トレードシステムを開発するインディ・パ 代表取締役の本郷喜千氏と、統計学を使ったトレードシステムの選び方についての著書のある山本克二氏が、「統計学はシステムトレードにどう有効なのか」というテーマに関し、対談する最終回。

前回の「中編」で山本氏は、統計学を使うことでトレード結果から「偶然のノイズ」を取り払い、システムの真実を見極めることができる、一方本郷氏は、システムを作る前提条件として、統計的な手法によってマーケット解析が必要である、と、システムトレードに統計学を使う意義を語ってくれた。

最終回となる今回「後編」では、システムトレードに統計学を使う上での、読者へのアドバイスについて、語っていただいた内容を紹介する。

――統計学をシステムトレードに生かす上でのアドバイスをしていただけますか?

山本 システムトレーダーへのアドバイスとしては、大きく2つあります。これからいよいよ、日本でもいいシステムがどんどん出てきますし、ひまわり証券の「エコトレFX」とか、FXCMジャパンの「シストレステーション」、FXトレード・フィナンシャルの「オートFX」など、非常にいいプラットフォームがすでに出てきています。

それぞれのプラットフォームには、たくさんのシステムが中に入っていて、プログラミングができなくても、かなり高度なトレードができるという環境が整ってきています。こうした状況で、大量の選択肢の中から、どうやって間違いないものを選ぶかというところに目をつけて、トレードしていただきたいというのが第1点です。

第2点として、システムを選んでいく中、使っていく中で注意していただきたいのは、「システムに寿命がある」ということです。実は2008年までの為替市場というのは、常に円安トレンドが長い間続いていて、とりあえず外貨を買っておけばという、比較的"安易"な時代でした。その中で、FXが日本で市民権を得てきたという歴史があります。

ですが、2008年9月のリーマン・ショック以降、特に市場が難しくなってきて、私の分析では、システムの寿命が短くなっているんです。前述のように、多くの選択肢が出てきてはいるのですが、システムそれぞれの寿命があって、必ずしも放っておいていいものではありません。

したがって、常にシステムの性能に注意してウォッチしながら、トレードをしていくことが重要になっています。システムトレードというと、どうしても「システムに任せっきり」というイメージがありますが、決してそういうものではありません。ぜひ、この点を注意していただきたいですね。

――なるほど。世界的な金融危機・経済危機が、システムトレードの世界にも大きな影響を与えているわけですね。本郷さんからの、システムトレーダーへのアドバイスはいかがでしょうか?

本郷 市場が難しくなればなるほど、確率統計的な知識がないと、危なくって投資をやっていられない市場になっていきます。システムを作る側として、統計的な知識は、必須のものとなってきています。

本郷氏には、「投資家として自立するためには、統計解析の分野で努力していただくのがお薦めです」とアドバイスしていただいた

そういった状況の中で、システムプロバイダーの側も、日本発で世界にチャレンジできる環境が整ってきました。「エコトレFX」などもそうですが、システムトレードの世界では、1年中ワールドカップをやっているようなものとなってきました。世界中の投資家が、シグナルを出し合って、1年中競っているからです。PC1台あれば、競争に参加できる環境が整ってきたのです。

そうした意味で、一人でも多くの投資家に、自分オリジナルのシステムでトレーディングのワールドカップにチャレンジしていただきたいと思っています。サッカーワールドカップ南アフリカ大会での日本代表のように、世界を驚かす投資家が、一人でも多く出てきてほしい。私が代表取締役を務めるインディ・パの名称は、独立した個人という意味の英語「Independent person」が由来で、「投資家として自立する」ということを、会社のミッションとして掲げています。

本郷氏が代表取締役を務めるインディ・パは、「投資家として自立する」ということを、会社のミッションとして掲げている。画像は同社ホームページ画面

投資家として自立するためには、それだけの努力が必要です。努力する上では、統計解析の分野で努力していただくのがお薦めです。システムを選んだり作ったりする上で、統計学が役に立ちますよ、ということを申し上げておきます。

山本 そうですね。さらにもう1つ付け加えるなら、統計学をトレードに生かす際は、「統計学の限界を知って、うまくその限界と付き合う」といったことも、念頭に置いていただけるといいかもしれません。

「この統計結果は95%の信頼度で割り出している」という場合、5%の危険率、つまり5%の間違う可能性を織り込んでこの結果が出ましたと、言っているわけです。数学的に計算する上では必ず、間違う可能性を織り込んでいかないと、計算式が成り立ちません。間違う可能性ともうまく付き合いながら、統計学を活用していただきたいと思います。

――ありがとうございました。


「統計学はシステムトレードにどう有効なのか」について、3回にわたって本郷氏と山本氏の対談を紹介したシリーズ、いかがだっただろうか。システムを評価する側、作る側の両面で、統計学を活用することに、少しでも興味を持っていただけたら幸いである。

山本氏には、『らくらく儲ける! しっかり儲ける! FX自動売買入門』、『使える売買システム判別法 確率統計で考えるシステムトレード入門』、『FX自動売買・ガチンコ投資必勝技~ローレバレッジ時代の超堅実システムトレード術~』などの著書もあるので、興味のある人は、ぜひ今後のトレードの参考にしていただきたい。

また、本郷氏が代表取締役を務めるインディ・パのチーフテクノロジーオフィサー、石崎文雄氏が講師となる会場セミナー『トレーダーのための確率論入門―マーケットの「まぐれ」を分析するためのツール― in大阪』が、9月5日に大阪で開催される予定だ。詳しくは、こちら