IPS液晶の仕組み

TN型液晶は電極で液晶分子を挟み込むような構造だったので、これを「縦電界方式」と呼ぶことがある。

これに対しIPS型液晶は「横電界方式」と呼ばれる。電極は片側にしか存在せず、片側だけの電極だけで電界を発生させるため電界は横方向に出現するためだ。1つの平面内(In-Plane)で電極による液晶制御(Switching)を行うことからIn-Plane Switching(IPS)型液晶と呼ばれるようになった。

電圧を与えることで電界が発生し、これで液晶が動くという点はTN型と同じだが、IPS型液晶では、液晶分子はねじれず、全ての液晶分子が同時に、表示面に対してほぼ同時に整列したまま回転方向に動く。

電圧オフ時は、光が液晶分子とそれほどの影響を受けず、そのまま出口の偏光フィルタで遮断されてしまい暗表示となる。

IPS型液晶の表示概念その1

電圧オン時は電界が発生し、液晶分子が回転し、光の振動方向に液晶分子が大きな影響を及ぼす状態となり、光はここで複屈折を起こし、光の振動方向が変化させられてしまう。つまり、出口の偏光フィルタを出てくる光が生まれることになり、結果、明表示となる。

IPS型液晶の表示概念その2

根本原理部分は異なるが、電界の強さで明暗が表現できる……という結果(つまり大枠としての表示原理)はTN型液晶と大差がないことになる。

IPS型液晶の美点は、液晶分子が全て同じ方向に整列しながら、表示面に対して並行に回転するだけであり、光が進む方向軸に対する液晶分子の動きがほとんど無いため、視線角度に依存した見え方の違いが少ない。すなわち視野角が原理的に広いと言うことになる。

ただし、TN型ほどではないものの、黒表示時にも迷光があり、斜め方向の迷光は漏れてくることがあるため、コントラスト感を高めづらいという先天的な特性はある。

IPS型液晶の表示概念その3

液晶分子の応答速度は、その液晶画素内の液晶分子を全て同一角度に回転させるという原理特性から、応答速度を高めづらいとされている。ただし、階調表現に依存して応答速度に速度差があるTN型やVA型と違い、前階調において安定した応答速度が得られる利点がある。また、オーバードライブ回路の進化と液晶素材の改良もあり、応答速度は他方式と比較して遜色ない程度に高められている。

VA型液晶の仕組み

VA型液晶は、液晶分子を電極で挟み込んで縦電界で液晶分子を制御する点はTN型と同じだ。しかし、液晶分子は電界オフ時にはねじれて配向せず、配向膜に対して(表示面に対して)ピンと垂直(Vertical)に立って配向する。VA型液晶のVertical Alignmentという名称は、この特性から名付けられたものだ。

VA型液晶では電界を強めていくと、垂直に立っていた液晶分子が徐々に寝ていくようになる。

電界オフ時、液晶分子は立っているので、光は液晶分子の投影面積の小さい部分にしかあたらないため、その振動方向がほとんど変化しないため、出口側の偏光フィルタで遮断されて出てこられない。これが暗表示だ。

電界オフ時

電界を強めていくと、液晶分子は寝ていくことになり、光は液晶分子の影響を受けやすくなっていき、IPS液晶の時のように複屈折が起きて、光の振動方向が変わることになる。つまり、出口から光が漏れるようになり、これが明表示となる。

電界オン時

VA型液晶は、電界オフ時、光がほとんど液晶分子の影響を受けないため、黒表示時が他方式よりも深い黒になりやすい。つまり、明暗差をよりダイナミックに表現できることになり、VA型液晶はコントラスト感に優れることとなった。

IPS液晶と同じように全ての液晶分子を同一方向に寝かせるという原理特性上、IPS液晶と同じように応答速度を高めづらいとされてきたが、オーバードライブ回路の進化と液晶素材の改良もあって、応答速度は他方式と比較して遜色ない程度に高められている。