昨年7月、北海道では、大雪山系トムラウシ山で登山ツアー客ら8人が遭難死するという大きな事故が起きた。本格的な登山シーズンを迎え、安全で楽しい山登りをしてほしいと、北海道警察をはじめ、山岳連盟、アウトドアメーカーらが協力のもと、安全登山のためのアドバイスやファッションの提案、GPSの利用法の紹介などを行う「安全で楽しい登山をするためのシンポジウム」が開催された。

「安全登山」をキーワードに、山岳遭難事故の発生状況の報告や、救助体制の紹介、山登りのパーティーの組み方など、様々な専門家からのアドバイスが発表された。会場に集まった一般登山者はなんと380人超! 富士登山に代表される近年の「山ブーム」を象徴しているようだった

山岳遭難事故の原因は「道迷い」

今回のシンポジウム開催の目的である「安全登山」。北海道では昨年、トムラウシ山での遭難を含め、49件の山岳遭難事故が発生し、14人の登山者が亡くなっている。シンポジウム冒頭の道警の発表では、過去5年間における7~8月の山岳遭難事故の発生状況のうち、24人が「道迷い」だった(一番多いのは「悪天候」で25人)。また、全国的に、登山ブームの影響もあり25歳から39歳までの青年層やハイキング中の事故が増加しているという。

これを受けてアウトドアウオッチ「PROTREK」の開発者である、カシオ計算機の牛山和人氏は、登山する際の現在地の把握と地図読みの大切さを改めて強調し、道迷い防止のツールのひとつとして、高機能ウオッチを上手に活用してほしいと訴えた。

高機能ウオッチを安全登山に役立てる提案をしたカシオ計算機の牛山氏は、自身も山岳会に所属する登山愛好家。写真は牛山氏が開発を手がけたアウトドアウオッチ「PROTREK」の最新モデル「PRW-5000」

牛山「山登りに欠かせないアイテムとして、地図とコンパスは基本だと思いますが、ザックの中に入れたコンパスをいちいち取りだすのは面倒だという場面もあります。

そんなときに方位計のついた高機能ウオッチを持っていれば、腕の上で簡単に方位を計ることができます。こまめに自分の現在位置を確認することで、道迷いを防ぐことができるんです」

さらに牛山氏は「方位計」のほか、PROTREKをはじめ多くの高機能ウオッチに搭載されている「気圧/高度計」と「温度計」を組み合わせた「トリプルセンサー」が安全で楽しい登山の強い味方になると強調する。

牛山「たとえば高度計を正確な高度が分かる場所で補正しながら使えば、地図の等高線を利用して正確な現在位置が把握できます。この操作が出来るようになると地図が3Dに見えてきます。また気圧計と温度計を使えば、山の急激な天候変化を予測することもできます」

確かにとても便利そうな機能だが、山初心者にとってはちょっとハードルが高いかもしれない。牛山さんによると、まず初心者にチャレンジしてもらいたいのが「地図を正しい方向に置く」ということだそう。

シンポジウムの終盤では、アウトドアメーカーの協力のもと「安全登山のためのファッション」を提案するファッションショーも開催された。近年増えつつある女性登山者のために、おしゃれで安全なウェアコーディネートも紹介された

牛山「せっかく山に地図を持って行っても、どっちを北に向ければいいのかわからず、結局使えなかったという人も多いと思います。そんなときは、方位計の搭載された時計を使えばとても簡単です。

例えばPROTREKの最新モデル『PRW-5000』には、磁北を真北に設定できる機能が搭載されているので、磁北線を引いていないガイドマップのような地図でも、時計の方位計が差す"北"の向きに地図を合わせれば、そのまま使うことができます。地図と周りの風景が一致していることがわかれば、地図読みがどんどん楽しくなるはずです」

「地図読み=難しい」と思いこんで、山地図に苦手意識を持っている人も多いはず。こうした小さな気づかいで、大きな道迷いや遭難を防げるとは、会場に集まった約380人の一般登山者も、高機能ウオッチの便利さを改めて実感できた様子だった。

開発者に聞く! 最新モデルPROTREK「PRW-5000」

札幌でのシンポジウムの後、さらなる高機能ウオッチの活用法を伝授していただくべく、PROTREK開発者の牛山氏に実践での使い方を聞いてみた。

シンポジウムの後、さらに詳しくPRW-5000の山での活用法を伝授してくれた牛山氏。ご自身もいつも山でPRW-5000を使っているというから、アドバイスは実践的なものばかり

牛山「PRW-5000の機能で注目していただきたいのが、時刻をアナログ針で表示したことです。山に登るとき、あそこのポイントに何時までに到着したいと目標を定めますよね?

その場合、時刻がデジタル表示だとどうしても頭のなかで引き算をしないといけません。その点アナログ表示だと視覚的に瞬時に時間の感覚がわかって便利なんです」

山に登る身として(筆者は登山歴5年の山オンナ)、これはずっと待っていた機能! 登山で重要なタイムマネジメントがとてもやりやすくなりそう。さらにこのアナログ仕様の文字板を使った画期的な機能が搭載されているとか。

牛山「通常の高度計に加えて、PRW-5000には『高度差』を計測できる機能を搭載しました。文字板の外周に目盛りがあるのですが、これが高度差を示すインジケーターになっています。

自分が歩き出すポイントで高度差を0に設定すると、標高が上がるにつれて秒針が左方向に上がっていきます。これを使えば、一定時間のうちに自分がどれだけ登れるのか、自分の能力を知ることができるんです」

イエローの秒針とチタンバンドを採用した「PRW-5000T」も用意。どちらも10気圧防水性能をもつ

これなら自分が「登っている!」という実感も得られて、登りのモチベーションも上がりそうだ。さらに方位計では、ボタンひとつで秒針が北を指してくれるというアナログならではの便利機能も! アナログ時計の利点を余すことなく活用したモデルといえる。

牛山「同じく秒針を利用して、気圧の変化も視覚的に把握することもできますし、同時にデジタル表示で気圧の変化グラフも表示できます。地図読みや高度計測に慣れてきた人は、気圧計を使って山の天気のことにも気をつかってみてほしいですね」

腕時計ひとつで、登山に関する情報がこれほど正確に得られるとは……。登山者としてはもう使いこなすしかないでしょう! というわけで、最新モデルを携えて、筆者自ら夏の八ヶ岳を登ってみることにした。PRW-5000の実力はいかに、いざ実践! 

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おまけ…山オンナおすすめの登山グッズ

【ヘッドライト】山には街灯はありません。山で道に迷ったり、下山時刻が遅くなった場合はライトなしでは身動きが取れなくなるので、日帰り登山でも持参しよう

【水筒】自動販売機のある山もほとんどないので、飲み水も必携。登山口に水場がない場合もあるので、最寄駅で水を調達しておくと安心

【雨具】晴れていようが、曇っていようが、山に絶対必要なのが雨具。雨に濡れると体温が奪われて動けなくなることもあるので、必ず上下で用意しておくこと

【地図】山にはコースを表示する看板などはない。どんな低い山でも地図は必ず持って行くこと。山地図を読めない人は、ガイドブックの地図でもOK