7月1日より米国での配信が開始されたAppleの広告サービス「iAd」に関して、そのローンチパートナーらの最初のフィードバックが米Los Angeles Timesの8月12日(現地時間)の記事で紹介されている。通常より5~10倍ほど出稿料が高価なことで知られるiAdだが、一方で既存の広告よりもユーザーの滞留時間が長く、その結果に広告主らがおおむね満足しているという。

高い投資対効果を記録

iAdはiPhone 4以降に実装されたiOS 4の新機能で、ユーザー体験を阻害しないアプリ内での広告システム実行と、数々のこれまでにないユニークな点を特徴とする。一方でGoogleらライバルの締め出しや出稿料の高さ、広告主らのノウハウ不足など、Appleの企業文化やローンチ時ならではのトラブルがどのように作用するのか、その行方に業界関係者らの注目が集まっていた。

だが、LA Timesのレポートによれば、例えば最初のプレミアムパートナーの1社である日産は、ユーザーの「Leaf」広告における滞在時間が通常のオンライン広告の10倍にあたる90秒と高く、さらに広告を起動するための「バナー」のクリック率がやはり通常のオンライン広告の5倍と、その効果の高さに満足しているという。また、スポーツ用品メーカーのNikeや、石鹸ブランド「Dove」で知られるUnileverなども、同種の効果を得られたようだ。ユーザーの滞在時間の長さはそれだけ多くの商品情報をユーザーに届けられることとイコールであり、つまりそれだけ広告としての効果の高さを示している。

iAdをアプリ内部に組み込むアプリ開発者らも、iAd導入以後での効果について触れており、例えばDictionary.comでは177%の広告収入増で、CBS SportsやCNET、GameSpotアプリなどを提供するCBS MobileもCPM(広告を1000回表示するのに必要なコスト)が最大25ドル程度になると見込んでいる。

製作方針について厳しい注文も

このようにすでに広告キャンペーンを展開しているローンチパートナーらの反応はおおむね好評だが、一方でローンチパートナーに名を連ねながら7月1日の配信開始には間に合わなかった広告主らは、依然として前述のような技術的/政治的トラブルを抱えていることが多数報告されている。

米Wall Street Journalの8月16日(現地時間)の記事によれば、これら出稿が間に合わなかったローンチパートナーは広告制作プロセスに問題を抱えており、現在もなおAppleとの共同作業を進めているという。原因の1つはAppleによる広告制作への過度の介入で、製作方針についてかなり厳しい注文を出しているようだ。そのため広告制作には通常より長い8~10週間もの期間が必要となり、Appleの介入で予定よりも2週間ほどさらに期間がかかることもあるという。こうした経緯もあり、ローンチパートナーの1社である高級ブランドのChanelはiAdでのキャンペーンを中止してしまったとWSJでは伝えている。

Appleは、サービスのローンチ初期に制作スタイルに厳しく介入することで方向性を確立することを狙いにしているとみられるが、これがiAd参入のハードルを上げることにもつながっていると考えられる。特に出稿料の高さと開発の技術ハードルの高さが伝えられるiAdにおいて、中小の広告主らがこの市場に参入するのは容易ではない可能性がある。