【レポート】

VISAヘッドが語るeコマース&本人認証戦略 - 先駆けて日本で開始した理由は

    遠竹智寿子  [2010/09/02]

    ビザ・ワールドワイド(以下Visa)は、8月26日、ECサイトでカード決済する際にパスワードによる本人認証を行う「VISA認証サービス」の モバイル対応を発表した。10月より試験運用が開始される同サービスは、世界に先駆けて、まずは日本でのみ展開される。

    今回の発表に合わせ、米Visaのeコマース兼本人認証担当 グローバルヘッド ジェリー・スウィーニー(Gerry Sweeney)氏が来日し、グローバルにおけるeコマースのトレンドや同社の戦略について語った。

    米Visa eコマース兼本人認証担当 グローバルヘッドのジェリー・スウィーニー(Gerry Sweeney)氏

    オンラインへシフトするカード不正利用、Visaの戦略は?

    スウィーニー氏は、まず、世界におけるeコマース市場規模について「急成長を続けており、売上高は1兆米ドル弱、前年比で25%の伸びをみせる。現在はオンラインユーザー人口に比例して、北米で広く浸透しているが、アジア太平洋や中南米といった地域でも拡大が予想され、継続的な成長を見込んでいる。Visaにおけるeコマースへの取り組みは、ますます重要性が高まっている」と述べた。

    そして、「カードの不正利用」の傾向についても、「犯罪者にとってはとても手軽で利益が高く、非対面であるオンラインの場での被害が増加してきており、デジタル製品や家電等が扱われるショップでの不正利用が増えている」とスウィーニー氏は語る。また米国では、不正利用された80%以上のケースで、150ドル以上と高額商品の購入に利用されており、またデビットよりも、クレジットやその上級カードといったように使用限度額が高いカードがターゲットにされているという。

    グローバルな不正の傾向を示したグラフ。全体では年々減少しているが、非対面取引では増加している

    利便性と安全性のバランス

    実店舗では、カード認証と合わせて、パスワード入力やサインなどの本人認証を行っているにも関わらず、オンラインで買い物する際には、カード番号と有効期限を入力するだけというのではリスクが大きい。だからと言って、決済の際に複雑な手順を踏むようでは、消費者の購買意欲や行動が制限されてしまうことにもなる。

    「消費者にとっての利便性と安全性のバランスをとることが重要だ。加盟店にとっても "売上向上" "低コスト" "手間が少ない"などの付加価値をもたらすものでなければならないと考えている。そしてマーケティング面では、魅力あるこれらのサービスについての認知向上が必要であり、いわゆる『シェア・オブ・ボイス(SOV=広告投入量シェア)』を高めて、エンドユーザに声を届けていくことを積極的に行っていく」とスウィーニー氏は語る。

    Visaでは、同社が開発した「3-Dセキュア」と呼ばれるインターネット上の本人認証技術を使った「VISA認証サービス」を、2002年から提供開始している。「3-Dセキュア」は現在、MasterCardとJCBも採用している。また、オンラインショッピングの環境作りについても、発行会社向けの権限コード発行や不正/リスク管理ツール、消費者がリアルタイムで不正取引を認識できるアラート機能の提供など、さまざまなレイヤーを用意する。「複雑かつグローバルな問題とニーズの下で、これだけあればよしという認証システムはない。各加盟店のビジネスモデルに合わせて選択していただけるマルチレイヤーセキュリティと、本人認証という両面からの取り組みを今後も発展させていく」とスウィーニー氏は語る。

    グローバルで提供されているVisaのeコマース向けサービス

    各国で政府や規制当局が介入し、さまざまなガイドラインやVISA認証サービスの義務化などが制定/設置されてきている

    ユニークな日本市場を世界が注目している

    そしてVisaでは、カード会員と加盟店の両者にヒアリングや独自調査を重ねており、すでに国や地域ごとのニーズに焦点を当てたサービスを展開している。

    たとえば、米国で昨年開始された「Rightcliq(ライトクリック)」は、カード会員自身が管理するWebサービスで、さまざまなショッピングサイトから賞品を選択しウィッシュリストとしてまとめたり、ネットショッピング中にFacebookなどのソーシャルコミュニティを使って買い物へのアドバイスを受けたりしながら、スムーズな決算手続きやその後の履歴参照までを行えるという。また、少額決済の多いオーストラリアでは、仮想のプリペイド口座を開設し、20ドル以下の決裁が可能な「payclick(ペイクリック)」を今年6月から開始している。

    今回の世界初IPベースによるモバイル版「VISA認証サービス」を日本で展開することになった背景には、日本ならではの携帯利用の状況がある。スウィーニー氏は「日本のBtoC EC市場は、今後『モバイルEC』が市場を牽引し、2014年には現在の1.8倍の12兆円市場へと成長し、モバイルECの占める割合は2.5兆円以上に達する※」といった予測を挙げ、モバイル対応は、日本市場における優先事項だと語った。また、Visaが行った調査によれば、携帯電話でのネットショッピング利用者の2人に1人がクレジットカード決済に不安を感じており、携帯電話向けの本人認証サービスについて、3人に2人が利用意向を示しているともいう。

    野村総合研究所2009年12月21日リリース

    会見後、日本のeコマースの現状をどう見ているか、また、今後の同サービスのグローバルの展開について、スウィーニー氏に訊ねた。

    「日本のモバイル経由のネットショッピングの割合は、EC利用全体の15%を占め、20代では約30%と大変高く、これは他のどの国にも見ることのできない大変ユニークな利用状況だと言える。私の手元の資料では、日本以外は約6%程度というモバイル利用率だ。今回の日本のパイロット運用を他国(の関係者)も高い関心を持って見守っており、そこから学ぼうという状況である。つまり、携帯電話向けの本人認証サービスは、今後、日本での運用をもとに、グローバルに展開していくと考えている」

    VISA認証サービスのPC用画面(左)、モバイル用画面(右)。なお本サービスは、NTTドコモ、au、ソフトバンク各社の3G以上に対応した機種で利用可能で、フルブラウザ機能およびスマートフォンにも対応する。カード利用者は、最初にカード発行会社のWebサイト上で同サービス用のパスワードを登録(初回のみ)。モバイル端末からパスワード登録については、カード発行会社の対応によるとのこと

    だが、日本では、eコマースにおける「本人認証サービス」そのものの認知が低いように感じられるが、他国における消費者の認知度はどの程度なのだろうか。スウィーニー氏は「前年比で25%の伸びというeコマースの成長の中で、VISA認証サービスの採用を見ると、前年比の50%増となっている。このことからグローバルレベルで、セキュリティ意識や認証システムの認知が高まっていることは理解できる。しかし、イギリスなどカードの不正利用による犯罪が多発した国では認証システムの認知度も高いなど、国によって差があることはたしか。日本でもこれからさらに啓蒙が必要だと感じている。また、加盟店側に認証システムの採用を推進していくという課題もある。一方的な告知で認知を促すのではなく、カード利用者や加盟店、カード発行会社のそれぞれの関心やニーズからお互いに学びながら、認知度を高めていくものだと考えている」と語った。

    Visaのグローバルな本人認証戦略。すべての市場とチャネルにダイナミックデータの導入を行っていく

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