【インタビュー】

「システムトレード業界で起業したい」現役東大生・鈴木氏の"将来戦略"とは?

    牧野武文  [2010/08/26]

    舌を巻くというのは、まさにことのことだ。鈴木博達(ひろみち)氏は、現在東京大学経済学部の3年生。普通なら就活真っ最中の時期だが、すでに「FX自動売買研究所」を運営し、自動売買プログラムを受注製作するというビジネスを行っている。すでに会社も登記中で、将来はFacebookのようなインターネット企業に育てていきたいという。若者の特権は、いくら大きな風呂敷を広げても、世間がそれに耳を貸してくれること。しかし、鈴木氏の風呂敷は、聞けば聞くほど、「先見性」という縦糸と「論理」という横糸で緻密に織られていることが分かってくるのだ。ただ大きいだけではない。鈴木氏は、戦略的に風呂敷を広げようとしている。

    東京大学経済学部3年生の鈴木博達氏

    高校生の時、自ら立ち上げたサイトでアフェリエイト収入得る

    鈴木 高校生の頃から、いろいろなサイトを立ちあげて、アフィリエイト収入を稼いでいたんです。サイトはいくつも運営しましたけど、人気があったのはプレイステーションポータブルに関するものと、恋愛に関するものの二つでした。恋愛サイトを立ちあげたのは、高校1年生の時に、ものすごくかわいい女の子を見かけて、なんとか彼女と親しくなりたいと思ったんです。それで、「どういう内容のメールを送ったらいいんだろう」ともやもやしていたんですね。その際気がついたのが、「僕がもやもやするということは、たぶん同じようにもやもやしている人はほかにも大勢いるだろう」と。これは、インターネットで発信すれば有益な情報になるなと気づきました。アフィリエイトを組み合わせれば、ビジネスにもなるなと思ったんです。

    ――高校生がサイトを立ちあげて情報交換をするというのは、今どき珍しくはないだろうが、アフィリエイトまでやるというのは、数年前は珍しかった。

    鈴木 高校生でアフィリエイトまでやっていたのは、僕の他には一人しか知りません。でも、彼はアダルトをやったり、ちょっと裏的なことをやって、サイトの運営会社から強制退会させられちゃったみたいです(笑)。

    ――その鈴木氏が投資に興味をもったのが、大学1年生の夏休みにフィリピンに語学留学をしたときのことだ。

    鈴木 大学1年生の夏休みに、フィリピンに1カ月の語学留学をしました。その時カジノがあって、ものすごく面白くてはまった。それから、投資に興味が出て、海外のインターネットサービスを使ってFXをやってみたんですね。これが思いっきり負けた(笑)。それは当然だったんですね。裁量トレードともいえないようなレベルで、チャートを見て、ヤマカンでここで買いだろう、ここで負けだろうというやり方だったんですから。

    チャートが急激に動くと、どうしても感情的に売り買いしてしまう。それと、学生だった僕には、24時間チャートを閲覧して、チャンスが来るのを張っているということもできませんでした。まあ、授業中に、携帯電話でチャートを見たりはしていましたけど(笑)。

    結局、こんなことをしていても勝てないなと思って、FXを研究し始めて、たどりついたのがシステムトレードだったんです。

    トレーダーではなく、システム構築サポートの道を選択

    ――普通の人間であれば、ここで研究を重ねて、トレーダーの道を歩み始めるところだ。ところが、鈴木氏はそちらの方向に進まない。ここが彼の、瞠目(どうもく)すべきビジネスセンスだろう。

    鈴木 システムトレードの研究をして、2008年の7月に「FX自動売買研究所」を立ちあげました。「投資ロボットを作ろう」というテーマのサイトです。すると、このサイトに対するアクセス数がかなりあったんですね。ニーズがあるんだなあ、システムトレードは盛り上がりつつあるんだなあ、と実感しました。

    鈴木氏が運営するサイト「FX自動売買研究所」トップページ画面

    ――鈴木氏は、趣味でサイトを運営していたのではない。マーケティングを行っていたのだ。さまざまなテーマのサイトを運営して、そのアクセス数や読者の反応から、どのジャンルにビジネスの可能性があるかを探っていた。アフィリエイトによる収入もそこそこになっていたが、アフィリエイト収入を得ることが目的ではなかった。いくつものテーマのサイトを運営しながら、その中でも投資というジャンルに、最もビジネスチャンスがあると判断した。

    鈴木 仕事をするなら、伸び盛りの業界に行きたい。経験の蓄積がものをいう世界では、僕のような若い人間が勝てるチャンスはありませんから。まだ新しくて、みんながまだスタートラインに立っているような業界であれば、経験がなくてもチャンスがあるのではないか。マイクロソフトやアップルも、コンピュータが伸び盛りの頃に成長した企業です。そういう業界で勝負をかけたいと思い、探していました。

    「仕事をするなら、伸び盛りの業界に行きたい」と、システムトレード業界での起業を目指す理由を話す鈴木氏

    ――しかし、なぜトレーダーの道に進まなかったのだろうか。トレーダーとしての腕を磨いて、将来は自前の投資ファンドを立ちあげるという方向もあるはずだ。

    鈴木 僕はサポートの方向の方が理に適っていると思いました。投資関連のビジネスでは、自分でトレードをするトレーダーという方向と、トレードシステムを作ったり、情報提供をするサポートするという方向があります。でも、トレーダーの世界は、すでに名をなしている方がたくさんいますし、証券会社の中にいるファンド・マネージャーなどは、膨大なノウハウを蓄積しています。僕のトレーダーとしてのノウハウはまだ浅いものですから、勝負にならないと思います。システムトレード、その構築をサポートするというビジネスに中心を置いて、自分なりのノウハウを蓄積していく方が理に適っていると判断したんです。

    ――こうして、鈴木氏は自分のサイト「FX自動売買研究所」にアクセスしてくる顧客から、トレードプログラムを受注して製作するというビジネスをすでに始めている。収入はすでに暮らしていけるだけのレベルに達しているというが、まだ一人で運営している段階で、会社も現在登記中であるという。

    鈴木氏の考え方、センスには驚くべき点が多く、参考にしたいとも思うが、まだまだ「たった一人のビジネス」にすぎないことは事実だ。鈴木氏は、「たった一人の会社」をどう大きくしていこうと考えているのだろうか。また、新しいビジネス展開をどう考えているのだろうか。次回は、鈴木氏のビジネスの未来についてお聞きする。

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