始する言語は音声入力に対応した前述の5言語のみ。しかし、翻訳結果をテキストとして表示することが可能な言語は、前述の5カ国語を含めフランス語やドイツ語、スペイン語など21カ国語に対応している。翻訳に対する詳細な情報に関しては、情報通信研究機構(NICT)のサポートWebサイトを参照してほしい。

こちらが「VoiceTra」のサポートWebサイト。動画コンテンツや翻訳に対応した言語の一覧が表示されているので足を運んでみるのもいいだろう

コミュニケーションに"恥ずかしさ"は邪魔なだけ!!

さて、こちらの意図を伝えたあとは、画面上部中央にある矢印をタップして"Japanese→English"から"English→Japanese"へと翻訳する言語を変更。そして、外国人旅行者にiPhoneを手渡し、尋ねたい内容を喋ってもらった。翻訳精度を高めるためには"大きな声で、ゆっくり、ハッキリと!"喋ってもらうのがイチバンである。多少気恥ずかしさはあるかもしれないが、自らが率先して身振り手振りを交えながら、大きな声で喋るなどといった"お手本"を見せると場の空気もなごみ、打ち解けた雰囲気のなかでコミュニケーションを図ることができる。筆者も、東京都の下町の路上で大げさなアクションや片言の英語を交えて「アナタの力になるよ!」という想いを表現したら、言語の壁なんかどこへやら。「浅草寺へはどう行けばいいのか?」というアメリカからの外国人旅行者と、iPhoneを使うという物珍しさも手伝ってか十分以上も話し込んでしまったほどだ。

アプリを起動して翻訳する言語を選択。そして、訳したい内容を音声で入力する。会話のキャッチボールが必要であれば、翻訳言語を入れ替える。機能としては単純だが、使い手のアドリブ次第では十分使えるアプリと言えるだろう。

画面上部中央にある矢印をタップすることで、ワンタッチで翻訳言語を入れ替えることが可能

外国人旅行者にiPhoneを手渡して尋ねたい内容を喋ってもらう。何度か素っ頓狂な翻訳を繰り返しはしたものの、ゆっくりハッキリ喋ってもらうことで上手くいった

使い方ひとつで広がるコミュニケーションの世界

これは実際に「VoiceTra」を使用して感じた事だが、原稿執筆時点では実証実験の段階にあるため、残念ながら翻訳の精度は"文句なしにパーフェクト!"とは言い難い部分があるのも感じた。しかし、「VoiceTra」を利用することによって、今までは「あ~どうしよう? 外国語はわからない!」とサジを投げて殻に閉じこもっていた自分から一歩踏み出すことができたのも事実だ。片言であっても、コミュニケーションできた充実感は何物にも代え難い体験であった。iPhoneというツールと「VoiceTra」のようなアプリケーションを組み合わせることによって、今後より一層の異文化コミュニケーションの輪は広がっていくだろう。いずれは本格的に外国語を勉強して、ツールの助けなくコミュニケーションしてみたい。「VoiceTra」は、そんな気持ちを抱くきっかけを作ってくれるアプリケーションである。