米Oracleは8月10日(現地時間)、Sun Microsystems買収後としては初となる同社ハードウェアならびにOS製品のロードマップを発表した。ここではSPARCプロセッサの継続開発とパフォーマンス増加が示されたほか、Solarisの継続的なアップデート提供が約束されている。さらに来年2011年後半にはSolaris 11が登場することになるという。

米カリフォルニア州パロアルトで開催された発表会で、元Sunのハードウェア担当責任者で米OracleエグゼクティブバイスプレジデントのJohn Fowler氏は、ロードマップとともにOracleとSun合併によるメリット、そして今後の方針について改めて説明した。まずFowler氏は、OracleがSunを獲得したことでOSからハードウェアまでの下位レイヤのスタックを獲得し、上から下まですべてのレイヤでソリューションの提供が可能になったことを強調する。結果として生まれた技術の1つがDatabase Machineで、データベース処理に特化したハードウェアの誕生はこうしたメリットを端的に示すものだという。またハードウェアはサーバやプロセッサに限らず、ストレージの領域もカバーされており、インテリジェントなストレージがDatabase Machineにおける根幹の1つでもあるようだ。

Fowler氏はサーバ戦略において、SPARCプロセッサの継続開発を約束するとともに、RAS (Reliability, Availability, and Serviceability)機能への対応など、ミッションクリティカル分野での実績や優位性を強調。さらに2年で2倍ペースのパフォーマンス強化に対応するなど、スケーラビリティの部分にも言及する。示されたロードマップではプロセッサコアやスレッド数の増加とともに、対応メモリー容量の増加も行い、今後5年間でデータベースのトランザクション処理能力(TPM)で40倍、Java命令実行で10倍のパフォーマンス増加を実現するという。

SPARCプロセッサのロードマップ。2年で2倍ペースのパフォーマンス増加を約束

そして今回の目玉の1つがSolarisアップデートだ。Fowler氏によれば2011年に次のメジャーアップデート版であるSolaris 11の提供を開始し、その後定期的なアップデートによるメンテナンスで機能強化を実現し、前述のSPARCロードマップで示されたパフォーマンス増強に対応していくという。まずはデベロッパ向けのリリースとして一部開発者やパートナーにOSアップデートが提供され、テストを実施していく形となるようだ。ただし、最近のOracleは「Oracle VM」など仮想化戦略を強化していることと、Red Hat Enterprise Linux (RHEL)のOracleメンテナンス版である「Oracle Enterprise Linux」というx86プロセッサ向けのLinuxディストリビューションを持っている。これら製品の棲み分けとしては、要求されるシステムのサイズ、インテグレーションの度合い(例えばDatabase Machineなど)、システムの柔軟性(x86プロセッサなど)によって、適時必要な選択肢を用意していくというスタンスのようだ。

Solarisロードマップ。まず来年2011年にSolaris 11が提供され、毎年機能アップデートが提供される

Oracle VMを交えた同社のOS戦略。SPARCプラットフォームはパフォーマンスと信頼性重視で、x86はOS選択の柔軟性を前面に出す

もう1つ興味深い話題としては、ストレージ戦略がある。SolarisのZFSといったファイルシステムはあるが、それ以上に面白いのは同社のハードウェア製品ポートフォリオだ。Sunは2005年にテープストレージベンダの米StorageTekを買収しているが、後に参入したフラッシュメモリストレージと合わせて、フラッシュ/HDD/テープという3種類の記録媒体を持っている。フラッシュメモリはExadata v2の中でキャッシュ機構の一部として利用されるなど、単なるストレージとして以外の役割も持つ。フラッシュメモリは高コストな一方で高いパフォーマンスを持ち、逆にテープは低コストで保存性に優れるものの低パフォーマンスだ。これらを即応性の求められるデータベースとアーカイビング用途で使い分けることで、コスト効果が高くなるというメリットがある。こうした製品ラインナップを持っているライバルは他にIBMくらいなため、Oracleならではの強みといえるだろう。

既存のブレードサーバ製品を維持する一方で、Exadata v2のようにインテグレーションが強化された製品も持つのがユニークな点

旧Sunのラインナップを引き継ぎ、フラッシュメモリからHDD、テープまで、各種ストレージラインナップを抱えているのが強みの1つ